第19話 日常の変化
写真館に戻ると、ルカが心配そうに待っていた。
「チヨ姉ちゃん!健司先生も!遅かったから心配したよ」
「ごめんね、ルカ」
チヨは妹の頭を撫でた。色は見えなくても、ルカの髪の柔らかさは変わらない。
「あれ?チヨ姉ちゃん、なんか違う」
さすがに鋭い。チヨは正直に話すことにした。
「実はね、色が見えなくなったの」
「え?」
ルカの表情が凍りついた。顔から血の気が引いていく様子が、モノクロームの世界でもはっきりと分かる。
「どうして?病気?健司先生、チヨ姉ちゃんを治して!」
「ルカちゃん」
健司が優しく語りかけた。
「これは病気じゃない。チヨが、村を守るために選んだ道なんだ」
チヨは欠片を見せて、昨夜の出来事を説明した。九つの欠片を集めること、その代償として感覚を失うこと、そして最後には……
「そんな……」
ルカの目に涙が浮かんだ。
「じゃあ、チヨ姉ちゃんは消えちゃうの?」
「大丈夫」
チヨは妹を抱きしめた。
「写し世という場所で、ずっとみんなを見守ってる。それに……」
彼女は新しく得た能力に気づいていた。
「色は見えなくなったけど、代わりに暗闇でも物が見えるようになったの。そして、人の周りにある『記憶の光』も」
実際、ルカと健司の周りには、淡い光が漂っていた。それは彼らの思い出や感情が形になったものらしい。
「本当?どんな光?」
ルカが興味深そうに尋ねる。
「ルカからは、とても明るい光。太陽みたいに温かくて、でも時々不安で揺れてる」
「当たってる……」
ルカが驚いた。
「じゃあ、失うだけじゃないんだね」