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R18です。

 リンの黒まなこがおれを見ている。

 でかくて吸い込まれるようなその目で見入られると、心の奥まで見透かされているようだ。

「落ち着いたようだね。始めようか」と、言うので「リンはまだ服を脱いでいないじゃないか」と、責める。

「じゃあ、脱がして」と、言うから、起き上がってシャツとズボンを脱がす。

 ついでにお互いの下着も脱がせあった。

 互いの身体を眺め、何故か笑いあい、そして抱き合いながら、また毛布に潜り込んだ。


 エアコンは入れてないから、薄い毛布だけじゃまだ少し寒い。

「布団もいる?」と言うリンに「いや、リンのぬくもりがあればいい」と、言った。

「まあ、そのうち汗をかくから、毛布もいらなくなるよ」

 そんな一言にさえドギマギしてしまう自分が恥ずかしい。


 リンの手が俺の首筋を撫でる。もうひとつの手がおれのものを触ってくる。おれは息を呑んだ。

 触り方が優しいのにいやらしくて…おれも慌ててリンのを触った。

 頭の中ではどんな風にすれば気持ちがいいのかと試行錯誤しても、手は上手く動かない。

 それなのに、リンの指はおれのを上手く扱って、リンの口唇はおれの吐き息を吸うように重ねてくるから、おれは呼吸が荒くなる。


 苦しそうにすると、リンは手を緩め、おれの顔を覗く。

 大丈夫?と、目で聞くから、俺も軽く頷いた。

 リンは動きを再開し、開いた片方の指がおれの薄い胸や背中をゆっくりと撫でる。

 

「ここが僧帽筋、天使の羽の付け根だ。上腕三頭筋から順に…二頭筋と続く。脊椎、肩甲骨、そして肋骨。肋骨は何本か知ってる?」

 リンの落ち着いた声が、上がった心拍数を宥めてくれるようだ。

 おれの呼吸は次第に元に戻る。

「…24本」

「そう、両脇に12本ずつだ。昔3ヶ月ほど付き合った人がいて、そいつは呼吸器外科の医師だった。何の趣味か知らんが、肋骨一本一本に季節の花の名前を付けていた。上から…馬酔木、譲葉、ライラック、勿忘草…面白いだろう」

「…変わって、いるね」

「そう、そんな名前に何の意味がある。肋骨は肋骨だよ。骨でしかない。花の名をつけることがロマンチストとは俺は思えない。まあ、好き好きだがね。さて、ミナならこの意味をどう捉える?」


 言ってることとやってる事がどうにも結びつかなくて、頭が朦朧となってくる。リンは巧みにあやつって、俺を翻弄する。おれも頑張っているのに…適わないや…ああ…答えなきゃ…なんだっけ…そう…

「…結局は…セックスはセックスでしかない」

「正解。ミナは頭がいい。どんなに美辞麗句を並べようが、やることは決まっている。快感を求めあい、気持ちのいい汗を掻くことだ。さて、いかに気持ち良くなるかだが…」

「リン…もう、おれイキそうだよ…手ぇ離して」

「いいよ。そのままイッて」

「嫌だよ。リンの手が汚れるじゃないか」

「じゃあ、飲んでやろうか?」

「や、やめてくれ!」かなり上ずった声でおれは拒否した。

 リンは笑って「じゃあ、お好きなように」と、いい、強く擦りあげるもんだから、おれはあっさりとそのまま達してしまった。


 ハアハア言って、必死に酸素を取り込んでいると、リンが目の前でおれの精液の付いた指を舐める。

「リ、リン!やめてくれよ。き、汚いじゃないか」

「汚くない。おまえに無理強いはしないから、安心しろよ」

 そんなことじゃなくて…おまえがそんなことをするのが嫌なんだ。


「ミナは純粋なんだね」

「馬鹿にしてる?」

「いや、ただ、おまえとするのは…少し怖いかな」

「なんで?」

「俺が汚れすぎて、ミナを穢すのが…穢すっていうのとは違う。俺がおまえを染まらせるのが…正しいのか…この選択で間違っていないのか…すごく考える…ここに…」と、言いながらリンは塗れた指をおれの後ろに当て、ゆっくりと回す。

「…入れるわけだが、どうする?怖いのならやめる。今日じゃなくでも明日だって明後日だってできる。ミナはきつくない?」

 リンの思いやりが嬉しくないわけがないが、おれは決めているんだ。

「じらさないで、最後までやって欲しい。痛くてもいいから…おれだってリンが欲しくて堪らないんだから…」

 おれはリンの首に腕を巻きつけ、哀願する。

「ミナは男らしいね。俺の方がだらしないかな。じゃあ、できるだけ痛くないようにゆっくりやるよ。と、いっても俺もどれだけ理性が保てるかわからないけれど…」

 

 おれの耳元でリンが囁く。

「実は一年以上セックスはしていないだよ。えらく清き身体だから、ミナを気持ち良くしてあげれるか心配だ」

 ニヤリと笑いながら、おれの肩をベッドに押しつけ、覆いかぶさった。

 灯りの影になったリンの顔がひどく大人びて見える。




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