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原初の炎、魂の共鳴

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「う……あああああああああっっ!!」


俺は、両膝をつき、頭を抱えて絶叫した。聖炎と呪炎、二人の戦士の壮絶な戦いの記憶、その破壊の情景、人々の悲鳴、そして戦士たちの魂の叫びが、俺の精神を直接揺さぶり、内なる炎が共鳴して暴走しかけている。身体が内側から焼き尽くされるような、激しい痛みと、許容量を超えた情報の奔流に、意識が急速に遠のいていく。


(……だめだ……まだ……師匠との約束が…俺は……生きなければ……)


薄れゆく意識の中で、俺は必死に抗おうとした。だが、次に流れ込んできたのは、もはや抗うことすら許されない、さらに個人的で、そして俺自身の存在の根幹を揺るがすような、衝撃的な記憶の断片だった――。


最初に浮かんだのは、温かく、そして優しい光景だった。小さな、しかし日当たりの良い家。そこには、穏やかな笑顔を浮かべる若い男女――俺の両親の姿があった。父親は、鍛冶師だったのだろうか、その手は大きく、力強かったが、俺に触れる時は、いつも優しかった。彼の身体からは、ごく微かだが、清浄な聖炎の気配が感じられた。それは、彼が聖炎の力を直接行使できるほどのものではなかったが、その血筋に、確かに聖なる炎の資質が受け継がれていることを示していた。


母親は、美しい黒髪を持つ、快活で愛情深い女性だった。彼女は、よく俺を抱きしめ、優しい子守唄を歌ってくれた。彼女の身体からもまた、特異な魔力の気配が感じられた。それは、普段は深く抑え込まれていたが、時折、彼女が強い感情を抱いた時に、わずかに漏れ出す、黒く、そして力強い、呪炎の片鱗だった。彼女もまた、その力を自覚してはいなかったのかもしれない。ただ、その血に、古の呪炎の資質が眠っていたのだ。


そして、俺が生まれた。聖炎の血を引く父と、呪炎の血を引く母。その二人の間に生まれた俺は、奇跡か、あるいは運命の悪戯か、両方の力を、それも極めて色濃く受け継いでしまったのだ。両親は、俺の内に宿る二つの相反する力に気づき、喜びと共に、深い不安を抱いていた。彼らは、俺がこの力に翻弄されず、幸せに生きていけるようにと、心から願っていた。その温かい愛情の記憶が、俺の胸を締め付ける。


だが、その幸せな記憶は、突如として、血と炎の悪夢によって断ち切られた。


俺がまだ、言葉も話せない赤子だった頃のある夜。俺たちの家に、複数の盗賊が押し入ってきたのだ。金品を強奪し、抵抗する者は容赦なく殺傷する、凶悪な連中だった。父親は、俺と母親を守るために、鍛冶用の鎚を手に、必死に抵抗した。彼の身体から、微弱な聖炎の光が放たれ、盗賊たちを怯ませる。だが、多勢に無勢、彼の力は、盗賊たちの凶刃を防ぎきることはできなかった。


母親は、俺をきつく抱きしめ、部屋の隅で震えていた。父親が倒れ、盗賊たちの卑しい手が、俺たち母子に伸びてくる。その瞬間、母親の絶望の叫びと、そして俺自身の、まだ言葉にならない、純粋な恐怖と怒り、悲しみが爆発した。


俺の小さな身体から、黒い炎――呪炎――が、初めて、そして制御不能な形で、周囲に噴出したのだ!


それは、赤子の未熟な魔力から放たれたとは思えないほどの、圧倒的な破壊の力だった。呪炎は、瞬く間に盗賊たちを焼き尽くし、家屋を燃え上がらせた。だが、その勢いは止まらず、不幸にも、俺を守ろうとしていた母親をも、その黒い炎は飲み込んでしまった……。


全てが灰燼に帰した焼け跡。そこで、呪炎の余燼の中で、赤子の俺だけが、一人泣き叫んでいた。俺自身の力が、俺の最も大切なものを奪ってしまったのだ。その絶望と罪悪感が、俺の魂に深く刻み込まれる。


どれほどの時間が経っただろうか。泣き疲れて、意識も朦朧としていた俺の前に、一人の男が現れた。それが、俺の師匠だった。


彼は、この惨状と、そして俺の内に宿る、聖炎と呪炎の、二つの相反する力の気配に気づいたのだろう。その顔には、驚きと、深い憐憫、そして、何か運命的なものを感じ取ったかのような、複雑な表情が浮かんでいた。


彼は、焼け焦げた瓦礫の中から、俺をそっと抱き上げた。その腕は、温かく、そして力強かった。


「……お前は……生きねばならん。この力を……制御し、そして、お前自身の道を見つけるために」


師匠は、そう呟くと、俺を連れて、その地を後にしたのだ――。


これらの衝撃的な記憶の奔流は、俺の精神を限界まで追い詰めた。自分の出生の秘密、両親の死の真相、そして、俺自身の力が引き起こした悲劇。その全てが、あまりにも重く、そして残酷だった。


「う……ああ……あああああああああああああああっっ!!」


俺の身体から、制御を失った魔力が、白銀の聖炎、そして、これまで俺が忌避し、心の奥底に封じ込めていたはずの、禍々しい黒い呪炎のオーラとなって、同時に噴き出した! 二つの異なる性質の炎が、俺の周囲で激しく渦巻き、互いに反発し合い、そして融合しようとするかのように、不安定に揺らめいている。


「リオン君!?」

「アッシュフォード、しっかりしろ!」


エリアーナとアストリッド教官の悲痛な叫び声が、遠くで聞こえる。だが、俺の意識は、もはや、この二つの炎が織りなす混沌の渦の中に、飲み込まれようとしていた。

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