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2.よく観察しましょう。


 それから、宰相様なお兄さんの時々うんちくを挟んだ長い説明によると、僕の体力なんかのステータスは至って普通の数値らしい。


 魔力を持ってるのは二人に一人くらいらしいけど、僕は持ってたみたい。


 ラッキーだ。


 攻撃力や防御力なんかは僕くらいの子どもの平均的な数値で、知力に関しては優秀だと褒められた。


 義務教育なんかないこの世界では161という数値は結構高いほうで、僕の見た目年齢的には神童レベルだとか。


 とはいえ国仕えで文官やってる人と比べたら普通だそう。


 僕は中身までちびっ子ってわけじゃないからこれ以上伸びることはないだろうし、まあこんなもんなのかな。


 なんだ、異世界チートとかないんだなあとボーっと聞いてたら、最後の項目になって宰相様なお兄さんが分かりやすくソワソワし始めた。


 なんかここまでは前振りだったのか、目がテカテカ輝いて鼻息が荒い。


 すごく説明がしたそうだ。


「スキルのアイテムボックス。これはすごいですよ! これは異世界から来た方にしかないスキルなんですね。空中に作り出した異次元に物を収納することが出来るのですが、亜空間とも呼べるその能力はこちらの世界のどんなスキル保有者にも魔法使いにも考えられないほど異端なものでウンタラカンタラ」

「へー」


 勢いがすごい。


 どうやら、アイテムボックスは異世界人特有のスキルらしい。


 アイテムボックスって言ったら異世界転生モノの定番だもんね。


 宰相様なお兄さんはなんか小難しい理論の話を挟みながらまだ説明しているけど、僕は右から左に聞き流した。


 複雑なこと言われても分かんないし。


 アイテムボックスっていうくらいだから、やっぱり容量無制限で時間停止なんだろうな。


 便利なものに文句はないし、特別虚弱ってわけでもなさそうなのが分かって良かった。


 そうして翌日、予定変更することもなく僕は放逐されることになった。(まあ、そう望んだんだけど)


「金は、一人で身を立てる支度が出来る程度には渡しておく。本当にすまんかったな。困ったことがあったらいつでも頼りなさい」

「どうも」


 僕は昨日も会った王様ぽい人に挨拶してお城みたいな場所を後にした。






 僕は城下町らしい街中をとことこ歩く。


 お城も洋風だったけど、街中も石畳で馬車が走る中世ヨーロッパ風だ。


 キョロキョロしながら歩いてたら屋台のおっちゃんに観光かおのぼりさんの子どもだと思われたらしく、「楽しんでってくれよ」と串焼きをもらえた。


「平和そう、だなあ、むぐむぐ、ごくん」


 もぐもぐしながら思う。


 確かによくあるRPGみたいな世界観ぽいし、冒険者って感じで剣や皮鎧を身に着けた人や魔法使いなのか短杖を持った人もチラホラいる。


 けど、全体的にぽやぽやしてるというかのんびりしてるというか、平和な感じだ。


 鳥皮っぽい串焼きも甘辛タレで普通に美味しいし。


 ひとまず、帰る方法は無いと言うし、僕は今日からここで生きていくことになる。


 まずは宰相様なお兄さんのおススメどおり、冒険者にでもなるべく冒険者ギルドを目指した。






「街の外はたしかにソレっぽいなあ」


 ガサ、ガサ、と。


 冒険者ギルドで定石通りの登録処理をしてもらった僕は早速、街の外の森に分け入っていた。


 ちびっ子一人で入ってきた僕に始め冒険者ギルドにいた人たちの視線が集まったけど、僕が受付に行って登録したいことを伝えた頃には視線は散っていっていた。


 冒険者ギルドの人は普通に親切だった。


 説明によると、冒険者養成所なる学校の出身者や高ランク冒険者からの紹介がある人はいくつか上のランクからスタートできるらしいけど、身元不明で知り合いもいない僕はお小遣い稼ぎっぽいちびっ子たちと一緒に最低ランクからのスタートになるらしい。


 最低ランクの冒険者は腕試し的依頼や雑用なんかで冒険者の仕事を慣らすような意味合いがあるとかなんとか。


 受付をしてくれたのは肌が薄緑のお姉さんで、他にも色々説明をしてくれた気がするけど話が長くて途中からは夢うつつだった。


 とりあえず、ギルド登録が完了した事を証明するギルドバッジを胸に付け、今日は薄緑のお姉さんのお勧めの常設依頼の『万力草採取』をしてみる事にした。


 万力草はメジャーな薬草の一種で、街を出てすぐの森にも自生しているらしい。


 十本も見つけられれば今晩は格安宿に泊まってプラス一食食べるくらいは稼げるだろうとのことで、おいしいご飯と寝る場所のために頑張らないとだ。


 登録の為の聞き取りを僕にしていた薄緑のお姉さんは「働いた経験は無くて王都は今日が初めて、寝る場所も食べるものも無い、ですか……?」とか言って顔色を薄緑から濃い緑にした後は、やたらと親身になって色々説明してくれたんだよな。


 結局は僕の貧弱な体を見ながら「まったく危険がないとは言いませんがまだマシかと」って言ってこの依頼を勧めてくれた。


「お、またあった」


 木の根あたりにそれらしい草を見つけた僕は、濃い緑になったお姉さんから借りてきた"見本"を取り出す。


 見本は、状態保存のスキルを持っている人が万力草を加工したものらしく、ラミネートぽい加工をされた万力草の葉っぱの実物を見ながら同じものを探すことが出来る。


「うん。茎の黒い縞々は見本には無いし葉っぱのギザギザの形も違う気がするけど、きっとこれも万力草だよね」


 見つけた草と見本を見比べ僕は頷きながら万力草と思われるその草を採取した。


 森へ入ってから体感ではまだ一時間くらいだけど、既に収穫は上々だ。


 ギルド貸し出しの麻袋が大きさも様々で色とりどりの万力草たちで一杯になっている。


 十本で一宿一飯なら、これだけあればしばらく安泰そうだ。


 薬草探しの才能があったなんて自分でも意外だなあ。


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