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遺跡の守護者

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巨大な石門の先は、ひんやりとした空気に満たされた、薄暗い通路へと続いていた。壁は磨かれた黒曜石のような、しかしどこか金属質な光沢を放つ石材でできており、天井は驚くほど高い。等間隔に配置された、青白い光を放つ魔晶石が、かろうじて俺たちの足元を照らしているが、その光は頼りなく、通路の奥は深い闇に包まれている。壁面には、風化してはいるものの、精巧なレリーフが施されており、古代エルヴン文明のものと思われる、優美な曲線を描く文字や、幻想的な生物の姿が刻まれていた。


「……素晴らしい……。この様式は、間違いなく古エルヴン期の中でも、特に魔導技術が栄えたとされる第二王朝時代のものだわ……! この壁材も、見たことがない合金…いえ、魔力を帯びた鉱石かしら…」


セレスティア先輩が、壁のレリーフにそっと触れながら、感嘆の声を漏らす。その瞳は、普段の物静かな彼女からは想像もできないほど、興奮に輝いていた。


「おお! 見たまえ、この幾何学模様! これは、単なる装飾ではない! 高度な魔力循環構造を模式化したものだ! そしてこの素材! 黒曜石に似て非なるこの質感、そして内部に感じる微弱だが強固な魔力の流れ! おそらく、対魔法効果の高い特殊な合金、あるいは魔力によって精錬されたオリハルコンの類縁物質かもしれんぞ! これほどの物質で建造されているとは、この遺跡全体が、一つの巨大な魔道具として機能していた可能性も……!」


レナードもまた、いつものように目を輝かせ、壁に顔を近づけて何事かぶつぶつと呟きながら、熱心にスケッチを始めている。彼の分析は、時として突拍子もないが、その根底には確かな知識と洞察力がある。


「二人とも、あまり先行するな。罠があるかもしれん。フィン、ロイ、先行警戒を怠るな」


アストリッド教官が、冷静に注意を促す。彼女の視線は、常に周囲の状況と、そして俺たち生徒一人一人の動きを捉えている。


俺たち第三班は、アストリッドの指示に従い、慎重に遺跡内部の探索を開始した。先行するのは、騎士科のフィンと、隠密魔法を得意とするロイだ。フィンは剣と盾を構え、一歩一歩、足元と周囲の気配を確認しながら進む。ロイは、そのフィンの少し後ろを、音もなく影のように続き、壁や床に不審な点がないか、鋭い視線で調べている。


エリアーナとセレスティア先輩は、壁画や古代文字の解読を試みながら、遺跡の構造や魔力の流れを記録していく。ミリアは、エリアーナの補助をするような素振りを見せながらも、その翠色の瞳は、常に周囲の状況、特に俺とアストリッド教官の動きを注意深く観察しているようだった。


俺は、そんな彼らの後方で、全体の状況を把握しつつ、目立たないように行動していた。ギデオンから貰った革手袋――「影隠しの護符」の力は、この古代遺跡の濃密な魔力環境の中では、どこまで有効なのか。俺は、内心でその効果を確かめながら、この遺跡から感じる特異な魔力の流れを考察していた。


しばらく進むと、通路は開け、巨大なドーム状の広間へとたどり着いた。広間の中央には、ひときわ大きな祭壇のようなものが置かれ、その手前に、一体の巨大な石像が、まるで何かを守るかのように立ちはだかっていた。それは、高さが三メートルはあろうかという、重厚な鎧を纏った騎士の姿をしており、その両手には、巨大な石の戦斧が握られている。その全身は、通路の壁と同じ、黒く金属質な光沢を放つ未知の素材でできていた。


「……気をつけろ。この雰囲気……来るぞ」


ロイが、低い声で警告を発した。その言葉と同時に、広間の中央に佇んでいた巨大な石像兵が、ゴゴゴゴ……という重々しい地響きのような音を立てて、ゆっくりと動き始めたのだ! 石の関節がきしむ音が響き、その兜の奥で、二つの赤い魔力光が、不気味な輝きを放った。


石像兵ストーンゴーレム……! しかも、なんて大きさだ……!」


フィンが、驚愕の声を上げる。彼の顔には、緊張の色が濃くにじみ出ている。


「レナード、あのゴーレムの素材は何かわかりますか? 先ほどの壁と同じものか?」エリアーナが鋭く問う。


「完全に同じかはわからない!だが、 あの光沢、そして感じる魔力の質…! おそらく、極めて高い物理防御力と魔法耐性を持っているぞ! 下手な攻撃は通用しないと考えた方がいい!」レナードが興奮と警戒の入り混じった声で答える。


「まず一体、お前たちの力で対処してみろ。連携を意識しろ。私が手を出すのは、本当の危機に陥った時だけだ」


アストリッド教官が、冷静に、しかし有無を言わせぬ口調で指示を出した。彼女は、俺たちの実力、特にチームとしての対応能力を試そうとしているのだ。


「……やるしかないわね。全員、戦闘準備!」


エリアーナが、覚悟を決めた表情で叫んだ。

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