表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/132

学外実習、迷霧の森へ

作品評価&ブックマークをお願いします!

3年生の先輩たちもいる中でエリアーナが暫定的なリーダーとして指名されたのは、アストリッド教官の何らかの意図があってのことだろう。貴族令嬢でありながら、合同訓練での経験もあり、何より真面目で責任感の強い彼女ならば、この個性的なメンバーをまとめるのに適任だと判断したのかもしれない。

エリアーナは少し緊張した面持ちながらも、しっかりとリーダー役を務めようとしていた。


「えっと、まずは私からね」と、エリアーナは軽く咳払いをして、自己紹介を始めた。

「エリアーナ・クレスウェル、魔法科の二年生よ。得意なのは水属性の魔法と、基礎的な治癒魔法。探知系の魔法も少しだけ使えるわ。今回の実習では、迷霧の森の特殊な魔力分布や、もし古代の遺跡が見つかれば、それを調査してみたいと思っているの。リーダーは不慣れだけど、皆で協力して、実りある実習にしたいわ。よろしくお願いするわね」

彼女の言葉は誠実で、メンバーたちも真剣な表情で頷いている。


次に、ミリアが優雅な仕草で微笑みながら口を開いた。

「ミリア・ヴァレンタインですわ。ゼノン帝国からの交換留学生で、魔法科の二年生。帝国では主に精霊魔法と、あとは少しだけ錬金術を学んでおりましたの。アルクス王国の進んだ魔法技術、特に古代魔法の知識には大変興味がありますわ。この実習で、皆さんとご一緒できることを光栄に思います。どうぞ、よろしくお願いいたします」

その完璧な笑顔と流暢な言葉遣いは、相変わらずだ。彼女が「古代魔法の知識に興味がある」と言った時、ちらりとレナードの方を見たのを、俺は見逃さなかった。


そのレナードは、ミリアの言葉などまるで耳に入っていないかのように、自分の世界に没頭していたが、エリアーナに促されると、ハッとしたように顔を上げ、早口でまくし立てた。

「レナード・アークライト、魔法理論科の三年だ。私の研究対象は、未知の魔法現象、古代の術式、そして何よりも特異な魔力パターンの解析にある! 迷霧の森は、そういったものの宝庫である可能性が極めて高い! 特に、リオン・アッシュフォード君、君のあの深紅の炎のエネルギー変換効率と、爆発現象による加速原理! あれは絶対に解明しなければならない! 実習中は、可能な限り君の魔力の発現を詳細に記録し、分析させてもらうから、そのつもりでいてくれたまえ! ああ、それから、新種の粘菌や発光する苔、あるいは古代文明の遺物なども、私の知的好奇心を大いに刺激する! 見つけたら、必ず私に報告するように!」

彼の常軌を逸した自己紹介(というより、研究発表と要求)に頭が痛くなる。

馬車内は一瞬、奇妙な沈黙に包まれた。フィンなどは、唖然として口を開けている。


そんな空気を破ったのは、ロイの小さな声だった。

「……ロイ・スタイン。魔法科二年。……ダンジョンの罠の解除と、隠密魔法は……多少できる。……目的は、特になし。……よろしく」

彼の自己紹介は、いつも通り控えめで、そしてどこか謎めいていた。「隠密魔法」という言葉に、ミリアがわずかに反応したように見えたが、気のせいかもしれない。


次に、新メンバーの一人、セレスティア・ルーンフェルド先輩が、静かに口を開いた。彼女は、色素の薄い銀色の髪を長く伸ばし、眼鏡の奥の紫色の瞳は、どこか物憂げな雰囲気を漂わせている。常に数冊の古書を抱え、あまり感情を表に出さない、ミステリアスな上級生だ。

「……セレスティア・ルーンフェルド。魔法科の三年です。専門は、古代文字の解読と、防御結界魔法。精神感応系の魔法も、少しだけ扱えます。……迷霧の森には、古い時代の遺跡や、忘れられた伝承が眠っていると聞いています。それらを調査し、記録することが、私の目的です。……皆さんの、お邪魔にならないように努めます」

その声は、囁くように小さかったが、不思議とよく通った。彼女の専門分野は、この実習で非常に役立ちそうだった。


そして、もう一人の新メンバー、フィン・マクニールが、緊張で顔をこわばらせながら立ち上がり、大きな声で自己紹介を始めた。

「フィリップ・マクニール、騎士科の一年生です! フィンと呼んでください! 得意なのは、基本剣術と、体力と持久力には自信があります! あと、偵察任務も少しだけ経験があります! 今回の実習では、先輩方の足を引っ張らないよう、全力で任務にあたり、多くのことを学びたいと思っています! よろしくお願いします!」

彼の初々しくも真摯な態度は、好感が持てた。ただ、少し気合が入りすぎているようにも見える。


最後に、俺の番が回ってきた。皆の視線が、俺に集まる。特に、ミリアとレナードの視線は、探るような、あるいは期待するような光を帯びていて、非常に居心地が悪い。

「……リオン・アッシュフォード。魔法科二年。得意なことは特にないが……まあ、後方支援くらいならできると思う。よろしく頼む」

俺は、できるだけ当たり障りのない、そして目立たないような自己紹介を心がけた。


「ええー、リオン君、謙遜しすぎだよー!」と、どこかの誰かさんの声が聞こえたような気がしたが、それはきっと空耳だろう。


全員の自己紹介が終わると、エリアーナは少し安堵したような表情を浮かべ、改めてメンバーを見回した。

「ありがとう、皆さん。それぞれの得意なことや目的が分かって、心強いわ。それじゃあ、この情報を元に、実習中の大まかな役割分担を決めたいと思うのだけど……何か意見はあるかしら?」


そこからは、比較的スムーズに話が進んだ。

前衛および護衛は、騎士科のフィンが主に担当し、ロイが隠密魔法を活かして索敵や奇襲でサポートする。

魔法攻撃および後方支援は、エリアーナ(水・治癒)、ミリア(精霊・錬金術)、セレスティア先輩(防御結界・精神感応)が状況に応じて連携する。

薬草採集や地理調査、そして未知の現象の分析はレナードが担当し、セレスティア先輩が古代文字や遺跡関連の調査で協力する。

ロイは、ダンジョンの罠の探知と解除も担当することになった。


そして、俺の役割は……。

「リオン君には、全体の状況を見て、後方からの支援や、手が足りない部分の補助をお願いしたいわ。あなたの冷静な判断力は、きっとチームの助けになると思うから」

と、エリアーナに言われた。それは、俺が望んでいた、できるだけ目立たず、しかし全体の状況を把握できる、好都合な役割だった。もちろん、彼女が俺をどう評価しているのかは不明だが、少なくとも今は、それでよしとしておこう。


こうして、俺たち第三班の、仮の役割分担と、それぞれの目的意識が共有された。

馬車は、既にエルドラードの喧騒を完全に離れ、広大な平原を北東へと向かって進んでいる。窓の外には、緩やかな丘陵地帯と、点在する小さな村々が見えた。


どんどん更新していきますので作品評価&ブックマークをお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ