メイドの私はどうやら王子に叶わぬ恋をしてしまったようです。
私はフリーズン王国のメイド。
ラウル王子が御誕生された時から、私はこの家に仕えています。
常に王子の御側にいるせいか、王子は私のことを姉のように慕って下さり。
私も畏れ多く思いながらも、王子のことを可愛らしい弟として思っていました。
けど、ラウル王子が16になる前に、隣国の姫君との婚約が決まり。
私は心からラウル様の婚約を祝福しようとした─…けど。
〝おめでとうございます〞
と心の中で思った瞬間、胸がモヤモヤとしました。
最初はそれが何なのかよく分かりませんでしたが、王子の結婚の日が近づくにつれて…気づきました。
私は姉としてではなく、いつしか王子のことを「男性」として好意を持っていたのだと。
たかがメイドのくせに…王子に恋をするなんて。
それに、年の離れた…王子からすればおばさん同然の女のくせに。
身分がまったく違うのは分かっています。
分かっています─が。
この胸の高鳴りが。
この胸の湿り気が。
この胸の、王子への想いが…止まりません。
…申し訳ございません、ラウル王子様。
貴方様へのこの想いが枯れるまでは…
貴方様のことを…静かに恋慕わせてください。