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第93話 二階での発見

二人は階段を上がった。古い木の階段が、歩くたびにきしむ音を立てる。その音さえも懐かしい。


二階には二つの部屋があった。一つはルカの部屋。もう一つは...


「この部屋、誰の?」


空っぽの部屋。でも、最近まで誰かが使っていたような生活感がある。ベッドも机も、まるで今朝まで誰かがいたかのように。


机の上には、魂写機が置かれていた。古い、でも大切に手入れされたカメラ。レンズを覗くと、不思議な光が見えた気がした。


「これ、使い方分かる?」


健司が尋ねるが、ルカは首を振った。でも、手に取ると不思議としっくりくる。まるで、何度も使ったことがあるような――


窓から外を見ると、金色の雨はまだ降り続いていた。その光の中に、時々白い影が見える。誰かが立っているような、手を振っているような――


「見える?」


「何が?」


「分からない...でも、誰かがいる気がする」


二人は窓辺に立ち、金色の雨を見つめ続けた。答えの出ない問いを抱えながら。


■残された懐中時計


居間に戻ると、ルカは手の中の懐中時計を見つめた。


「これ、すごく大切なものなんだ」


確信はあるが、理由が分からない。蓋を開けると、中には写真を入れる場所があった。でも、そこは空っぽだった。


「見せて」


健司が時計を調べる。医師らしい慎重さで、細部まで観察する。


「美しい細工だ...『橋爪家の時を刻む』か」


「橋爪...それって、私の苗字」


「でも、これが誰のものだったか...」


七時四十二分で止まった針を見つめながら、二人は無言になった。この時間に、何か重要なことがあったはずだ。でも、それが何なのか――


その時、時計がかすかに温かくなった気がした。まるで、誰かが一緒に握ってくれているような。


「大切に、しなきゃ」


ルカが時計を胸に抱く。


「きっと、とても大切な人からの贈り物」


健司も頷いた。彼の目にも、理由の分からない涙が浮かんでいた。

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