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第33話 手話の練習
その夜、三人は手話の勉強を始めた。
健司が図書館から借りてきた本を開く。基本的な挨拶から始める。
『こんにちは』『ありがとう』『大好き』
簡単な言葉から、少しずつ。
ルカは覚えが早かった。手先が器用で、すぐに形を覚えていく。
『チヨ姉ちゃん、見て!』
ルカが手話で話しかける。まだぎこちないが、意味は伝わる。
『上手ね』
チヨも手話で返す。
健司は医学用語の手話を調べている。
『診察』『薬』『痛み』
仕事でも使えるようにと、熱心に練習している。
ふと、健司が顔を上げた。そして、ゆっくりと手話で伝える。
『チヨ、愛してる』
突然の告白に、チヨは固まった。
ルカが嬉しそうに見守っている。
『返事は、後でもいい』
健司が慌てて付け加える。
チヨは頷いた。今は、まだ答えられない。でも、この想いは確かに受け取った。




