「辻沢日記 47」(意識の閾)
ドナドナ会を切り上げてクロエのお世話を交代するためミユキと合流した。
あたしからクロエの様子を聞くと、ミユキがスマホを出しながら、
「反省するようにメッセージ入れておくね」
「ちょっと待って、ミユキのでしたらやばくない? だってあたしとクロエはいたのだし」
「そっか」
しっかりしてそうで、こういうところがミユキなのだった。警戒心がない。
「あたしのスマホ明日まで貸しといてあげるから、これでやり取りしなよ」
「ありがと、ついでにそのパーカーもお願いしていい? これからクロエは意識の閾だけど、あたしただと気づかれるとまずいから」
傀儡子が発現して人の意識を残している少しの間が意識の閾。
その状態で辻沢にいるはずのないミユキと対面したら最悪の場合クロエが傀儡子を自覚しかねない。
あたしは傀儡子が潮時に傀儡子使いを意識することが自覚のきっかけになると思っている。
あたしとユウがそうであったように。
◇
中学生で自覚する前だったが、ユウは潮時の朝、まじまじとあたしの顔を見て言ったことがあった。
「昨日の夜、地下道でミユウと一緒だった」
あたしはそれを、
「夢で逢ったんだね」
と受け流そうとしたけれど、
「違うよ、現実でだよ。だってミユウの靴の音を聞いたもん。地下道に響いてた」
と言った。
ユウは会った時から耳がすごくよかった。どんな人の足音も聞き分けることが出来た。
「なんであたしだってわかるの?」
って聞いたら、
「色で」
と言った。ユウは音が色で聞こえるらしかった。
工夫をして足音をごまかしたつもりだったけど、ユウが自覚してからそれについて話した時、
「わかるよ、そんなんじゃ」
と笑われた。
「見えるからね。音主の姿」
つまり、ずっとオミトオシだったのだ。
◇
傀儡子使いが傀儡子に気付かれないようにするには、遠くにいてステルスするか、オールで付き合うかのどちらかしかない。
ミユキはこれからクロエとオールするつもりなのだ。
あたしだってクロエの目が誤魔化せるのならば協力は惜しまない。
大事なカレー☆パンマンのパーカーだけど貸してあげることにした。
駅のコインロッカーに女子会前に預けておいたリュックを取リに行く。
中は着替えのTシャツやタオル。潮時用に準備しておいた物だ。
ペットボトルも買い足しておく。それと海苔なし塩にぎりも。
時間を見て間に合いそうなので、バスで大曲まで移動する。
「バイパス大曲交差点まで」
(ゴリゴリーン)
時間が時間だから乗客はまばらだった。
バイパスに入る前に皆さん降りてしまって、あたしだけになった。
〈次はバイパス大曲交差点。ヤオマンホテル・バイパス店へお越しの方はこちらでお降りください〉
(ゴリゴリーン)
気味の悪い地下道を通ってシャトー大曲へ。
どうせまた後で来るんだろうけど。
シャトー大曲の地下駐車場に赤いスポーツカーはまだ来ていなかった。
待っていようと奥に進むと、白いスポーツカーが停めてある。
辻沢では見かけない高級車なので、もしやと思って近づいてみると、やはりユウが乗っていた。
急いでそこから立ち去ろうとしたが思いとどまった。
あたしもミユキのようにオールでがっつり付き合うのもありかなと思ったからだ。
それで車の側まで行ってウインドウの中を覗いてみたのだった。
車の中でユウは背もたれを傾けて目をつぶっていた。
胸が激しく上下している。そろそろ発現の時なのかも知れない。
躊躇したが、ユウに一言この間、夕霧物語のことを寺社縁起と言ってしまった申し開きをしたくて窓を叩いた。
(毎日2エピソード更新)
おもしろい、続きを読みたいと思ったら
ブクマ・★・いいね・一言感想で応援いただけると嬉しいです٩(*´꒳`*)۶
この続きは明日21:00公開です
よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾
たけりゅぬ




