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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編シリーズ

帰ったら大型犬ならぬペット希望の英雄様がいた件

作者: 白雲八鈴

 治療院で毎日クタクタになるまで働いて、帰って寝て、また働いてを繰り返すこと3年、そろそろ疲れた私にも癒しが欲しいと思っていたのです。

 ここ半年ほどは心に余裕ができましたので、飼えると思ったのです。


 同じ治療院で働く同僚に鳴かないペットが欲しいなぁとポロリとこぼしたところ。


「それってペットに満足して結婚しないパターンだからやめた方がいいよ。それより彼氏でも作れば?」


 彼氏か……私はある事情から男性が苦手……らしい。らしいとは、ある時期以前の記憶がごっそり抜け落ちているので、私は覚えてはいないけれど、身体の拒絶反応が出てしまうのです。


「彼氏は必要ないわ。できればもふもふのペットが欲しいわね」


「あー、それ口に出さないほうが良かったかもよ」


 同僚の彼女は私を可哀想な子を見るような視線を向けてきました。なぜ、ペットが欲しいと口に出しては駄目なのでしょう。確かに私が住んでいる集合住宅はペット禁止ですので、本当にペットを買うつもりはありません。

 ただ、誰もいない家に帰るより、ペットが出迎えてくれれば、その日の疲れなんて飛んでしまうでしょうと、日々の仕事に疲れていた私に妄想するぐらいいいのではないのでしょうか?




 と、その日は思っていました。いいえ、業務終業後に集合住宅の二階の自分の玄関扉を開けるまでです。


 扉を開け、部屋の中に入ろうと一歩踏み入れようと上げた足をそのまま下ろし、そっと扉を閉め、周りを確認します。二階の一番端の部屋であり、先程この手に持っているカギで扉の鍵を解錠したのですから、私の部屋で間違いはありません。


 もしかしたら、疲れすぎて目が幻覚を見たのかもしれません。相当疲れているようです。

 私はもう一度扉を開けます。

 目をこすります。


 ……居ますね。


「ご主人、よく帰ってきた」


 しゃべりました! しゃべりましたよー!これは憲兵に通報を……おちつきましょう。これは通報しても駄目なパターンかもしれません。


「あの?なぜ私の家に先の戦争で英雄の称号を得られた、バレンティーア卿がいらしゃるのでしょうか?」


 そう私の部屋の中には、半年前に終結した隣国との戦いで一番の功績者と言っていい。ルファース・バレンティーア様がいらっしゃいます。ええ、有名な方ですから人が噂をしていることぐらいの情報はもっています。

 ラディスメール辺境伯爵の三男であり、現第一師団長であり、英雄の称号が与えられ、バレンティーア伯爵の爵位も与えられ、今や時の人と言えば誰しもバレンティーア卿の名を上げるほど有名な方です。


 そのバレンティーア卿が(あるじ)に媚びを売る飼い犬のように、両手を床に付いてしゃがみ込み、フサフサの銀色の尻尾が背後からチラチラと揺れているのが見えます。

 そう尻尾。ラディスメール家は銀狼の一族でありますので、勿論バレンティーア卿の種族も銀狼であり、後ろで結われた銀色の髪の頭部には三角の耳がぴょこりと見えています。

 人の姿を抜きにすれば、正に主の帰りを待ちわびていた飼い犬の姿ですが、如何せん美丈夫と噂されているバレンティーア卿がこのような姿をしていますと、何故か全く悪くない私の方が罪悪感を覚えそうです。


「なぜ? 貴女はペットが欲しいと言っていただろう?」


 言いました。言いましたよ。今日のお昼に昼食を治療院の職員専用の食堂で取っているときに、私とペアを組んでいる同僚の彼女との話の中でそのような話をしましたが、何故バレンティーア卿がこの様な事をなさっているのか全く私には理解できません。


「バレンティーア卿。貴方様はペットではないですよね?」

「いや、俺は貴女のペットだ。聖女マーガレット」


 聖女マーガレット。これは私を指す呼び名の一つですが、私は聖女ではありません。誰かが勝手に言い始めたことで、正確には治療師マーガレットです。


「貴女はペットが欲しいと言ったのであれば、俺が貴女を癒やすペットになろう」


 あー。頭が痛くなってきましたわ。なぜ、そのような思考になってしまったのか……はっ! これはまさか戦争後遺症の一つではないのでしょうか。


 戦争に行かれた方の中では心に傷を負って、人として生きることを諦めた方々もいらっしゃいました。これは私では手におえません。

 私は表面上の傷の治療や病の緩和することには長けていますが、精神の病は別の者の管轄なのです。

 しかし、私の一存で勝手に治療院に連れて行くのも問題があります。一度、第一師団の方に連れて行って、内部的に判断してもらった方がいいでしょう。

 まさか、一国の英雄が精神を病んているなんて、国民に知られるわけにはいきません。


 しかし、どうやって連れていけば……


『マーガレット、何かあったときにはコレを使えばいいよ』


 同僚の彼女が私の事を心配して持たせてくれたあるものが、ふと頭に浮かんできました。


「バレンティーア卿」

「ルファースだ」

「……ルファース様」

「ペットに敬称はいらない」


 くっ! 私は明かりがともっていない真っ暗な天井を見上げます。ペットに敬称はいらないと言われればいりませんが、一国の英雄を呼び捨てなど……いいえ、これも患者の治療のためと思えばできるはず。

 私は仕事モードで応対します。治療するにあたっては、どんな理不尽なことも厭わないと。


「ルファース。私のペットというのなら、散歩にいかないといけないわね」

「散歩か。大いに結構」


 ペットと自称するには態度が大きく、しゃべる目の前のバレンティーア卿に少し困ったような笑みを浮かべます。


「でも、突然ペット用の首輪は用意できないの。だから、治療で使う拘束具でもいいかしら?」


 私はいつも持ち歩いているカバンの中からジャラリと音がする鎖付きの拘束具を取り出しました。


 治療用で使うと言っても、これは軽犯罪者を取り押さえるものと同じもので、相手の魔力を抑制しながら、抵抗するたびに徐々に絞まっていくという拘束具なのです。

 そして、四肢でも首でもつけることが出来るものです。


「ふむ。ペットが散歩するには首輪と鎖が必要だな」


 納得してくれたようですので、黒い金属の割れ目を押し開き、身を屈めバレンティーア卿の首に装着します。

 ああ、なんだか凄く罪悪感に捕らわれてしまいますが、これも治療の一環です。と、自分に言い聞かせている視線の先では勢いよく振られている尻尾が目に入りました。

 う……嬉しいのでしょうか?


 私の魔力を黒い金属に通しますと首にフィットするように縮まり、切れ目も分からなくなりました。

 因みにこれを外すことが出来るのは、魔力を通した者以外に憲兵長、統括師団長、魔導師長、治療院院長がおります。


「では散歩に行きましょうか」


 私はそう言って立ち上がると、バレンティーア卿も『うむ』と言って立ち上がりました。立ち上がると私はバレンティーア卿の胸の辺りまでの身長しかなく、これは飼い主が大型犬に振り回される未来が垣間見えてしまいました。

 しかし英雄であるバレンティーア卿が私の部屋にそのまま居座る選択肢はありませんので、第一師団に引き取ってもらいましょう。


 私は帰ってきた道を戻るため、再び玄関の扉を閉め、鍵を掛け一歩を踏み出したのです。







「あの? これ楽しいのですか?」


 思わずバレンティーア卿に尋ねてしまいました。今の私の状態と言えば、私の斜め前にバレンティーア卿が歩き、私とバレンティーア卿の間にはジャラジャラと音をさせている鎖が繋がれています。

 それをすれ違う人々が遠巻きにして見ているのです。


 私が働く治療院と住んでいる集合住宅は国の所有地である国の中枢にあるため、すれ違う人々は国に仕える方々ですので一般国民ではありません。明日には色々噂は立つでしょうが、後で治療の一環だっと言えばいいしょう。


 しかし、大いに振られている尻尾が鎖を持つ私の手に微妙に当たってくるのですが、喜ばれているのですか? この一種の特殊プレイと言い換えてもおかしくない状況ですのに?


「うむ。このような散歩は初めてだが、貴女との散歩は楽しい」


 私もこのような散歩は初めてですよ。恐らく失った記憶の中もこのようなことは無かったでしょう。


「そうですか。そのまま真っ直ぐ進んで、右手の門をくぐってください」


 この辺りは軍の施設が建ち並び、ポツポツと一定の間隔で設置している魔道灯の明かりが銀の髪の人物を照らしています。

 英雄と称されているバレンティーア卿がまさかこのように病んでいるなんて……。


 いいえ、あの戦争の2年半は過酷に過酷を極めた戦いでした。私も後方で治療にあたっていましたが、私が救える命など、この両手で掴むことができた者たちだけでした。死んだ者は生き返ることはありません。ですから、私も命を掛けて治療にあたりました。


 ルファース・ラディスメールと名乗っていたこの方もまた、背中に酷い火傷を負い、右腕が潰れた状態で運ばれてきました。


 私の役目は治療し、再び戦場に送り出すのが仕事でした。送り出せば、生きて戻って来ない方も幾人もおりましたが、誰も彼もがこの戦いが早く終ることを願っておりました。


 ルファース・ラディスメールはあの戦争が初陣だったそうです。そして、部隊の全滅。ラディスメール辺境伯爵のご子息ということで、彼だけを部下の方が命がけで、後方に運んでこられ、命を落とされたのです。


 私は右手を一週間掛けて治しましたが、敢えて彼の背中の火傷は全てキレイには治しませんでした。戦場に出る期間を引き伸ばすためです。

 初陣で全滅し、ご自身も酷い怪我を負ったとなれば、心も傷ついているでしょうから、その傷が癒える期間を確保したはずでしたのに、私が別の戦場に行っている間に彼は戦場に戻っており、今までの戦いが何だったのかと言いたくなるほど、次々と敵の拠点を潰していき、敵国の大将の首を打ち取り、戦争を終わらせ、英雄と称されるようになったのです。


 やはり、彼の心は傷ついていたのでしょう。あの戦場の中で彼の心に占めていた想いはなんだったのでしょうか?

 復讐でしょうか? 憎悪でしょうか? それとも死を望んでいたのでしょうか?


「ご主人。ここは第一師団の本部になるのだが?」


 バレンティーア卿が私がどこに向かっているのか気がついたようです。

 困惑した表情を振り返り様に見せるバレンティーア卿に私はニコリと笑みを浮かべて答えます。


「ええ、ここで問題ありませんよ。ルファース」

「うむ」


 第一師団の本部に近づくと、第一師団の方が丁度玄関扉から出てきました。治療院にいると、兵士の方とは必然的に顔見知りになりますし、戦場でお声をかけてくれる方もいました。

 その一人が驚いた顔でバレンティーア卿と私を見ている第一師団の副師団長であるアルティオス・エドワルド様です。

 その第一副師団長さんに私が持っている鎖の持ち手を差し出します。しかし、受け取ってくれませんので、右手を掴んで手首に輪になった鎖を引っ掛け、私はバレンティーア卿を振り返ります。


「ルファース。ごめんなさい。あの集合住宅はペット不可の物件なの。新しいご主人様の元で幸せになってくださいね」


 首を傾げて、申し訳なさそうな表情を作って謝ります。ペットは飼えないというと、後ろから吹き出す声が聞こえてきました。


「団長。そっちに舵をとっちゃったんですか?」


 振り返ると鎖の端を持ったままフルフルと肩を揺らしながら、笑うのを必死に堪えている第一副師団長さんがいました。


「むっ。それはお前らが駄目だと言ったからだ」

「い……言いました……けど…ぐふっ。これは……ぶっははははっ」


 第一副師団長さんはお腹が痛いと言いながら、身をかかめて笑っています。どうされたのでしょうか?


「ご主人。ペット不可なら、ペットが飼えるところに引っ越せばいい」

「それは家賃が高くなるから困りますわ」


 治療院の給金では今よりいい物件も住めるのですが、私は戦争孤児たちの為に寄付をしていますので、今のところが丁度いいのです。それに治療院から近いですしね。


「では、俺が払う」

「ペットに養われる飼い主ってどうなのかしら?」

「うっ」


 そこまでして、私のペット設定を貫きたいのかしら?これは心を鬼にして印籠を渡したほうがいいのかしら?


「俺はご主人に捨てられるのか?」

「拾ってないですからね」


 私より大きな男性が肩を丸めてしおれていきますが、そもそも押しかけペットですからね。ここでトドメの一言を言えばいいでしょう。


「それに私、犬派ではなく、猫派なのです」


 すると、バレンティーア卿は胸の辺りを押さえ地面に崩れ落ちていきました。


「団長!傷はまだ浅いですよ!」


 第一副師団長さんが駆け寄っていきますが、あとはこの方に任せておけばよろしいでしょう。


「……」


 バレンティーア卿から何か聞こえましたが、声が小さく聞き取れません。


「……ャー」


 ん?


「にゃー」


 こ、これは猫アピールをしてるのでしょうか?


「にゃー」


 ぐっ! 捨て猫のような目で私を見ないでください。私が悪者になってしまったかのように思ってしまうではないですか!


「にゃー」


 ここまで、銀狼のプライドを捨ててなさることですか! 私が引き起こしてしまった状態とはいえ、不憫すぎて思わず口を押さえ地面に座り込んでしまいました。バレンティーア卿の病はかなり重症なようです。


 しかし、上目遣いで必死に猫の真似をしているバレンティーア卿をかわいいと思ってしまったことは、内緒です。











「この度の報奨として、バレンティーア伯爵の爵位を与えこととする。バレンティーア伯爵、そなたの望みがあれば、申してみよ」


 赤い絨毯の上で跪いている者を上段から見下ろしている王が尋ねた。報奨としての望みがあるのかと。


「ではマーガレット・グランバール伯爵令嬢を妻に望みます」


 報奨を尋ねられた銀髪の男が金色の瞳に熱を孕んで言葉にした。


「ふむ。その事は息子である第二王子から聞いておるが、難しいと申しておこう。他にはどうだね?」

「ありません」


 異例のことに玉座の間がざわめきに満たされる。国王とあろうものが、ただの伯爵令嬢一人に対し、王として英雄の伴侶として命じなかったのだ。


 そして、この度の戦勝での功績をたたえた報奨授与式は幕を閉じ、夜には戦勝パーティーが催される予定となっていた。


 ルファースはため息を吐きながら、靴が沈み込むほどの赤い絨毯が敷かれた長い廊下を歩いている。

 前もって戦友である第二王子からは言われていたのだ。その報奨は難しいかもしれないと。だが、ルファースは報奨を口にしたのだ。


 『マーガレット・グランバール伯爵令嬢を妻に』と


「よう、やっぱり駄目だったな」

「カルディオン……殿下」


 ルファースの前方から金髪碧眼の青年が近寄ってくる。青年はにこにこと人の良さそうな笑みを浮かべ、美人と言っていい容姿だ。たまたま用があって廊下を通っていた、侍女が頭を下げながら顔を赤く染めていたほどだ。


「殿下だなんて、硬っ苦しいな。私とルファースの仲じゃないか」


 彼らは戦友であり、互いの背を守ってきたのだ。しかし、そこに上下関係がないわけではない。だが、彼らはその枠組を超えて友となったのだろう。


「グランバール伯爵令嬢は難しいと言っただろう?まぁ、元婚約者の好みぐらいは教えてやってもいい。記憶を失う前の話だけどな」


 人の良さそうな笑顔を浮かべていたはずのカルディオン王子はニヤリとした笑みを浮かべていた。


「ぶっ殺すぞ」


 唸り声を上げながら、殺人宣言をするルファースに対して、カルディオン王子はその言葉と殺気を受け流し、ニヤニヤと笑っている。


「獣人の番って大変だよな。俺は人族で良かったと思っているよ」


 (つがい)。獣人特有の伴侶を選ぶ制度といえばいいのだろうか。番となる者の匂いで己の伴侶であるとわかるのだが、人族には全くわからないことが、この制度を難しくさせているのだ。

 自制心が効かない者だと、相手に伴侶がいようが、恋人がいようがお構いなしに攫っていくので、人族と獣人の番という認識には溝があると言っていい。


「しかし、グランバール伯爵令嬢のおかげで、戦いが早期に終結したから、元婚約者には感謝だね」

「いい加減に元婚約者と言うのはやめてもらえないか?」

「本当のことだしね。でも、彼女の身柄は教会預かりだから、手続きが大変だよ。なんせ10歳の時にブラックドラゴンが王都に襲来したときに、天の奇跡でドラゴンを退けたんだからね。あの時は本当に天使かと思ったね。もう、キラキラと輝……本気で拳を振るってこないでほしいな」


 目的地があるのか、ないのか分からないが、二人は足早に長い廊下をじゃれ合いなら通り抜けていく。


「まぁ、そのおかげで誘拐されて、半年ほど行方不明だったんだけどね」

「その時に俺が側にいれば、直に助け出したというのに、何故俺は辺境の地にいたんだ」

「君が辺境伯の三男だからね」

「ぐっ」

「誘拐したクズは殺してくれと言われてもギリギリまで生かしてやったから、後悔しながら死んだだろうね」


 そのまま二人は屋外に出て物騒な事を口にしながらも歩みは止めない。


「けれど、救出したマーガレットは何もかも忘れていた。私のことも」

「俺が呼んだことが無いのにマーガレットと呼ぶな」

「はいはい。けれど、彼女は記憶を失っても聖女だった。人々の為に自分の力を使うことを厭わなかった。無意識で男性に恐怖心を感じているのにね」


 そして、二人は一つの建物にたどり着いた。何かと人の出入りが途絶えない建物だ。その裏口から二人は入って行く。


「戦場でもそれは変わらなかった」

「そこで俺は(つがい)に出会った」

「うんうん。彼女はワザと君の怪我を最後まで治療しなかったのに、その身体を押して、番が他の奴に笑いかけているのが気に入らないという理由だけで、戦争を終わらせたんだからね。本当にマーガレット様々だね」

「名を呼ぶなと言っている!」


 開け放たれた扉の奥を見つめる二人。そこにはいくつものベッドが並び、慌ただしく走り回る白い服を着た者たちの中に一際目を引く人物がいる。


 ふわふわとした白金の髪を白いキャップに収め、真っ白な手を横たわる人にかざし、全身に金色の光を帯びた18歳ぐらいの女性だ。

 彼女が彼らが言っている聖女なのだろう。彼女を覆う金色の光はとても優しい色をしていた。


「まずは、教会を抑えないとね。まぁそこは英雄様と聖女様の婚姻は教会として利があることをアピールすればいいだろうね。あとはグランバール伯爵令嬢の無意識下の拒絶だね。強引に行けば必ず嫌われるから、よく考えることだね。因みに彼女は動物が好きだ」









「と私は忠告したのだけど、まさか彼女のペット志望だったとは」


 金髪碧眼の青年は呆れるような顔をして目の前の銀狼の青年に視線を向けている。


「昼にペットが欲しいと言っていたから、ペットであれば近づけると思ったのだ。散歩はできたぞ」


 ルファースは満足そうな顔をしていた。その後ろではフルフルと震えている副師団長が立っている。


「団長の必死さにもう涙が耐えませんでした」


 とは口にしているものの、発言した第一副師団長の口が歪んでおり、笑いをこらえているようにしか見えない。


「で、それはいつ外すのかな?」


 カルディオン王子は自分の首を指して、ルファースに尋ねた。ルファースの首には黒い金属の輪が嵌っているが、おしゃれというよりも、無骨な感じで違和感がある首輪だった。


「聖女マーガレットの魔力がこもった物をはずす必要がどこにある?」

「うわぁ。もう重症だね。このままペットでもいいんじゃない?」

「うむ。しかし、猫派だったとは……種族までは流石に変えることはできない」


 項垂れるように落ち込むルファースにカルディオン王子は首を傾げる。


「あれ?昔マーガレットは番犬とじゃれ合っていたから、犬嫌いではないと思うよ」


 その言葉にルファースの金色の瞳に熱が帯びた。


「よし。番犬でいこう。それならペット不可のところでも大丈夫なはずだ。ペットではないからな」


 ルファースはスッと立ち上がって、扉の方に向かっていく。


「そういう問題ではないと思うけど、まぁ頑張ってとしか私には言えないなぁ」


 戦友の、番という強敵に立ち向かう背中にカルディオン王子は呆れた視線を向ける。ルファースの銀色の尻尾は勢いよく振られており、本人がそれでいいのであれば、まぁいいかという表情だ。


「普通に恋人になって欲しいと言えばマーガレットは基本的に断らないからいけると思うのだけどなぁ」


 閉まってしまった扉に向かってカルディオン王子は言葉を放つが返ってきたのは、別の者の言葉だった。


「自分としても、その方がありがたいです。ほとんどストーカー状態で、グランバール伯爵令嬢に近づく者をことごとく威圧していっていますからね」


 部下である彼も苦労しているようだ。そして、2つのため息が室内に満たされたのだった。



 英雄の番は聖女である。それは公然の秘密であり、知らぬのは聖女本人だけであった。



 数ある小説の中から読んでいただきましてありがとうございます。


 久しぶり??に番というものをテーマに書きました。(ある意味書き続けていますが)溺愛物というより、獲物をどうやって手に入れようかと狙う話になってしまいました(。ŏ﹏ŏ)。

 英雄の罪状はストーカーに不法侵入にペットプレイによる精神的苦痛でしょうか?

 つがいと言えば仕方がないと笑って許せる女性はきっと聖女なのでしょう。



 もしよろしければ、この下にある☆☆☆☆☆を反転し評価しただければ、嬉しく思います(*´艸`*)


 ご意見ご感想等があれば下の感想欄から入力いただければありがたいです。


読んでいただきまして、ありがとうございました。



追記

“いいね”で応援ありがとうございます。

ブックマークをしていただき、ありがとうございます。

☆評価してくださいまして、ありがとうございます!

とても嬉しく思います(。>﹏<。)



次回

『自称番犬の英雄様が治療院に来られるのですが、担当治療師は私ではないですわ』です。

(冗談です。長編の続き遅れないように書きますよ!)





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― 新着の感想 ―
[良い点] 英雄様がペット希望。なんて素敵なお話なんでしょう。可愛らしいですね。堪能しました。英雄様頑張って。
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