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学外実習、迷霧の森へ

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谷を越えた先は、さらに深い森が続いていた。先ほどのナイトモンキーとの遭遇と、俺の不可解な戦闘の後、俺たち第三班のメンバーの間には、重苦しい沈黙と緊張感が漂っていた。


そんな、決して良いとは言えない雰囲気の中、俺たちは黙々と森の奥へと歩を進めていた。霧は依然として深く、視界は悪い。いつ、また新たな魔物が襲ってくるか分からない。誰もが、神経を張り詰めさせていた、その時だった。


まるで、分厚いカーテンが突然引き開けられたかのように。


俺たちの周囲を覆っていた濃い霧が、突如として嘘のように晴れ渡ったのだ。一瞬、何が起こったのか理解できず、俺たちは足を止めた。そして、目の前に現れた光景に、息を呑んだ。


そこは、森の中とは思えないほど開けた空間だった。そして、その中央に、巨大な石造りの建造物が、まるで最初からそこに存在していたかのように、厳かにそびえ立っていた。苔むし、蔦に覆われたその姿は、悠久の時を感じさせる。古代の神殿か、あるいは要塞の跡だろうか。入口と思われる場所には、天を突くような巨大な石の門があり、その表面には、風化したエルヴン文字のようなものがびっしりと刻まれている。


さらに、その遺跡の入口を取り囲むように、風化し、所々が崩れ落ちた、巨大な石像がいくつも立ち並んでいた。それは、古代の戦士と思しき像、翼を持つ獣のような像、人間とは異なる知性を感じさせる奇妙な生物の像など、様々だった。それらは皆、永い年月の間にその表情を失っていたが、それでもなお、圧倒的な存在感を放ち、まるで遺跡の守護者のように、俺たちを威圧するように見下ろしていた。


「な……何が……起こったんだ……?」


フィンが、呆然と呟く。


「霧が……晴れた? いや、違う……まるで、別の空間に迷い込んだみたいだ……」


エリアーナも、信じられないといった表情で、周囲を見回している。


「これは……遺跡……! 間違いない、古代エルヴン文明のものだわ……!」


セレスティア先輩が、感嘆と興奮が入り混じった息を漏らす。その瞳は、見たこともないほどに輝いていた。


「おお! なんという荘厳さ! そして、この満ち溢れる魔力の残滓! ここには、間違いなく、我々の知らない偉大な知識が眠っているぞ!」


レナードは、もはや完全に我を忘れ、目を輝かせて遺跡に駆け寄ろうとした。


「待て、アークライト!」


そのレナードを制したのは、アストリッド教官だった。彼女もまた、この突然の状況変化に驚きを隠せないでいたようだが、その表情はすぐにいつもの冷静さを取り戻していた。


「全員、警戒態勢! 周囲の安全を確認しろ! この霧の晴れ方は尋常ではない。何らかの結界か、あるいは罠である可能性が高い!」


アストリッドは、鋭い声で指示を飛ばすと、自身も鋭い視線で遺跡とその周辺の魔力の流れを分析し始めた。彼女の長年の経験が、この状況の異常性と危険性を即座に判断させたのだろう。


「……遺跡から強力な魔力が放出されている。だが、敵意は感じられない……。むしろ、何かを拒絶するかのような、あるいは、一部の者を選別するかのような……そんな性質の結界のようだ」


セレスティア先輩が、精神感応で感じ取った情報を報告する。


「ふむ……」アストリッドは腕を組み、しばらくの間、険しい表情で遺跡を睨みつけていた。この遺跡が学術的に極めて価値が高いこと、そして、内部に未知の危険が潜んでいるであろうこと。彼女はその両方を理解しているはずだ。そして、引率教官として、生徒たちの安全を確保する責任がある。だが同時に、この貴重な機会を利用したいという考えも、彼女の中にはあるのかもしれない。


数分の沈黙の後、アストリッドは、決断を下した。


「……よし。これより、遺跡内部の調査を開始する」


その言葉に、レナードとセレスティア先輩は期待に目を輝かせ、エリアーナとフィンは緊張に顔を引き締め、ミリアは興味深そうに微笑み、ロイは静かに頷いた。


「だが、聞け」アストリッドは、俺たち一人一人の顔を、厳しい視線で見据えながら続けた。「ここから先は、これまでの実習とは次元が違う。古代遺跡には、現代の知識では計り知れない罠や、強力な守護者が存在することが多い。一歩間違えれば、死に直結する。私の指示なしに、決して勝手な行動はするな。常に五感を研ぎ澄ませ、周囲への警戒を怠るな。そして、少しでも危険だと判断したら、躊躇なく撤退する。いいな? これは、命令だ」


彼女の言葉には、絶対的な重みがあった。俺たちは、皆、緊張した面持ちで頷いた。


「では、第三班、前進。遺跡内部へと進入する」


アストリッドの号令と共に、俺たちは、ゆっくりと遺跡の石門へと歩みを進めた。目の前にそびえる巨大な門の奥には、暗く、深い闇が広がっている。

俺は、胸の中に渦巻く、不安と、わずかな期待、そして、自由への渇望を抱きながら、仲間たちと共に、未知なる古代遺跡の内部へと、その第一歩を踏み出した。


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