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第44話 村での異変

村に戻ると、人々の風に異変を感じた。


皆、不安の風を纏っている。紫の霧の影響で、無意識に恐怖を感じているのだろう。


そして、ところどころに「空白」がある。


風が不自然に避けている場所。まるで、そこに誰かがいたのに、今はいない——そんな空白。


『おかしいね』


ルカも何か感じているようだった。


『みんな、何かを探してるみたい』


確かに、村人たちの風は、何かを求めてさまよっているような動きをしている。失った大切なものを探すように。


市場を通りかかった時、それは特に顕著だった。


商店の人たちが、無意識に「空席」を作っている。誰かのための場所を空けているのに、それが誰なのか分からない——そんな奇妙な光景。


写真館での発見


写真館に戻ると、チヨは新しい能力を試してみた。


魂写機を手に取り、ファインダーを覗く。


すると、風が見えるだけでなく、風に乗った「記憶」まで見えることに気づいた。


部屋の中を、無数の記憶の風が吹いている。


楽しかった日の笑い風。


悲しかった日の涙風。


そして——誰かと過ごした優しい風。


その「誰か」の姿は見えない。でも、確かにここにいた。大切な人がいた。


『チヨ姉ちゃん、見つけた!』


ルカが古い箱を持ってきた。


『これ、お母さんの手紙が入ってた』


手紙を開くと、美咲の文字が並んでいる。


『風を読む者へ。あなたが風の欠片を手に入れたなら、きっと心の風が見えているでしょう。覚えておいて。すべての風は繋がっている。たとえ次元を超えても、風は想いを運ぶ。いつか、その風が大切な人を導く時が来る』


母も、同じ力を得ていたのだ。

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