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第29話 リリーナ様。お茶会でからまれる。

 


「でも、これでようやく、クレアール公爵様も、前の奥方様のことを振り切ったってことですわよね」


 先日の夜会からお茶会のお誘いが引きも切らない状態になっていた。

 今期社交シーズンでうわさのクレアール公爵のお相手とされるわたしがお茶会に出席するということは、主催者の箔になるようだ。

 クラウドとフリッツに厳選をお願いしていた招待状の中から、以前から懇意にしている侯爵家のご令嬢のお茶会に出席している。


「あら、ちゃんとしたお話が進んでるのかしら?」


 そう声をあげたのは、ランメルツ侯爵令嬢スザンナ様だった。

 顔が広いご令嬢の主催のお茶会なので、彼女も招待されて出席していたようだ。

 そして相変わらず、敵視されている。


「隣国ガイルートの第三王女エルヴィラ様とのご結婚がたった一月で不幸な結末に終わって。その憔悴したご様子には他人事ながら心を痛めたものですわ。でも――意外ですわね、そんなクレアール公爵様にはグルーグハルト公爵家のマルガレータ様が後添いの候補として最有力と先日伺ってますのよ? ご容姿もご気性もそれはそれは亡くなられた奥様に近くて、グルーグハルト公爵様も期待されていたご様子でしたのに、そのお話はシュバインフルト伯爵様はご存じありませんの?」


 ランメルツ侯爵令嬢スザンナ様は何がどうあっても、わたしがレオナルト様の傍にいるのが許せないようだ。

 でもさあ、その話題を自分で出すってところがね。


「確かに、ランメルツ侯爵令嬢の仰る通り、グルーグハルト公爵家のマルガレータ様のお話はよく耳にしている。正式なお話になっているのならば、レオナルト様がその旨を公表するのでは?」


 そこが不思議に思うところだ。

 そう、レオナルト様の後添い、再婚相手として最有力候補。

 ピンクブロンドに青い瞳、細い華奢な姿は妖精のようだと噂されるグルーグハルト公爵家のマルガレータ様。

 今回、お見合い攻勢を凌ぐ為に、わたしをパートナーにするのはいい。

 ランメルツ侯爵令嬢のように、「相手が爵位持ちだろうと、公爵家だろうと、とにかく自分がレオナルト様と結婚するのよ!」と勢いのいいご令嬢を牽制するために、わたしをダミーにしたいって思惑があるのかも――……と想像した。

 水面下で進んでるお話があるなら、今度、一応確認するべきだな。


「しかし、そのお話、ランメルツ侯爵令嬢はどちらから伺ったのかな? ずいぶんと、レオナルト様にご執心のようだ。そういうお話には詳しいのですね」


 わたしがそう言うと、他のご令嬢達がくすくすと笑う。

 昨年どれだけごり押ししてマウントをとっていたかわかるなあ。

 今期、わたしがパートナーを務めても、他のご令嬢達が好意的なのは、昨年のこのご令嬢がとったマウントに苦渋を味わったからかもしれない。

 まあ自慢だよね。レオナルト様のパートナーになったら浮かれちゃうだろう。

 気持ちはわかる。


「なんにせよ、喪中明けで、王都の社交界に疎いわたしにお声をかけてくださるレオナルト様には感謝しかない。が――変わった方だとも思っている」

「変わった方ですって?」

「奥方として最有力候補のグルーグハルト公爵家のマルガレータ様ではなく、わたしを今期お誘いくださるのだから、変わった方だろう。昨年もランメルツ侯爵令嬢をお誘いしていたようだし?」


 別にレオナルト様がこのご令嬢を誘っていたわけではないのはわかってる。

 この間の夜会の時のように、強引に父親が娘の相手を願い出た――というのが真相だし、それはこの茶会に出席しているご令嬢達も周知している。


「なんですって!? クレアール公爵様をそのように言われるなんて!」


 ランメルツ侯爵令嬢は目を剥いてわたしを見る。


「気が強くて神経が太い女性がお好みかもしれない。でなければ、昨年がランメルツ侯爵令嬢で今年がわたしの理由がつかないだろう?」


 自虐だが、お前も一緒だランメルツ侯爵令嬢。

 同じ穴のムジナ、目くそ鼻くそ、五十歩百歩、その差はないだろ?

 ますますランメルツ侯爵令嬢はわたしを睨みつける。

 わたしはこれぐらいで笑われてもどうってことはないが、彼女にはきついだろうな。


「わたくし! 具合が悪いので失礼させていただくわ!」


 いきり立って席を立つランメルツ侯爵令嬢に見送りをしようとした主催のご令嬢は断られたようだ。

 うん。やっぱりこの規模のお茶会の主催は大変だな。


「ランメルツ侯爵令嬢はダイムラー伯爵家へお輿入れされるのよね」


 ほう。父親であるランメルツ侯爵は、爵位一段下の伯爵家に彼女をやるのか。家との政略だろうけど、あの気位高そうなご令嬢を迎えるダイムラー伯爵家には同情する。

 ……まあそこもわたしと同じだが。しかし、よく縁談をまとめられたな。


「レオナルト様もどなたと再婚されるかわからないが、幸せになってもらいたいものだ」

「もう~リリーナ様ったら、そんな他人事みたいに!」


 結婚は政略だからね。

 女伯爵家当主と若い公爵様に夢を見ちゃうんだろうけど。

 実際わたしも今期はいい夢見させてもらってるよ。

 さんざんな縁談お断りもロマンス詐欺も、レオナルト様のおそばにいることで、そんな苦い記憶は薄れてる。

 とはいえ、虫除け係なのは、変わらないんだけどさ!


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