11.猛犬注意!(子犬)
真剣な顔をした事で劇画調の画風になったギルド長が、彫りの深い顔で説明してくれた事によるとこうだ。
ツボの中身を確認したところ、ツボは完全に空だったそうだ。
つまり、サンポ以外にツボに吸い込まれたり、入れていた物全てが無くなっていた事になる。
王都や道中の村々で買い込んだ食料品も、テントや野営道具も、万が一に備えて入れていた回復ポーションやドーピングポーションも、もちろん、魔物も、全て。
残ったのはサンポだけ。
そしてとんでもない進化を遂げたサンポ。
これらの事から導き出されたのは、サンポがツボの中で戦い強くなったという事実だった。
「つまり、時間停止みたいな機能は……?」
「無い。その上、中は一つの空間になっているようだ。先ほど水とパンを入れたらしっとりして出てきただろう?」
「あー、あれはそういう……」
さっきツボを使ってしっとり濡れたパンを作っていたからこんなの好きなんだってちょっと引いたんだけど、あれは実験だったのか。
スタッフが美味しくいただくとか言ってたから、ギルド職員さんの中にとんでもない味覚音痴がいたもんだとか思っちゃってた。
そうか、時間停止だと思っていたのは僕の思い込みだったのか。
ってことは、と、僕は思い出す。
僕のツボに入ったのは最初にサンポ、それから王都で買い込んだ食料品や野営道具たち。
王様からもらったお金や武器屋さんで買ったナイフはいつでも使えるように腰に下げてたから、その後ツボに入れたのは確かゴウショウさんたちと一緒に遭遇した狼と魔狼の群れ、その後は魔物や野生動物だったり、村に立ち寄るたびに買っていた食料品や面白雑貨なんかだ。
それらが全部一緒の空間に放り込まれていたってことか。
そして、中でも時間は普通に経過していた。
「うーん、でもそれならそれで、生き残るのはサンポじゃなくて魔狼とかダンジョンボスとかじゃないのかな」
「うむ。当然の疑問じゃな。何か他に入れていた物や変わった事はなかったか?」
「うーん」
僕がとんでもなく強くなってしまったサンポを見ながら唸っていると、ホサさんが何かに気付いたようでハッと顔を上げた。
「ポーション」
「ああ!」
ホサさんの言葉に、ゴウショウさんがなるほどと手を打った。
僕も遅れて理解する。
「そういえば回復ポーションとドーピングポーションも入れてたんでした。ダンジョンを巡る前やダンジョンボスを吸い込む前にもゴウショウさんたちに融通してもらったのを何本か追加したりとか」
「それじゃな。サンポなりにポーションなんかがヒルネから供給されていることが分かっておったんじゃろう。魔物は本能で強くなることを望むというし、レジェンドランクに到達するほどに鍛えてくれたヒルネに恩義を感じて懐いたといったところかの」
そうだったんだ。
つまり、サンポはツボに吸い込まれた後もツボの中で僕の食料品や野営道具を使い潰しながら生きていて、そして次に魔狼たちが吸い込まれて来た。
あの時は十頭以上の群れだったけど、サンポには回復ポーションとドーピングポーションがあったから生き残れたのかもしれない。
そうすればレベルが上がっただろうし、後は僕が次々吸い込ませていった食料を食べ、ポーションを飲み、吸い込まれて来た野生動物や魔物なんかと戦っては強くなっていったってことかな。
酔っぱらっては色んなダンジョンを探索したし、その道中で出会う度吸い込んでいた全ての魔物をサンポは倒してたのか。
サンポってなんか僕より小説の主人公してない?
僕はじとっとサンポを見た。
おすわりしているつぶらな瞳に見返されて、口をニパッと笑顔で舌を出されたらもう可愛いから全然許しちゃう!
「サンポ可愛いなあ~」
「ヒルネお前なぁ……。まあもう従魔だし正しい主従関係なのかもしれんけどさ」
「仲良し」
ゴウショウさんとホサさんには苦笑されてしまった。
今思えば"クマ"ダンジョンではボスをツボに吸い込んでもすぐには踏破報酬の魔原石は現れなかった。
あの時は一眠りして起きたら魔原石があったけど、あれはきっとサンポが苦戦しながらも長い戦いの末に勝利したりとかそういうドラマチックな事が起きてたんだろうな。
ツボの中で。
「まあ、意図せずして"蟲毒"が完成してしまったという訳じゃな。お主も従魔を持った身なら、従魔のステータスも確認する癖を付けておくんじゃよ。お主はボーっとしとるからな」
「へえ、サンポのも見れるんだ」
「おっ! レジェンドランクの魔物のステータスなんて想像もつかないな」
「凄そう」
ギルド長がアドバイスしてくれ、ゴウショウさんたちも興味津々だ。
従魔契約した主人は従魔、僕の場合だとサンポのステータスを自分のものと同じように見ることが出来るらしい。
僕もギルド長曰くすごく強いらしいサンポのステータスが気になり確認してみることにした。
「"ステータスオープン"」
僕がキーとなる言葉を唱えた事でステータスが表示される。
まずは僕のステータスだ。
【名前】ヒルネ
【性別】男
【種族】異世界人
【年齢】18
【職業】冒険者・伝説を従えし者 Lv.6
【体力】213
【魔力】220
【攻撃力】16(+2)
【防御力】29(+15)
【知力】162
【俊敏性】6
【スキル】アイテムボックス
【従魔】サンポ
レベルが上がってちょっとだけ数値が上がっていて嬉しい。
異世界に来て一年と少しだけど、なかなか順調だ。
それから、職業欄と従魔の項目にサンポの要素が増えてるな。
そして、【従魔】の項目を意識しながらもう一度キーとなる言葉を唱える。
「サンポ、"ステータスオープン"」
キーとなる言葉で、サンポのステータスが表示された。
そして───。





