ブルーベリーチーズケーキ
理久の機嫌が悪い
すこぶる悪い
理由は分かっている
涼くんがここのところ忙しいのか
『夜遅くなってしまうから』と
冴木家ではなく自宅の方へと帰ってしまうから
伊吹くんとましろくんを制御できず
我が家はカオス状態にしばしば陥る
普段は涼くんにさりげなく守られている理久は
二人の傍若無人ぶりを目の当たりにして
イライラMAXなのだ
「理久?今日天気も良いし暇なら一緒に買い物行かない?」
機嫌の悪い理久の気分転換にでもなればと誘ってみる
「……良いけど」
理久は少し考えた後そうこたえた
伊吹くんとましろくんはお昼ご飯を作ると言って
キッチンを占領して謎の創作料理を作っている
「アレが出来上がる前に出かけちゃおうね…」
そう言うと理久は無言で頷いた
拓真くんは現在遠征中だし
瑠加は今日は雑誌の撮影に行っている
家にいる玲央や洸くんには悪いけど…犠牲になってもらおう
理久と貴腐人は出かける支度をして
静かに家を出た
買い物をある程度終えブラブラしていると
「コレ…涼が好きそうな靴だな」
通り沿いのセレクトショプのウィンドウに飾ってある靴を見て理久がポツリと言った
「涼くんいなくて寂しいねぇ」
「別に………でも涼がいないとちょっと困るかな…イブとか煩いし」
「そうだねぇ…涼くんには本当にいろいろお世話になっちゃって…」
「うん…」
理久と2人で出かけるのは久しぶりだ
理久のミルクティー色の髪が太陽を反射してキラキラと輝いて見える
「お昼ご飯は蕎麦が食べたいな」
理久が珍しく食べたいものをリクエストした
「いいねぇ…蕎麦屋に行こうか!」
理久と貴腐人は美味しいと評判の蕎麦屋に行き
天ざる蕎麦を堪能した
蕎麦屋から出てしばらく歩くと
理久が立ち止まって一点を見つめている…
「理久?どうしたの?」
理久が見つめる方を見るとそこには
チーズケーキが美味しいと評判の喫茶店があった
「あぁ あそこ、この前理久が食べたいって言ってたチーズケーキのお店?寄ってみる?」
そう言って理久の顔を見ると
眉間にしわを寄せ、唇をキュッとキツく結び怒ったような、悲しいような?複雑な表情を見せた
「…行かない」
理久はクルリと踵を返して喫茶店とは逆方向に
スタスタと歩きはじめた
「待って!理久!」
理久を追いかけようとしたとき喫茶店の窓際が視界に入った
え?涼くん?
それは涼くんが知らない可愛らしい女の子と
楽しそうにお茶をしている姿だった
理久が食べたがっていたブルーベリーのレアチーズケーキを食べながら…
「理久!待って!待って!」
理久は無言で歩き続ける
駅前の噴水の所まで来るとで理久の足がピタッと止まった
「り、涼くんだって…いろんなしがらみとかコミュニティとか…いろんな付き合いもあるだろうし…ね?」
って言うか
涼くんは確かに理久信者だけど恋愛とは違うかもだし
そもそも理久と付き合ってるわけでも無いし…
理久にはとやかく言う権利は無いわけで…
「うん…わかってるよ…ちょっと驚いただけ」
「そ、そう?」
「帰ろう」
「う、うん…」
大丈夫かな?
気分転換に連れ出したのに…
どうしよう
もっと変な空気になってしまった…
微妙な空気のまま帰宅すると
伊吹くんとましろくんによって酷い目にあったと思われる玲央と洸くんがリビングに転がっていた
そしてキッチンは異空間になっていた…
「…片付けないと…」
貴腐人は大きなため息をつき
キッチンを片付けはじめた
理久は無言で隣に立ちシンクの中に溢れた汚れ物をガシガシと洗いはじめた
わかる…
こういう時って鍋を磨いたり
掃除したりが無心になれて良いんだよね
はて…伊吹くんとましろくんの姿が見えない
いったい何処へ?
ガッシャーン
キャッキャッ
ギャー
ん?庭の方が騒がしい…
見に行ってみると
庭で水鉄砲でウォーターファイトをしている2人…
干して出かけた洗濯物はずぶ濡れで一部は
下に落ちている…
アァァ…
片付けるものが増えました…
肩を落としていると
貴腐人の背後から殺気が…
「イブ?ましろ?」
理久が氷点下の眼差しを向ける
「come here!」
「ヒッ!」
理久のただならぬ様子に固まる2人
「早く!」
「ひぇ!」
「こっちに来いって言ってるだろ?」
びちゃびちゃのグチョグチョになった伊吹くんとましろくんは顔を見合わせて渋々理久の前に行き説教をうける
「庭の片付けと洗濯のやりなおしはお前らがやれ!」
「はい…」
「ふざけてないでちゃとやれよ?わかった?」
理久がトドメの一撃のような視線を送る
それはさながら
アイスジャベリンか?フローズンアローか?
とにかく凍てつくような瞳だった
伊吹くんとましろくんは
ヤバい空気を察知したのか珍しく
理久に言われた通りに神妙に作業に取り組んだのでした
ずぶ濡れの2人の作業が終わったらすぐにお風呂に入れるようにしておこうか…
そう思って風呂場へ行くと理久がすでに風呂を洗っていた
理久…
うーん
どうしたもんかなぁ…
まぁ…考えたところで仕方ないのだけれど
涼くんの件は事の成り行きを見守るしかないよね
「よし!」
貴腐人は気を取り直して
リビングに転がる2名の救護に向かったのでした




