末っ子は頑張った
「あの…」
棘々した空気の中
小さく蹲っていた玲央が恐る恐るといった感じに口を開く
そこにいたみんなが一斉に玲央の方を見る
少々エキサイトしていた彼らの表情はかなり硬く
玲央はビクッとして一瞬たじろいだが
グッと両の拳に力を入れて話を切り出す
「あの…兄ちゃんたちのトラウマ?…のきっかけの事は俺がいない時に起こった事みたいだからよく分からないけど…」
「……あぁ」
瑠加が強張った面持ちで玲央の目を睨むように見る
玲央は負けじと瑠加を見つめ返し話を続ける
「涼クンと理久兄のコト
理久兄イナイのとこで…みんなであーだコーダ言うのは違うと思うダカラ…駄目だとおもいマス!
理久兄のキモちはみんなちゃんと聞けてないダカラ
分からない…です…でも涼くんが理久兄のコト、大好きってコトみんな知ってるハズです!」
玲央は何故か『そこそこ日本語を上手に話せる外国人のような口調』になっている…そして
その顔はいつになく真剣だ
「涼くんと理久兄が恋人同士ではナイにしてもデスね
2人が仲良しなのは確かなのデスし
僕たち、知らない2人の絆があるのかもしれない…デス
だから…ここで…涼くんを詰めたり
なんかギスギスしてタリしたら理久兄が帰ってきたとき悲しむと思いマス!
だから…だから…」
「プッ」
伊吹くんが吹き出す
「玲央…緊張してんのか?変なしゃべり方してさ」
「でも、玲央くんの言う通りじゃないかな?
な?冴木?」
そう言って拓真くんが優しい目をして玲央に笑いかける
「まぁ…そうだな…
ここで俺らが揉めたとこで理久は喜ばねぇのは確かだな」
そう言うと、瑠加の肩の力がフッと抜け顔が少し緩む
普段、家ではゲームばかりして
ダラダラポヤポヤな末っ子全開の玲央の頑張りが
皆に届いたようだ
「玲央が緊張してるの初めて見た」
ましろくんがケラケラ笑いながら伊吹くんの腕に絡みつく
「なんか…ごめん」
涼くんだけはシュンとしたまま下を向く
「涼、悪かった…お前がいない間、理久が寂しそうで
なんかいろいろと感情押し込めて全て諦めたような
そんな気がしたから…つい」
瑠加が涼くんに頭を下げる
「僕は謝らないよ。行こ!ましろ」
そう言って伊吹くんはましろくんを連れて出て行ってしまった
まぁ…伊吹くんのことだから次に顔を合わせた時は何事も無かったように振る舞うんだろうけど
「あ、冴木!そう言えば俺、買うものあったんだ、悪いんだけど店まで車出してもらえる?」
気不味そうな顔をしている瑠加に拓真くんが声をかけた
「お?あぁ…良いよ」
4人か出ていったあと
拳を握ったまま固まっていた玲央がヘナヘナと座り込み大きなため息をつく
「……はぁ」
うっすら涙目だ
そんな玲央にそっと近付き
そっと頭を撫でた洸くん…
居たんですね???洸くん
全く気配を感じませんでしたが…
そのスキル隠密ですか?スパイですか?壁ですか?
「あ、あきらぁぁぁ…怖かったよぉ」
玲央が洸くんに抱きつく
洸くんは抱きしめ返して『よしよし』と言わんばかりに背中をポンポンする
まぁ良いや
玲央は洸くんにお任せして
涼くん!そう涼くん!
そう思って涼くんの方を振り向くと
まだ強張った面持ちで固まる涼くんがいた
顔色は蒼白く、キュッと唇を噛んでいる
「涼くん…」
「美月さん…理久さんも誤解したんでしょうか?」
「えっと…うんと…どうだろう…
涼くんがうちに来なくなって暫くしたころ
理久と私が出かけた時に涼くんが女の子とチーズケーキ食べてるの見かけた時、理久はすごく驚いていたみたいだけど…正直、理久がどう思ったかとかは分からないなぁ」
「…そう…ですか…」
「でもでも…涼くんが来ないと理久の機嫌が悪かったし…女の子といるの見たとこも驚いただけって言ってはいたけどショック受けてるみたいにも見えたし…まぁ…私の主観だけど」
「………そうですか…」
ど、どうしよう
上手い言葉が出て来ない
『大丈夫だよ』って言うのも根拠無いし…
なんか無責任な感じするし…
「美月さん…僕、理久さんのところに行ってきます
理久さんの誕生日にチーズケーキ作って…持ってきます!」
「え?」
「だから…理久さんの滞在先を教えて下さい!お願いします!」
「理久の滞在先…会社の寮って言ってたけど…」
涼くんは男のコだから寮に行っても大丈夫…?
なのかな?
「会社の…寮…ですか…」
「うん…」
「そうですか…わかりました…
理久さんに連絡してどこかで待ち合わせます」
「でも…」
「理久さんが…来てくれなくても良いんです
このまま何もしないでいる訳にはいかないですから」
「そっか…ケーキ作るとき何か手伝うことある?」
「いえ…大丈夫です、ありがとうございます」
「うん…そっか…理久は頑なっていうか頑固っていうか…結構難しいけど…」
「わかってます…でも、僕もかなりしぶといので」
そう言って涼くんは微笑んだ
その瞳からは強い意志を感じる
涼くんは…大丈夫…だな
涼くん…すごいな…
強かというかなんというか…
理久はこんなに涼くんに慕われて幸せ者なんだよなぁ
理久はいつか涼くんの想いをちゃんと受け止められるようになるんだろうか…
恋愛的とまではいかなくても…
涼くんの真心とか、そういうのを…ちゃんと…
そうなったら…いいな
決意を新たにした涼くんが眩しく見えた
貴腐人なのでした




