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白銀の孤狼  作者: 蜂蜜
始まり
1/6

とある命の終わり

 とある星の、とある島国にある、とあるマンションの一室。


 ボケっと天井を見つめる男が一人。

 シンプルな色彩のカーペットの上、手足をだらっと伸ばし、口もぽかんと開けたまま。

 彼は今、『如何に誰にも迷惑をかけないか』ただそれだけを考えている。


 かれこれ二日間この調子で、目元には隈ができ、そろそろ水分を取らなければ死に至るといったところ。


 そのまま更に二時間程ぐったりとしていたが、正午を過ぎようというところでのっそりと立ち上がる。ゆらゆらとした足取りで洗面所まで向かい、適当な量の水を汲むと、それをぐいっと飲み干す。

 男が横目で台上の鏡を見れば、そこには死んだ目の不健康そうな男性が映っている。


 馬鹿にするように小さく笑った男は、先程より多少は回復した足取りで玄関へと向かう。

 サンダルを履き扉を開けると、外から冬の冷たい空気が男へと吹きかかるが、男は体を寒そうに震わせるだけで、特に寒さを和らげようともしない。


 パタパタと、男のサンダルの音が廊下に響く。午後の三時という中途半端な時間もあり、マンションの外を見ても歩行者の姿は少ない。

 その事に安堵と若干の不満を覚えながら、男は今度は階段を上る。


 5分と少しの時間をかけて階段を上りきり、屋上へと出る。

 屋上の周囲には2メートルそこらの鉄柵が立てられており、眺めは全く良くない。その代わりに風は良いのだが、男にそれは関係の無い事だった。


 柵は網目の細かいもので、手を掛けるには心もとない。これを乗り越えようとするならば、何かしらの足場が必要になるだろう。


 無論男は何も持ってきていないので、素手で乗り越える必要がある。

 そう簡単に指は引っ掛からないが、であれば網目に指をねじ込めばいいのだ。当然痛いわけであるが、痛めたところで男には関係がない。


 両手の指を赤くしながら柵を上り、外にある小さなヘリに着地する。

 男はそこから下を覗き、誰も居ないことを確認すると、迷いなく身を投げ出した。

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