「辻沢日記 60」(地下道を抜けた先)
地下道で体勢を立て直した後、ユウとあたしは再び歩き出した。
ユウが辛そうなので、繋いだ手を前にして肩を貸してあげる。
壁から突き出した根っこを除け、砂と水に足を取られ、魚の腐った匂いを我慢しながら前に進む。
砂が上の方まで積もっているところがあって、二人でほふく前進もした。
砂の地下道は冒険めいていた。
「この先にけちんぼ池があったりして」
そう口にしてみて自分ではっとした。本当にそのように感じられたのだ。
今回の潮時はいつもと違った。
ユウとあたしが手を繋いだことで何かが大きく変化したことは確かだった。
ならば、全然姿を見せないけちんぼ池が出現してもいいかもしれない。
するとユウが、
「この先に水がある」
黒木刀で前方を示して言った。
地下道の先に目をこらすと、そこに白っぽい光が小さく見えた。
水の反射?
ユウとあたしはつんのめりながら先を急いだ。
砂と水に足を取られるのももどかしく、時に根っこに足を掛けて転び、ユウとあたしは前へ前へと進んでいった。
段々白い光が近づいてくる。
魚が腐った臭いも干上がった水辺の匂いと感じ方が変わってくる。
いよいよ目の前に地下道の切れ目が来た。
まばゆい光に目が痛い。
ユウとあたしは広いところにまろび出て、その場に倒れ込んでしまった。
白い砂が目映かった。
そこは広い砂地で奥に向かって傾斜していた。
さらにその向こうに暗いエメラルド色をした水面があった。
ユウとあたしは砂浜にいたのだ。
「これって、けちんぼ池?」
ユウは頭を上げて遠くを見ていた。
あたしもその目線を追う。
水面は奥に広がり周囲が木々に囲われていた。
ユウの視線はさらにその先にあった。木々の向こう、梢の先。
そこに人工的な建造物。道路橋が横切り街灯の光が眩しかった。
「けちんぼ池じゃない。ここは雄蛇ヶ池だ」
見えていたのはバイパスの大曲大橋だった。
地下道は青墓の流砂帯から北に伸びていたらしかった。
湿った風が吹いてきた。
嫌な臭いがする。
水が干上がった底の、死んだ生き物たちが発する腐臭。
ユウとあたしが大嫌いな磯の匂い。
後ろを振り返ると、地下道の出口の上の、岸辺であったろう高い所から赤襦袢と青袢纏が並んでこちらを見下ろしていた。
およそ数十体。
ユウとあたしは再びひだる様に取り囲まれてしまっていたのだった。
(毎日2エピソード更新)
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たけりゅぬ




