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第48話 最後の味覚
冷蔵庫を開けて、食材を確認する。卵、ベーコン、レタス、トマト。そして、ルカの大好きな明太子。
まず、ご飯を炊く。米を研ぐ時の、ざらざらとした感触。水の冷たさ。すべてを心に刻む。
フライパンに油を引き、ベーコンを焼く。ジュウジュウという音は聞こえない、香りも分からない。でも、油の跳ねる振動と、焼ける様子で調理の進み具合が分かる。
続いて卵焼きを作る。ルカの好きな甘い味付け。
箸で少し取って、口に運ぶ。
甘い。ちゃんと味がする。今日はまだ、味覚が残っている。
砂糖の優しい甘さ、醤油の深い旨み、卵そのものの濃厚な味。舌の上で広がる複雑な味わいを、ゆっくりと確かめる。
これが最後かもしれない。
明太子おにぎりを作る。ピリッとした辛さ、磯の風味、ご飯の甘み。日本の朝食の、完璧な組み合わせ。
味噌汁も作る。昆布と鰹節でとった出汁の深い味わい。豆腐の淡白な美味しさ、ネギのシャープな味。
一つ一つの味を、記憶に刻んでいく。




