厄災の到来
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二時間後。夜の闇が最も深くなる時間帯。俺とハルは、作戦地点である崖の上に立っていた。他のメンバーは、既に廃坑の入り口を包囲する位置へと移動を完了している。眼下には、所々に篝火が焚かれた敵のアジトが見える。その静けさは、嵐の前の不気味さを漂わせていた。
「……準備はいいですかい、隊長」
ハルが、静かに、しかし力強く尋ねる。彼の巨体からは、既に身体強化魔法による強大な魔力が溢れ出し、その筋肉は鋼のように張り詰めていた。
「ああ。お前の腕を信じているぞ、ハル」
俺もまた、深紅の炎のオーラを全身に薄く纏い、投擲の衝撃と、着地後の戦闘に備えていた。
「へっ、任せてください。俺の生涯最高の『隊長投げ』、見せてやりますぜ! 最高の場所に、最高の速度で、お届けしやすんで!」
ハルは、ニヤリと笑うと、まるで巨大な丸太でも抱えるかのように、俺の身体を両腕で力強く、しかし慎重に抱え込んだ。
「……頼んだ」
俺は、ハルに合図を送ると、両足の裏に意識を集中させ、爆裂魔法のエネルギーを極限まで圧縮した。
「爆炎推進――最大出力!」
次の瞬間、俺の足元で、轟音と共に強烈な爆発が起こった! その凄まじい推進力が、俺の身体を空へと射出する!
「――行けェェェェェェッ!!」
ハルが、獣のような咆哮と共に、その鋼のような両腕で、俺の身体を敵のアジト目掛けて、渾身の力で投擲した!
俺の身体は、爆裂魔法の初速と、ハルの人間離れした投擲力が組み合わさって生まれた、まさに「人間砲弾」となって、夜の闇を切り裂いていく。風が、轟音となって俺の耳元を通り過ぎていく。眼下に広がる森の木々が、あっという間に後方へと流れていく。
狙い定めた通気孔が、急速に視界に迫ってくる。寸分の狂いもなく、俺の身体は、その暗い穴へと吸い込まれていった。
ドゴォォォォン!!!
凄まじい轟音と共に、俺は廃坑の天井を突き破り、内部の広間へと着弾した。着地の衝撃で地面が砕け、土煙が舞い上がる。俺が纏う深紅の炎のオーラが、薄暗い空間を不気味に照らし出した。
その広間は、ちょうど敵兵たちが休憩を取っていた待機所だったらしい。俺の突然の出現と衝撃音に、テーブルでカードゲームに興じていた者、粗末な椅子で酒を飲んでいた者たちが、何が起こったのか理解できず、悲鳴を上げて逃げ惑う。
「な、何だ!? 敵襲か!?」
「どこからだ! 上か!?」
「い、今の光と音は……!?」
彼らは慌てて武器を取ろうとするが、その動きは混乱しきっている。俺は、土煙の中からゆっくりと立ち上がり、その狼狽した敵兵たちを見渡した。
そして、その光景を見て、口の端に冷酷な笑みを浮かべる。
「……大当たり、だな」
俺は、静かに、しかしその場にいる全員に聞こえるような声で呟いた。
「さて……」
俺は両手に意識を集中させ、圧縮された魔力が爆発的な熱量を伴って噴き出し、俺の左右の掌に、鮮やかな深紅の炎が渦巻きながら燃え上がった。
「厄災の到来だ」
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