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第2話〜追放された主人公って最初はこっぴどくやられるのがお約束でしたっけ?〜


ゴブリン


ファンタジーなどに登場する伝説上の生物である。

そこまで強い種族ではないものの、性格が邪悪で狡賢い一面があり、加えて繁殖能力が極めて高いため、どんな場所にも出没するという特徴がある。


また、他の生物を殺すことを遊びの一種と捉えているらしく、人や動物を罠にかけては残忍な方法で殺してしまう。


そのため、村人や駆け出しの冒険者にとっては大きな脅威となる存在だ。


つまり、もし俺の目の前にいる存在がそのゴブリンだとするならば…


それは俺にとって死刑宣告に等しい状況ということである。


【グゲェェェ】


ゴブリンは俺を見つけるや否やにんまりと微笑むと、

手に持った棍棒を地面に擦らせながら、3匹で俺を取り囲む。

どうやら俺を逃がすつもりはないようだ。


「勘弁してくれよ…ゴブリンなんかに殺されちまうのか?」


嫌味な笑みを浮かべながらジリジリと距離を詰めてくる3匹のゴブリン。


やがて、そのうちの一匹が俺に飛びかかってくる。


ゴブリンは見かけ以上に力が強いらしい。

組み付かれたらそのまま一気に殺られる…。


俺は神経を研ぎ澄ませ、飛びかかるゴブリンを躱すと、そのままゴブリンの顔を殴りつける。


たかだが高校生の攻撃など、怪物であるゴブリンにとっては威嚇にすらならないだろう。

だがこのままむざむざ殺られるのだけは避けたい。

そんな一心からの一撃だった。


意外なことに、俺の攻撃はゴブリンに直撃し、そのままその体をふっ飛ばした。


【グェェッッ】


殴られたゴブリンは、顔を抑えてその場にうずくまる。

思った以上に、俺の一撃は奴にダメージを与えることができたらしい。


その様子を見て、待機していた2匹がたじろぐ。


(化け物相手だと諦めかけてたけど、意外と戦えるのか…?なら…)


「うぉぉぉぉっっっっ!!!!!」


威嚇の意味で俺は腹に力を込めて全力で叫ぶ。

すると期待通り、2匹のゴブリンが少し怯えたような表情を見せた。


だが、丸腰の人間などに負けるはずがないとでも思ったのだろうか。

1匹が俺に飛びかかってくる。


だが、最初の一匹以上にその動きは単調だった。

恐らく俺の思わぬ反撃に、奴も冷静さを失っているのだろう。


俺はゴブリンに接近し、棍棒を掴むとそのまま奴のボディに一撃を浴びせた。


【ガギャァァッ!?】


腹への一撃を受けたゴブリンはうめき声を上げると、口から血の混じった唾液を吐き出す。

なるほど、弱点は人間と同じようだ。


俺は冷静にゴブリンの生態を分析しているつもりだった。


だが、思い通りに攻撃が通ったことで、俺の心に一瞬の油断が生まれてしまったのだろう。


一瞬目の端で捉えていたはずの残った一匹を見失ってしまい、次の瞬間には目の前に俺の顔面に向けて棍棒が迫っていた。


「ぐあっっ!?」


ゴブリンの棍棒はもろに俺の顔面に直撃した。

脳が揺れるとはこのような状況を言うのだろうか。


俺はあまりの衝撃に一瞬意識を失いかける。

だが…死にたくない一心で俺は意識を留め、ゴブリンを睨みつける。


【グヘヘッ】


俺に一撃を与えたことがよほど嬉しかったのか、ゴブリンは歯を見せてニタニタと笑っていた。


だが俺の意識が残っていることを確認すると、もう一度俺を殴りつけようと棍棒を振りかぶって迫ってくる。


(これをもらったら終わりだな)


死が迫っているというのに、俺は悠長にそんな事を考えていた。

もしかすると、頭から出血したことで登っていた血が少し抜けたためかもしれない。


不思議なほどクリアな思考で、俺はゴブリンを見据える。


ゴブリンが飛び上がり、俺の顔面めがけてもう一度棍棒を振りかざす。

やはり見かけによらずとんでもない力を持っているらしい。


棍棒は凄まじいスピードで俺に迫ってくる。

だが…


俺にとっては遅すぎる。


少しだけ体をそらしその一撃を躱す。


全力の一撃を躱されるとは思っていなかったのだろう。

ゴブリンはそのまま体制を崩す。


その隙を見逃さず、俺は体制を崩したゴブリンの背後に回ると、そのまま首をめがけて蹴りを入れた。


ゴキリ。

そんな鈍い音が聞こえた後、ゴブリンはその場に倒れ込み、そのまま動きを止めた。


残った2匹もまだ回復出来ていないらしく、その場でうずくまったままである。


今なら楽に逃げ出すことが出来るだろう。


しかし、その選択肢は俺の中にはなかった。


「俺を殺そうとしやがったんだ、お前らも当然…俺に殺されても文句ないってことだよなぁ?」


一匹のうずくまるゴブリンに馬乗りなると、そのまま奴の顔を何度も何度も殴りつける。


吹き出る血しぶきと共に、最初は汚い声で呻いていたが、やがて声は聞こえなくなり、ピクリとも動かなくなった。


「さて、これで2匹目か…」


俺がそう呟き、残った最後の1匹の方に目をやると、奴は俺が仲間を殴り殺す様子を見ていたらしく、目に大粒の涙を貯めていた。


【グッグゥゥゥ】


弱々しい声をあげながら必死に俺にジェスチャーをしている様子のゴブリン。


さしずめ命乞いでもしているのだろう。


「命乞いか…」


【グゥゥゥ】


俺はゆっくりとゴブリンに近寄ると、その体を起こし耳元で囁いてやる。


「お前らも散々命乞いする人間や動物を殺してきたんだろ?だったら同じ目に合わなきゃなぁ?」


言葉が通じるはずはない、だが俺の笑みと口調で助ける気がない事を察したのだろう。

ゴブリンは弱々しく呻きながら抵抗をやめた。


「せめてもの慈悲だ、苦しまないように一撃でやってやるよ」


俺はゴブリンが落とした棍棒を拾い上げ、それを顔面にめがけて振り下ろす。

グチャリ、と音を立てた後、最後のゴブリンも動かなくなる。


こうして俺は最初の脅威を排除することに成功したのだった。




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