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3 夕日に輝くハイライト

「ルイージよお、煙草なんて吸ってねえで仕事が終わったらさっさと帰れ」

「うっす、これ吸ったら帰るっすよ」


煙草を片手にこう言うのは俺と同じギルド職員とゴブ爺だ。

その名の通りゴブリンの爺さんで皆からその見た目の通りに呼ばれている。

ギルド内物品の調達や馬車の手配を担う業務支援職員として、このギルドに来て20年以上になる。

一番の古株で、このギルドの生き字引的存在だ。


「ギルマスの野郎、若造の癖に威張りおって」

「そっすねえ」

「わしがもっと若かったら、がつんと言っとるぞ」

「この西区画に赴任ときたら家族からの風当たりもきつそうっすもんね」

「最近の若いもんはすぐ辞めちまう。この5年で10人目のギルマスじゃぞ」

「ここは激務すぎるんすよ」


俺は唐突に食用ゴブリンとゴブ爺たちとの違いを聞きたくなったが必死に堪えていた。

突然湧いて出た「口に出してみたい衝動」ほど怖いものはない。

俺は煙草を深く吸い込み、ながく吐き出した。


ゴブ爺はゴツゴツとした人差し指と親指で煙草をもつタイプだ。

銘柄は、ハイライト以外を吸っているのを見たことがない。

「紙が吸えねえなら、煙草なんて不健康なもん辞めちまうね」

前にそう言っていた。


以前にこの喫煙所でも紙巻きを制限しようという話が出た。

しかし、それを察知したゴブ爺による必死の抗議と抵抗で話が流れたらしい。

もう三人前のギルマス時代のことだ。


「おめえいくつになった?」

「今年30っす」

そう聞くとゴブ爺はひと吸いし、鼻から勢いよく噴き出した。


「ルイージよお、まだ若えんだ。もっと広い世界で生きたらどうだ」

「そっすねえ」

「わしは本気で言っとるぞ」

「広い世界っすか?」

「おめえさんの歳なら冒険者にだってなれるじゃろ」

「俺には向いてねっすよ」


日勤の勤務が被ると、仕事終わりの喫煙所ではいつもこうだ。


「わしはな、ルイージ」

こうしてゴブ爺お決まりの説教が始まる。

「夢にきらめく若者が好きじゃ。逆に、夢を諦めた若者が苦手じゃ。でもの、何故だかお前からはわしの苦手な夢を諦めたもんの匂いがしねえ。だからのお、ルイージよ」

「うっす」

俺はいつものように返事する。

ゴブ爺の決め切った横顔がいつものように夕日に輝く。

「おめえは、夢を追え。わしらのようになるな」


(夢か、30にもなると鬱陶しいものだ。語れば痛し、語らねば甲斐性なし。やれやれ、全く困る。それにゴブ爺みたいに一つの場所で働き続けるのは十分立派なことじゃないか)


「わしは帰るぞ」

「うっす、お疲れっしたっ」

「おう、おめえも早く帰れよ」


ゴブ爺を見送ると俺は次の一本に火をつけた。

煙草の煙と夕日とが、いやに目に染みた。

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