「辻沢日記 43」(社殿の床下)
今日は床下の調査をする。
昨日四ツ辻に帰ったら役場の教育委員会から床板を外す許可証が届いていた。
町長室の秘書さんが手配してくださったのだ。
クロエに電話した時に床板のことを話したら、秘書さんに頼んであげるって言ってくれて、それから2日も経ってない。
クロエってば、フィールドに入って人が変わったみたいに積極的になった。
「ミユウ、あのさ……」
振り返ると、入口にまっぱのユウが立っていた。
裸族か? 野生児か?
「ちょっと服ぐらい着なよ。いくら人がいないって言ったって」
「うるさいな。ママかあんたは」
と言うと床を一蹴り、天井裏に消えた。
しばらくして白パーカーに短パン姿のユウが下りてきた。
「で、何?」
「ん?」
「さっき、何か言いかけてたじゃん」
「ああ、あれはもういい。それよりメシ。腹減った」
まただ。こうしてユウとの間に歪みができる。
でも、全部あたしのせいなのかもしれない。
ユウはいつも真正面からぶつかって来る。それを余計なことを間に差し挟んでいなしてしまうのはあたしの方なのだ。
裸だってよかったのに、でももう遅い。
「おにぎりでいい?」
「じゃあ、それで」
と言ってさっさと食べ始める。
よっぽどお腹が空いていたのか、すごい勢いで三つまで食べると、絶対あたしの分って思ってた残りの一つにも手を出して食べてしまった。
あたしのお腹、お昼まで保つかな。
おにぎりを食べながら、今日の作業内容を伝える。
「床下に入るんだ。いいけど、何にもないと思うよ」
「見たの?」
「いや、ここを歩いてたらわかるじゃない」
と言って、床をドスドスと踏み鳴らした。
「いかにも空っぽ」
確かに、下に何かあるような響きではない。
でも、それが知りたいわけじゃないからと言うと、
「まったく。変態さんの考えることにはついていけないよ」
「どうして?」
「普通は何かあるのを期待しないか。なのに空っぽでもいいって」
「宝探しじゃないから」
「じゃあ何ゲー?」
「そもそもゲームじゃないし。この建築物を記録するのが目的だから」
「記録するのが楽しいんだ」
興味なさそうに言う。
「いやになった?」
あたしはユウの顔を覗き込んだ。
「まあ、いいよ。今日は暇だし付き合うよ」
ユウは少しうつむき加減で、おにぎりの銀紙を丸めながら言った。
「ありがとう」
「いいや」
と銀紙のボールを社殿の奥に投げるから、あたしが取りに行かねばならなかった。
まず床板をはがす。
木片を置き持参したバールで新しい板の釘を抜いた。
板を剥がし、できた隙間から中を覗くと思った通り階段になっている。
でも階段になっているのが災いして数枚剥がしただけで体を滑り込ませるというわけにはいかなかった。
あたしが通れるくらいになるには、結構な枚数を剥がさねばならなかった。
ようやく屈みながらも階段を下りられるようになったので中に入る。
暗闇に懐中電灯を向けようとすると、
「そんなもの持って来たんだ。ミユウだって夜目利くのに」
「潮時だけね」
ユウはいつも猫並みに夜目が利くみたいだけど、あたしは普段はそれほどでもない。
懐中電灯で照らされた中は、ユウが言った通りまったく何もない空間だった。
階段を下りる。
ぎしぎしと鳴りはするけど腐ってはいないよう。
昨日の雨の浸水はなく、乾燥してほこりが舞っていた。
踏み抜かないように用心しながら床面に降りる。
懐中電灯で隅々照らして見た。
「なんか違う」
そこに広がっていたのは天井は低いが上と同じ形の空間だった。
「どうした?」
あとから下りて来たユウが言った。
「うん、もっとドラマチックな展開期待してた」
「どういう?」
「夕霧物語に関連するような」
「けちんぼ池があるって?」
ユウにとっては夕霧物語イコールけちんぼ池だろうけど……。
「そうじゃなくて」
もっと何か無いか室内を探して見た。
「何探してる?」
「羽目板」
「さらに下を求めてるんだ?」
「うん」
それは一番奥のところにあった。格子になった羽目床。
「あった。やっぱり」
「おー、ミユウの執念勝ちだね」
「手伝って。これ取り外せるかやってみたい」
二人で格子を持ってせーので外すと、拍子抜けするほど簡単に持ち上がった。
格子板を横に置いて中に懐中電灯を差し入れてみる。
「ビンゴ」
あたしは思わずが叫んでいた。
あたしが求めていたものがそこにあったのだ。
(毎日2エピソード更新)
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