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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第二部 辻沢日記(コミヤミユウのセルフライフドキュメント)

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「辻沢日記 59」(死亡フラグ3)

 ユウが巨大な縦穴を覗き込んで、


「どこかに通じているかも」


 早々に根っこに掴まり降りようとする。そしてあたしを見上げて、


「さあ」


 と促すのだった。


 赤襦袢と青袢纏の群れが迫る。後に引くことはできない。


それしか選択肢がないのは分かっても、地下道の先への不安は拭い去ることが出来なかった。


すぐに行き止まりだったら?


ひだる様が中で待ち構えていたら?


流砂が押し寄せたら?


そのときは二人とも終わりだ。


もう死亡フラグどころでない危機的状況にユウとあたしは来てしまっている。


もう知らん。


あたしはユウに手を支えられながら根の梯子を下りだしたのだった。


 二人とも手が利かない上、根っこは濡れていて掴まりにくい。


何度も落ちかけたが、その度にユウに引き上げて貰った。


ようやく地下道の壁の縁に取り付いて、縦穴の入り口を振り仰いだ。


 穴の縁にはひだる様がぐるりと取り巻いて、そこからこちらを覗き見ていた。

 

でもまったく降りて来る様子はない。


このままひだる様が追ってこないのなら。


この地下道でどこかに抜けられたなら。


ワンチャン助かるかも。希望が少し沸いた。


 地下道の中は3分の1くらい砂で埋まっている上に、それがじくじくと水を含んでいてすごく歩きにくかった。


奥から魚の死骸のような匂いが漂って来てもいた。


ただ白い砂のせいなのか漆黒の闇ではなかった。


 下りてきた場所が見えなくなったあたりで、ユウがその場にしゃがみこんだ。


「ミユウ、ちょっと休もう」


 あたしも相当疲れていた。


二人で濡れた砂の上に腰を下ろすと水が下着まで浸み込んで来た。


うえー、気持ち悪い。


「ユウ、肩と胸見せて」


 ずっとユウの傷が気になっていた。


どちらの傷も出血量が多めで白かったパーカーはほぼ赤色に染まってしまっていた。


 パーカーを裾から肌脱ぎしてもらって傷を見た。


肩は最初の右腕ぐらい深かった。


バッテンの形についたデコルテの傷は浅いようだった。


出血の量からやばいかと思ったが、少し安心した。


リュックから換えのTシャツを出して裂き、肩の傷を巻いた。


胸の傷は余った生地を当てておいた。右腕のタオルも巻き直した。


 今はユウも最初のような荒い息をすることはなくなっていた。


おそらく夜明けが近いのだろう。


あと少しで潮時が終わる。


このままいけばユウは自我を残したまま潮時を乗り切ることができるかもしれない。


ただ、体力の消耗具合が心配だ。


いつにもまして激しく疲れているように見えたからだ。


ユウの右の手先が小刻みにずっと震えている。


 処置がすんで、パーカーを元に戻すのを手伝っていると、


「ミユウは建築家になりたいんだろ?」


 ユウが唐突に聞いて来た。


ユウがあたしに興味をもってくれるなんて驚いたけど嬉しかった。


「そのつもりだけど……」


 まだ勉強中だし建築士の資格取るのって大変だし。


「どうして?」


「どうしてかなー」


 遠い記憶をたどってみる。



 傀儡子神社で二人の手が離れて屋敷に帰ると、それまで同じ部屋に押し込められていたのに、それぞれの子供部屋に振り分けられた。


自分の部屋なんて持ったことがなかったから最初のうちは嬉しかった。


でもオトナとやりとりするときにユウが隣にいないのがとても不安ですぐにあたしはユウの部屋で一日中過ごすようになった。


ユウの部屋に行くと、あたしは必ずベッドに寄りかかって漫画や絵本を眺めて過ごした。



「あの本覚えてる?」


 ユウとあたしが一番好きだった絵本。


「バーバパパの絵本」


 二人でそればっかり読んでた。


「あー、風船お化けの本か」


 風船お化けの大家族のお話だ。


それはシリーズだったけどユウとあたしが好きだったのは、バーバパパたちが住んでた家を追い出され、家を探して回るお話だった。


結局バーバパパたちは住みやすそうな丘を見つけ、そこに自分たちで家を建てるのだった。


 ユウはあたしが他の絵本や漫画を読んでいても見向きもしなかったけれど、どうしてか『バーバパパのいえさがし』を読みだすと、隣に来て一緒に読んでいた。


「重機の本な」


 出て来たけども。


 あたしはバーバパパが自分の体を使って家を作る場面が大好きだった。


バーバパパの体に素材を塗って固め小部屋を作り、それを繋げて家にするのだ。


またその家の断面図がかわいかった。


子供達の数だけ丸い形の小部屋があって、趣味に合わせて思い思いに飾ってあった。


あたしもそこに住んでいるのを想像するのが楽しかった。


「あんな家を作ってみたいの」


 最初の家はユウとあたしの家だ。


それを聞いてユウが、


「変態は双葉より芳しだな」


 と言った。


「どこが?」


「断面図のページばっかり眺めてた」


 そうだったかな?

(毎日2エピソード更新)


この続きは明日21:00公開です


よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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