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双炎の試練

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俺の、最後の試練が始まった。

『星詠みの間』――星々が渦巻く壮大な空間の中央で、俺は二人の初代戦士、聖炎の戦士と呪炎の戦士と対峙していた。彼らが手にしているのは、俺が師匠から受け継いだ白銀と漆黒の魔剣、そのオリジナル。


キンッ!!!


四本の剣が激しく衝突し、空間全体を揺るがすかのような甲高い金属音を響かせた。戦いは、序盤から熾烈を極めた。聖炎の戦士の剣技は、流麗で、一切の無駄がなく、まるで未来を予知しているかのように、俺の攻撃を完璧にいなし、そして的確なカウンターを繰り出してくる。呪炎の戦士の剣技は、荒々しく、一撃一撃が山をも砕くほどの凄まじい破壊力を秘めており、まともに受ければ、俺の魔剣ですら砕け散ってしまいそうだった。


そして何より、彼ら二人の連携は完璧だった。俺が呪炎の戦士の重い一撃を双剣で受け止め、体勢を崩したその一瞬の隙を、聖炎の戦士の鋭い突きが、音もなく俺の脇腹を狙う!


「くっ……!」

俺は、咄嗟に足元で小規模な爆裂を起こし、その推進力で後方へと跳躍。かろうじて致命傷は避けたものの、脇腹の鎧が浅く切り裂かれ、鋭い痛みが走った。


(……強い! 強すぎる……! これが、初代の戦士……!)


俺は、距離を取り、息を整えながら、改めて二人を睨みつけた。そして、一瞬の隙を突き、今度は俺から仕掛けた。爆裂加速で一気に聖炎の戦士との間合いを詰め、渾身の力で黒い魔剣を振り抜く!


ザシュッ!


確かな手応えがあった。俺の剣は、彼の左腕の鎧を深く切り裂いたはずだ。だが、次の瞬間、俺は信じられない光景を目にした。


聖炎の戦士は、腕の傷を意にも介さず、まるで何もなかったかのように、右手の長剣で俺に反撃してきたのだ。そして、俺が驚愕する目の前で、その切り裂かれた鎧の隙間から、眩い白銀の聖炎が噴き出すように燃え上がった! 炎が収まった時、そこには鎧の傷はおろか、血の一滴すら残っていなかった。傷が、一瞬で消えているのだ。


「なっ……!? なんだ、今の治癒速度は……!? 俺の聖炎とは比べ物にならない……!」


(……まさか! 奴は、常に聖炎を鎧のようにその身に纏い、傷ついた瞬間、自動的に、そして即座に再生しているというのか!?)


それは、俺の知る聖炎の使い方とは、全く次元の違う応用技術だった。これでは、多少のダメージなど意にも介さず、常に捨て身で攻撃を仕掛けることが可能になる。なんて無茶苦茶な戦い方だ……!


その俺の動揺を見逃すはずもなく、今度は呪炎の戦士が、地を蹴って突進してきた! 彼が振るう漆黒の大剣が、轟音と共に俺に迫る。俺は、それを双剣で受け流すが、その凄まじい衝撃で、黒水晶の床に足がめり込んだ。そして、衝撃で飛び散った呪炎の黒い火の粉が、周囲の床にいくつも燃え移り、小さな黒い炎となって燻り続けている。


(……ただの燃えカスか。だが、厄介だな)

俺は、足元の黒い炎を警戒しながら、呪炎の戦士と距離を取ろうとした。だが、その瞬間。


呪炎の戦士が、俺に向かって不気味に指を突き出した。

それに呼応するかのように、俺の足元や、退路を塞ぐようにして燻っていた黒い炎が、突如として、何の前触れもなく、巨大な火柱となって燃え上がったのだ!


「しまっ……!?」


俺は、咄嗟に爆裂加速でその場から離脱するが、避けきれなかった火柱の一つが、俺の背中を焼いた!


「ぐあああっ!」

激痛に、思わず呻き声が漏れる。


(ただの燃えカスじゃなかったのか…! 奴は、呪炎を戦場に撒き散らし、それを後から任意で起爆させる『置き火』の罠**として使っている! なんて戦術だ……!)


一人は、傷を負っても即座に再生する、不死身の聖騎士。

もう一人は、戦場そのものを地雷原に変える、狡猾な魔戦士。


俺は、この二人の、初代の戦士を相手に、完全に、そして絶望的なまでに、追い詰められていた。


「はあっ……はあっ……!」


俺は、双剣を杖代わりにし、荒い息を繰り返していた。背中の火傷は、聖炎の力で少しずつ癒えてはいるが、痛みは消えない。そして何より、精神的な消耗が激しかった。聖炎の戦士の捨て身の突撃と、呪炎の戦士の予測不能な置き火の罠。その二つを同時に相手にするのは、至難の業だ。


(……このままでは、ジリ貧だ。何か、何か手を打たなければ……!)


俺は、必死に思考を巡らせた。彼らの戦い方。俺の知らない、聖炎と呪炎の使い方。あれは、ただの魔法ではない。数千年の時を経て洗練された、双炎を扱うための、究極の戦闘技術。


(……そうだ。この試練は、俺に彼らの苦しみを伝えるためのものだけじゃない。同時に、俺に、この力の本当の使い方を、教えてくれているんだ……!)


そのことに気づいた瞬間、俺の目の前が、わずかに開けたような気がした。俺は、もはやただ防戦するのではなく、彼らの動きを、その魔力の流れを、注意深く、そして貪欲に観察し始めた。


聖炎の戦士は、どうやってあの自己再生を可能にしている? 彼は、聖炎をただ傷口に当てるのではない。常に、全身の血流や魔力回路に、薄く、しかし絶え間なく聖炎を循環させている。それによって、身体の治癒能力を極限まで高め、傷ついた瞬間に、その部分へ自動的に聖炎の力が集中するようになっているのだ。


呪炎の戦士の「置き火」は? 彼が剣を振るうたびに飛び散る呪炎の火の粉。その一つ一つに、彼の魔力が、まるで蜘蛛の糸のように、微かに、しかし確かに繋がっている。そして、彼がその糸を引くことで、火の粉は、爆発的なエネルギーを解放するのだ。


(……真似るしかない……! 彼らの技を、この戦いの中で、盗んでみせる!)


俺は、覚悟を決めた。


「ぐおおおおっ!」

再び、聖炎の戦士が、俺の防御をこじ開けようと、捨て身の突きを放ってきた! 俺は、それをあえて、左肩で浅く受け止めた!


ザシュッ!


激痛が走るが、俺は歯を食いしばり、耐える。そして、その傷口に、俺自身の聖炎の力を、ただ癒すためではなく、彼のやり方を模倣して、**身体の内側から循環させるように、**集中させた!


「……っ!!」


傷口から、白銀の光が溢れ出す。治癒の速度が、先ほどまでとは比較にならないほど速まっているのが分かった。だが、その分、魔力の消耗も凄まじい。


(……まだだ! これで、俺も、あんたと同じ土俵に立てる……!)


俺は、傷の痛みを堪えながら、不敵な笑みを浮かべた。そして、今度は、俺自身の深紅の炎を、呪炎の戦士の置き火を相殺するように、周囲に撒き散らし始めた。


俺の、反撃が、今、始まる。

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