紛い物の炎と捨て身の特攻
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「……ここまでか。だが、貴様らも道連れだ…! お前たち、覚悟を決めろ!」
敵の隊長格の男は、生き残っていた数名の部下たちにそう叫ぶと、懐から禍々しい紫色の光を放つ小さな薬瓶を取り出した。彼の部下たちもまた、まるで示し合わせたかのように、同じ薬瓶を取り出す。そして、彼らは躊躇なく、その中身を一斉に呷った!
「なっ!? あいつら、何を……!?」
ハルが、その異常な気配に気づき、叫ぶ。
次の瞬間、薬を飲んだ兵士たちの身体に、凄まじい変化が訪れた。
「「「グゥゥゥゥアアアアアアアアアッッ!!」」」
人間とは思えないような絶叫を上げ、彼らの全身の筋肉が異常なまでに膨張し、血管が皮膚の表面にミミズ腫れのように浮き上がる。その瞳は理性の光を失い、血のような赤黒い色へと染まっていく。そして、彼らの身体の至るところから、深紅の炎が、オーラとなって噴き出し始めたのだ!
その光景を見た瞬間、直感的に危険を察知した。
(なんだ魔力放出量は!?体内エネルギーを強制的に炎の魔力に変換しているのか!?)
強化された敵たちが、その禍々しい炎のオーラを揺らめかせ、一斉にこちらへ向かって突撃を開始しようとする、その直前。俺は、廃坑の入り口に佇んでいる場合ではないと判断した。
「爆炎閃!」
俺は足元で爆裂を起こし、その推進力で一瞬にして前線にいたハルたちの隣に高速移動した。突然現れた俺に、エリアーナとゼイドが驚きの表情を浮かべるが、構っている暇はない。
俺は、驚くハルたちに鋭く叫んだ。
「ハル! おそらく捨て身の特攻だ! 全員、リーザの盾を中心に円陣を組め! 陣形を整えて守りに徹しろ! 何があっても30秒、耐え抜け! 殲滅は俺がやる!」
「た、隊長!?」
ハルは一瞬戸惑ったが、すぐに俺の意図を理解し、力強く頷いた。
「了解! 全員、隊長の指示を聞いたな! 防御陣形、急げ!」
ハルの号令一下、リーザが巨大なタワーシールドを地面に突き立て、その周囲をハル、ゼイド、そして他の兵士たちが固める。エリアーナとリズベットは、その内側で回復魔法と防御補助魔法の準備に入る。彼らが鉄壁の円陣を組み終えた、まさにその瞬間。
「グオオオオオオッ!!」
理性を失い、ただの破壊の塊と化した数体の「炎の獣」たちが、凄まじい勢いで防御陣に襲いかかってきた!
ドゴォォォォン!!!
先頭の一体の炎を纏った拳が、リーザのタワーシールドに激突し、凄まじい衝撃波と爆音をまき散らす! リーザの巨体が大きく揺らぎ、盾を持つ腕が悲鳴を上げる。
「ぐっ……! なんてパワーだ……!」
次々と襲いかかる強化兵たちの猛攻に、俺たちが組んだ防御陣は、まるで嵐の中の小舟のように激しく揺さぶられる。その攻撃は、もはや何の技術もない、ただの力任せの破壊だったが、それ故に予測が難しく、そして一撃一撃が致命的な威力を持っていた。
ゼイドの雷魔法も、エリアーナの水魔法も、彼らの纏う深紅の炎の前では、その威力を大きく削がれてしまう。
「くそっ、このままじゃ、じり貧だ……!」
ハルが、歯を食いしばりながら叫ぶ。
俺は、その地獄絵図のような光景を、防御陣の後方から、冷静に、しかし燃え上がるような怒りと共に見つめていた。
(……三十秒。いや、もって二十秒か。だが、それで十分だ)
俺は、両手に意識を集中させ、深紅の炎の魔力を、極限まで高めていく。
「その紛い物の炎で……俺の仲間を傷つけるな。お前たちのその苦しみも…俺が終わらせてやる」
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