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白銀の孤狼  作者: 蜂蜜
序章 雪と氷と樹木と
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やることが多い

 全くの未知を前になんの足がかりもなく向き合うというのは、初めての経験であった。

 勉学においても仕事においてもマニュアルと言うべきものがあったり、そうでなくとも類似する現象や実験結果等からある程度予想することが出来た。


 だがこれは違う。魔法なんて映像でしか見たことがないし、それらも全て空想、実際に存在したものではない。


「──……」


 ボトボトと氷が落ちてくる。未だにこれしか出来ないのはかなりの問題だろう。かと言ってこれから先に進むのも中々に難しい。

 そもそも何を利用してこれを起こしているのかが分からないからここから発展しない。何かしらのエネルギーを利用しているのだろうし、多分体の中にあるんだろうけど、感じ取ることも出来ない。


「!」


 そんなことを考えていたら、唐突に氷が前方へと射出された。積み上がっているものではなく新しく作ったものだったから、そういうものとして生成されたということだろう。

 間違いなく進歩ではあるのだが、何故そうなったのかが分からない。


 もう一度生成すると、同じように前に飛んでいく。

 やっぱり分からない。無理に理解しにいくのが間違いなのか?雰囲気でやった方がいいのか?

 とにかく反復することが効果的であるというのは分かった。

 原因がなんであれ成長しているのはいい事だ、これからも続けよう。


 あとこれもしかして狩りに使えるのでは?

 殺傷能力があるかは分からないけど、誘導には使えそう。使えなくても問題はないが使えた方が気持ち的にはとても良い。

 新たに身につけた技能がなんの役にも立たないというのは、些か悲しいものがある。


 ……直ぐに狩りをするという発想に至るあたり、もう思考回路が人のものではなくなっているのだろう。それがいいことなのかそれとも悪いことなのかはわからないが、生きて行くにはそちらの方がいいのかもしれない。

 生き物を殺すことに抵抗を覚えていたら、何も出来なくなってしまう。その段階はとっくに越えているが、今はそれ以外にも越えるべきものがある。


「……」


 考えたくないことではある。

 が、考えなくてはならないことでもある。

 この森をでることも、検討しておかなければならない。

 考えることは多い。人であったならもう少し楽だったかもしれないが、あんな生き物にはもう二度となりたくない。

 この苦難は甘んじて受け入れよう。


 日が落ちてきた。そろそろ寝る準備をしないといけない。食事もそうだし、寝床もそうだし。

 ベッドと毛布より遥かに質のいい毛皮があるとはいえ、やはり寝床は欲しい。


 明日は、もっと魔法が上達することを願おう。

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