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第39話 リリーナ様。プロポーズをする。

 


「シュバインフルト伯爵は、レオナルトと結婚する意志はあるのかね?」


 先王陛下の言葉に、わたしは詰まる。

 ここにきて、社交デビューの年、方々の下位貴族の次男三男に言われた言葉を思い出した。


 ――リリーナ様との縁談、大変光栄ではございますが、私にはもったいなく……。


 ここにきて、自分がこの言葉を言う立場になるとは思わなかった。

 確かに、わたしは伯爵家当主だけど、元王子様との結婚なんて、この身には過分すぎる。

 でも……。


 ――結婚は愛する人とするように……――


 お爺様の言葉を思い出す。

 叶わなくてもいいから。

 何にも伝えないで終わらせられない。


「恐れながら、陛下にお答えするよりも、先にわたしの意志をお伝えする方がおりますので」


 わたしがそう言うと、陛下は軽やかな笑い声を立てられた。


「そういうところは先代に似ているな」


 尊敬するお爺様に似ていると評されるのは、嬉しいな。


「ふむ、王族を離れた子だが、それでも一番かわいい子供なのだ。心配がすぎたか」


 そうでしょうね。愛される末っ子気質がちらほら見える方だから、レオナルト様は。


「それでも、本気らしいなというのはわかるというもの」


 先王陛下がそう言いながら、視線をわたしから護衛騎士の方へ移す。

 護衛騎士や従卒は最初こそ止めていた感じ……だったけど、最終的には声の主を通していた。

 蒼銀の髪に、黄金の瞳を持つ、見慣れた彼の姿がわたしと陛下に近づいてくる。


「……レオナルト様」

「お前は呼んではいないんだがな?」


 先王陛下の言葉にレオナルト様は不敵に笑う。

 あら、かっこいい。


「陛下のためですよ、彼女に何をするおつもりで?」

「話をしたいだけだったんだがの」

「失礼ながら、陛下の招聘で、彼女がどれだけの覚悟をしたのかご存じないようだ」


 レオナルト様の言葉に陛下は私を見る。


「何をした、シュバインフルト伯爵」


 陛下はわたしを見る。

 大したことはしてませんよ。


「わたしが無事に王城を辞して自分の家に戻れば、いつもと変わらない日常でございます」


 わたしがしれっと言うと、先王陛下は高笑いをする。


「……はは、うん。シュバインフルト伯爵、何をしたかわからんが、レオナルトと一緒に王城の庭園を楽しんでおくれ。帰りはレオナルトに送ってもらえ。レオナルト、速く結果を聞かせろ。年寄りはいつ神の足元に行ってもおかしくはないのだ。先代、シュバインフルト伯爵のように」


 先王陛下は立ち上がる。


「シュバインフルト伯爵、こちらも勘違いさせるような招待だったかもしれん。次回は私の名前で招待するので、気負わず訪れてほしい」


 え、次回もあるの?

 どうやらその表情が出ていたようで、先王陛下はまた笑った。

 陛下が去っていくので立ち上がって礼をする。


「リリーナ、何か言われたか?」


 王妃殿下がくるかと思いきや、先王陛下だったので驚いたけれど、お茶会の結果は、わたしの想像の何倍もマイルドだった。

 こっちは「お前みたいな娘がレオナルトのそばにいるなんて、ふざけるな!」とか怒鳴られるぐらいは覚悟してたんだけどな……。

 それか、もっと陰惨な感じでお茶に毒を仕込むかぐらいは想像もしたけど、それもなかったし。

 単純に、レオナルト様が連れ歩いてるわたしを見たかったって感じか……。

 こっちは最悪の場合を備えていたんだけど杞憂に終わった。


「……特に何も……」


 レオナルト様もほっとした表情だ。


「そう……そうか……よかった」


 そういって、レオナルト様はわたしの手をとってくれる。

 せっかくだから、先王陛下の仰るように案内をすると、レオナルト様はわたしをエスコートしてくれた。

 レオナルト様が幼い時に同年代の子供と顔合わせのために催されたガーデンパーティーの場所や、温室とか……温室は何も一つだけじゃないんだよね。


「先王陛下も、わざわざ王城に……アーデルハイド様のお名前まで借りて……」

「ご心配だったのですよ。レオナルト様が、どんな毒婦と一緒に今期の社交シーズン過ごしているかと気を揉んだのでしょう」

「また自分にそういう言い方をする」


 レオナルト様が窘めるようにそう言うけど、わたしはえいとレオナルト様の腕に腕を絡ませる。


「実際はそういう評価です。でもねレオナルト様」


 わたしはレオナルト様を見上げる。


「わたしはレオナルト様が好きですよ」


「リリーナ?」


「レオナルト様が好きなんです。わたしと、結婚してくださいますか?」


 わたしがそう言った瞬間、レオナルト様はわたしを抱きしめる。


「なんだよ、リリーナずるいな」


「だって、わたし、シュバインフルト伯爵家当主です。結婚は自分から申し込まないとダメでしょ?」


「もう、ほんと、ダメ、おかしい。オレが先に言ったのに! 結婚してほしいって!」


「そうでした。でも言いたかったんです」



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