「辻沢日記 56」(影ノ社の場所)
ユウは息がすこし落ち着いて来ると、
「さっきの話の続きなんだけどさ」
と言った。
「続き?」
「うん。青墓に通う神事って言ったでしょ」
やっぱり「神事」という言葉に引っかかっていたのだ。
「あれは……」
あたしの言葉を遮って、
「それさ、ここかもよ」
ユウは地面を指さしたのだった。
「ここがけちんぼ池ってこと?」
でも、ユウはそれには首を横に振った。
「傀儡子神社から青墓まで船型の社殿を曳いて来るんだろ。その終点の船着き場ってこと」
あたしは、ここに傀儡子神社の社殿が移動してくるのを想像した。
地上に出現した船形の社殿が、すり鉢を出て参道を滑り降りた後、未知のファクターによって峠道へ出てくる。
次いで青墓を目指し峠のワインディングロードを滑り降りる様は、まるで大海原を航行する船そのものだ。
やがて青墓に着いて木々の間をゆっくりと進むと、杜の奥にこの船着き場を見出して、社殿を舫うのだ。
あたしはその時、目の前の広場が傀儡子神社に様変わりしたのを見た。
青墓の中の神社。
あたしには思い当たることがあった。
辻沢のお祭りがヴァンパイア祭りになる前は、辻沢三社祭りと言われた。
三社とは辻沢にある、宮木野神社と志野婦神社と影ノ社の三社の祭事であることを意味していた。
祭りの日に鞠野フスキとサキが影ノ社について意見したのを思い出す。
鞠野フスキは数あわせの架空の神社、サキは青墓に実在する神社と言ったのだった。
あの時、鞠野フスキは不意打ちを食らったような複雑な表情をしていた。
実は鞠野フスキは何かを知っていて、案外サキは図星を突いたのじゃないか。
「影ノ社だって言いたいの?」
「うん。青墓に詳しいスレイヤーたちの間では、ここがそうだって」
今ここに社殿が存在しない理由も社殿自体が山の上から運ばれてくるからと考えると納得がいった。
「じゃあ、この近くにけちんぼ池がある?」
「それはどうかな」
意外にユウのほうが冷静だった。
「青墓の入り口からしたら結構高い場所だし」
そういえばここに来るまでなだらかな坂道を登ってきたのだった。
「神事はしょせん神事なのかな」
あたしが自嘲気味に言うと、ユウは真剣な顔を向けて、
「ミユウはもっと自信をもたなきゃ。だってすごいこと発見したんだから」
と言った。
とにかくあたしの仮説はユウを喜ばせることは出来たみたいだった。
(毎日2エピソード更新)
続きはこのあと21:10に公開します
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たけりゅぬ




