コーヒーと涼くんと…
涼くんがレジにやってきた
手には新作スイーツのチーズケーキと
紅茶のペットボトルを持っている
「いらっしゃいませ 今日はコーヒーじゃないんだね」
涼くんは無類のコーヒー好きで
大学近くのカフェで高校時代からバイトをしていて
そこのカフェの常連である貴腐人は
涼くんとは元々少し話をする間柄
コーヒー仲間だ
「はい チーズケーキのときは紅茶かな?って
勝手に思ってて」
「あー、なんかわかる気がする
そのチーズケーキ新発売だからね!後で感想聞かせて」
「了解です そういえば、うちのカフェでも
新作のブレンドが出たから今度試してくださいよ!」
「そうなの?楽しみ!」
「ご来店お待ちしてますね!美月さん」
そう言うとニコっと笑って
イートインスペースに戻っていった
涼くん…
突然の名前呼びとか…
ちょっとドキッとするし…
爽やかイケメンだし…
絶対行くし…
涼くんが席に戻ると
ましろくんが待ってましたとばかりに切り出した
「涼くんのバイト先のカフェってさ
今、求人してたよね?」
「ん?あぁ 確か二人くらい募集してたと思うよ
なに?バイトしたいの?」
「うん!そこのカフェでバイトしたいなって思ってて…」
「へぇ じゃあ店長に紹介しようか?」
「え!いいの?」
「でもうちのカフェそんなに時給高くないよ?僕はコーヒーの知識とか知りたくてバイトしてるから時給とか関係ないけどさ」
「僕も時給はどうでもいいの…そこのカフェってことに意義があるから…」
「ふーん?じゃあこのあとバイト行くから一緒に行く?」
ましろくんが大きくうんうんと頷く
「ありがとう!涼くん」
「なに?ましろ、涼のとこでバイトすんの?」
ちょっと不機嫌そうに拓真くんが言う
「うん!地元にいるときから
あのカフェのことSNSで知ってて、こっちに出てきたらあそこでバイトしたいなぁって思ってたんだ」
「え?何で?別にどこにでもありそうな普通のカフェじゃね?」
洸くんが不思議そうにきく
「え?まぁそうなんだけど…僕がフォローしてる人がよくあのカフェに来てるみたいで時々写真とかアップしてるんだ…」
と…ゴニョゴニョと言いながら顔を赤くしてうつむく
「なに?その人に会えるかも〜?とか思っちゃってるわけ?不純な動機だな」
ますます眉間にシワをよせた拓真くんが
ちょっと意地悪そうに言う
「ん!まぁ人手足りてないし、ちゃんと仕事してくれれば動機なんてどうでもいいよ!ガンバロウなましろ!」
「そうだな!まだ採用されたわけじゃないけどな!
頑張れましろ!」
涼くんと洸くんが場の空気を戻すように明るく言うが
拓真くんは不機嫌なままだ
ましろくんは覗き込むように拓真くんの様子を伺っている
その様子に気がついた拓真くんがハッとして
「ごめん!ちょっと変な言い方しちゃったな!しっかり働けよましろ!」
「う、うん」
ちょっとだけ曇った空気を残したまま
今日の集まりはお開きになった