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以下の物語と連動しております。


宿禰凛一編「only one」

http://ncode.syosetu.com/n8107h/


宿禰慧一編「GLORIA」

http://ncode.syosetu.com/n8100h/


藤宮紫乃編「早春散歩」

http://ncode.syosetu.com/n2768i

注意…全くたいしたことのない18禁。


3、

 新学期早々の校内模試の結果が張り出された。

 学年の順位は各自全員がプリントを貰うことになっているが、学校側としては掲示板に張り出し、意識的に生徒達を競わせようとする思惑もあるのだろう。

 その上、一位から10位までは大文字で表してあるから、見ようとしなくたって目に入る。

 リンと引きこもって勉強したおかげかどうかは知らなかったが、おれの点数は二位をかなり引き離してのトップだった。

 おれはさして順位に興味はないのだが、何とはなしにその順位表を見ると、宿禰の名前が9位にある。

 あいつは良くて30位前後って言っていたから、これは大躍進だ。

 なんだか自分の事より嬉しくなってしまった。


 放課後、温室でそのことを言うと、

「いや、俺の実力と言うよりミナの教え方が良かったんだよ。ミナは先生向きかも知れないぞ。でも、今は俺専用でいてくれよ。他の奴がミナと顔を突き合わせて教えてもらってるって思うと俺も気が気じゃない。ミナは時々エロっぽい顔をする」

「エロっぽいて…してないよ、そんなの」

「自分じゃわからないだけだろ。眼鏡はしてろよ。おまえは目に色気があるからな」

「そんなこと言うのはリンだけだよ。それに色っぽいのはリンの方だ」

「まあね、俺はエロいことしか考えてねえから」


 トラウザースのポケットから煙草を取り出し一本に火を付ける。ピアニッシモのメンソールの煙があたりに漂ってくる。いる?と顔で聞くから、リンの吸った煙草を貰う。

 リンの身体に軽く凭れながら紫煙の行方を追うのが楽しい。

 リンももう一本煙草に火をつけると、おれの肩を抱いて煙を吐く。

 ふたつの紫煙が絡まっていく様に見惚れていると、リンが口を開く。


「それより…おまえのクラスに高橋とかいう奴いたよな。今回も二位だったろ?いつもおまえのすぐ後ろにいるから付いたあだ名が『水川の金魚のふん』」

「そ、そうなの?…それはあんまりだろう」

 同じクラスの高橋は何故かおれに敵対心剥き出しで、事あるごとに突っかかってくるから、おれも出来るだけ近づくのを避けているのだが、そんなあだ名をつけられるのはこっちが迷惑だ。

「あいつが何かとおれに言いがかりをつけてくるのは、そういう風に言われているからなのか?おれは試験の順位なんて気にしてないけど…」

「今回俺が9番にいたからかね。そのとばっちりがきた」

「…え?」

「ついさっき、その高橋とすれ違い様に俺の方をめっちゃ睨んで『水川と楽しくやっていられるのも今のうちだからな。おまえなんか、顔だけの男だ』…と、言ってくれた」

「は?」

「あれは逆に俺の顔がいいと褒めてくれているんだろうか。…面白い男だな。残念だが、こっちは全く趣味じゃないけどな」

「…」

「同じ眼鏡でも俺のミナとは雲泥の差だな」と、俺の髪を軽く撫で、額にキスをする。

 恥ずかしがりもせずにそういう殺し文句が許されるのも高橋流に言えば顔だけの男だからか?

 しかし一寸の躊躇いもなく「俺のミナ」というリンが、好きで堪らない。

 絶対に負ける。

 おまけに…

「ね…ミナ」

 リンの指がおれの首筋を撫で、その後をリンの口唇が追う。

「少しだけ…ね」

 上着を着てなかったのが災いしてか、リンの手は早くもおれのシャツの中にある。しかも、もう一方の手はベルトにかかっていて…

「リ、リン…誰か来たら、やばいよ」

「大丈夫。来たら誤魔化すから」

「…」

 どうやって?と、反論する気も失せる。

 だっておれの方が我慢出来なくなる。


「かわいい、ミナ。大好きだよ。他のやつにこんなことさせるんじゃないよ」

「リン…」

 トラウザースと下着を脱がされ、リンにしがみ付き、抱えられたこの格好は絶対おかしい。

 なんか…変態にでもなった気分だ。


「あの高橋って奴だって、おまえとこういう事したいのかも知れないんだぜ、本当のところは」

「ま、さか…」

「本当さ。ミナは自分の魅力がわかってないんだよ」

 そんなのどうでもいい…中が疼いて仕方がないから…早く…


「リン…頼むから…」

 おれの腰を強く引くリンの首筋に思い切り歯を立てた。そうしなきゃ理性が保てない。

 最も理性なんかとっくに無くしている。

 

「い、いってーっ!!」

 温室にリンの悲鳴が響いた。おれは理性を総動員してリンの様子を伺った。

 リンは涙目で

「おまえ…は…吸血鬼かっ!」と、詰られた。

 リンの首筋を見ると…それはそれはくっきりと鮮やかに鬱血した状態でおれの歯型が浮かんでいる。


「リンが悪いんだよ。おれの理性を飛ばした張本人だもの」

 悪びれずに言うと、リンも負けずに

「じゃあ、お返しにこのままでもう一回。噛まれないように後ろ向きでね。今度はおまえの声を聞かせろよ」

 

 感情に任せてどうにでもなれというのは敗者の言い分だ。

 おれは最後まで理性を保ったまま、声も上げすに歯を食いしばった。

 何故なら…

 9位の奴には負けたくなかったからだ。





筆者のBLブログ「auqa green noon」はこちら。

http://arrowseternal.blog57.fc2.com/

イラストも多数ございま

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