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絶望の包囲網、覚悟の双炎

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俺の右手に宿った深紅の炎は、周囲の空気を震わせるほどの圧倒的な熱量と魔力を放っていた。それは、これまで俺が意図的に威力を抑えていた炎魔法とは全くの別物だった。

「リオン君……その炎は……!?」

エリアーナが、息を呑んで俺を見つめている。彼女だけでなく、ミリア、セレスティア先輩、ロイ、そしてフィンも、俺から放たれる尋常ならざる魔力に気づき、驚愕の表情を浮かべていた。レナードだけは、目を狂的なまでに輝かせ、「素晴らしい! この魔力密度、この純度! やはり君は……!」と興奮を抑えきれない様子だ。

そして、アストリッド教官。彼女は、剣を構えたまま、俺の姿を、そして俺の右手に揺らめく深紅の炎を、鋭い視線で見据えていた。その表情は、驚きよりも、むしろ「やはりか」といった、確信に近いものが浮かんでいるように見えた。

俺は、迫りくる二体の石像兵――エリアーナたちに狙いを定めていた個体――に向かって、右手を突き出した。

「――燃え尽きろ」

呟きと同時に、俺の右手から、深紅の炎の奔流が、二条の槍となって射出された。炎の槍は、石像兵の硬質な装甲を、まるで熱したナイフがバターを切り裂くように容易く貫き、その内部で爆ぜるようにしてエネルギーを解放した。

ドゴォォォン! ドゴォォォン!

二体の石像兵は、内部から破壊され、一瞬にして原型を留めないほどの瓦礫と化して吹き飛んだ。その威力は、先ほどまでエリアーナたちが束になって攻撃してもびくともしなかった石像兵を、いとも簡単に屠り去るほどだった。

「なっ……!?」

「嘘……でしょう……?」

仲間たちの驚愕の声が、広間に響く。だが、俺に感傷に浸っている暇はなかった。周囲からは、依然として数十体の石像兵が、地響きを立てながら迫ってきている。

「お遊びは、もう終わりだ」

俺は、そう呟くと、足元でごく小規模ながらも強烈な爆裂を発生させた。**ゴォン!**という衝撃音と共に、俺の身体は弾丸のように前方へと射出される。


次の瞬間、俺は石像兵の群れの只中にいた。

深紅螺旋クリムゾン・スパイラル!」

俺が右手を薙ぎ払うと、深紅の炎が螺旋状の嵐となって周囲の石像兵を薙ぎ払う。炎に触れた石像兵は、その特殊な合金でできた装甲すらも瞬時に溶解させられ、悲鳴のような軋み音を上げて崩れ落ちていく。

爆炎衝フレア・ドライブ!」

さらに、俺は両足の裏で連続的に小規模な爆裂を起こし、予測不能な三次元的な機動で石像兵の群れを翻弄する。

一体の石像兵の頭上を飛び越え、別の石像兵の背後に回り込み、炎を纏った拳をその魔力コアと思しき箇所に叩き込む。

ドガン! バキィン! ギャリリリッ!

破壊音と金属音が、広間に絶え間なく響き渡る。俺の動きは、もはや人間のそれではなかった。炎の化身か、あるいは破壊の精霊か。深紅の炎を自在に操り、爆裂の推進力で宙を舞い、石像兵の軍勢を一方的に蹂躙していく。

仲間たちは、その光景に完全に言葉を失い、ただ呆然と俺の戦いを見守るしかなかった。


ミリアは、その翠色の瞳を細め、俺の動きの一つ一つを、まるで獲物を品定めするかのように、冷静に、そして熱心に観察していた。「素晴らしい……これほどの力が、まだ隠されていたなんて……。帝国は、必ず彼を手に入れなければ……」と、彼女が小さく呟くのが、戦いの喧騒の中で、俺の耳にだけ届いたような気がした。

アストリッド教官は、剣を下ろし、腕を組んで俺の戦いを見つめていた。その表情は、依然として厳しかったが、その奥には、驚きと、そして何か複雑な感情が渦巻いているのが見て取れた。彼女は、俺の力の危険性を改めて認識すると同時に、その計り知れない可能性にも気づき始めているのかもしれない。

俺の攻撃によって、石像兵の数はみるみる減っていった。だが、それでも敵の数は多い。そして、その中には、一際巨大で、禍々しいオーラを放つ指揮官機のような石像兵が、まだ健在だった。そいつは、他の石像兵を盾にしながら、じりじりと俺との距離を詰め、強力な魔力砲のようなものをチャージし始めている。

(……あいつが、親玉か。あれを叩けば、この騒ぎも収まるかもしれん)

俺は、周囲の雑魚を一掃しつつ、その巨大な石像兵を睨みつけた。深紅の炎のオーラが、俺の全身からさらに激しく燃え上がった。

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