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10.人の話を聞けと言うとろーが。(三回目)


「ギャワン!」






「あ、豆柴だ」










 最初に出会った豆柴っぽい子犬が居た。



「……」

「……」



 しばしその場を静寂が包む。


 けれど、出てきたのが魔物とはいえ最弱のコモンランクでそれも子犬なワンコとあっては周囲に走った緊張もすぐ霧散した。


「キャベツじゃなかったけど、出せることは分かったし良かった、かな?」

「ギャワン!」


 僕は抱えていたツボを一旦下ろして豆柴を見る。


 大きさも変わってないように思えるけど、あれ、でも僕もこの子と戦った時から身長が伸びたからよく分かんないな。


 ゴウショウさんが「出したりしまったりは自由に出来そう、か?」と言い、ホサさんと一緒に様子を見ながらこちらに歩いてくる。


「うーん、何でこの子が出たのかな。もしかして入れた順にしか出てこないとか?」

「なーにブツブツ言ってんだ。それよかこの魔犬、なんかお前に懐いてねえか?」

「え?」


 ゴウショウさんに言われて考え込んでいた僕が改めて豆柴を見ると、くるんと立ち上がった薄茶色のしっぽがちぎれんばかりに振られていた。


 おお。なんか嬉しそう。


 そう思っているとまるで遊んでとでも言ってるみたいに体の前を低くしてお尻を高く上げた。


 うん、すっごく可愛い。


「ギャワン!」


 鳴き声も可愛く思えて来て、僕が頭を撫でてみようと手を出したその時。



「待てっ! 待つんじゃ! その魔物から離れろい!」



 屋外訓練場ぜんぶに響き渡るような大声が上がった。


 びくりとして思わず手を止め声がしたほうを見ると、未だ野次馬冒険者のところに居たギルド長が後ろ手に尻餅をついて顔を青褪めさせている。


 その様子は恐怖に慄いているようで、僕もゴウショウさんたちも呆気に取られた。


 すっかり筋肉が萎びてしまって小さく見えるノットマッチョギルド長が震える手を持ち上げプルプルと指をさす。


 その指は、間違いなく豆柴を指していて。


 頭の上に疑問符を浮かべる僕らに向かって、しなしなギルド長は言い放った。



「レッ、レジェンドランクの化け物じゃあああ~~~~!!!」

「えええ」

「ギャワン!」

















「こいつが、レジェンドランク、なんですか?」


 僕がお利口さんにおすわりしている散歩(サンポ)(命名)の頭を撫でながら聞けば、僕がサンポと従魔契約を終えたことでやっと安心したらしい復活マッチョギルド長は深く頷いた。


「うむ。間違いない。見た目は魔犬の子どもだが、職員の"鑑定"スキルでもそう出ておる。何より、ワシほどになれば目の前の魔物の力量は感じ取ることができるが、こやつは今まで会ったどの魔物よりも強大な力を秘めておる。エクストラランク上位のレッドドラゴンですら霞んでしまうほどの化け物じゃ」

「でも、レベル1だった時の僕といい勝負でしたよ?」


 ホントはツボが無ければ負けてただろうけど、プライドを守るためにちょっと話は盛った。


「それなんじゃが、恐ろしい可能性なんじゃが、理由としてはこれしか考えられん。"鑑定"と"看破"持ちにツボを確認させた結果から導き出された結論じゃ。そやつが従魔契約以前にお主に懐いとった理由でもある」

「それは……?」


 先ほどツボの中身を確認してもらったけど、それがどうレジェンド子犬爆誕と繋がるんだろう。


 ギルド長は頭を下げ首をふるふると振ってから顔を上げ、言った。



「 "蟲毒(こどく)" じゃ」



孤独(こどく)?」

「蟲毒じゃ。複数の生物を閉じ込め殺し殺させ最後の一匹となるまで戦わせる邪法じゃな。それが、ツボの中で起こったと考えられる」


 こどくって孤独のこと?


 僕が異世界でひとりぼっちってこと? 知り合いもたくさん増えたし充実してるよ?


 僕はよく分かんなくてギルド長の話の続きを待ったけど、決め顔のギルド長は僕のリアクションを待ってるっぽい。


「……まさか」

「そのまさかじゃ」


 適当に相槌を打ったら頷かれてしまった。


 相槌を間違えたらしい。


 詳しく説明してくれないかなと思ったけどギルド長は深刻な顔をしていて聞きづらいなと思っていると、ゴウショウさんが聞いてくれた。


「すまんが俺にも分かるよう教えてくれねえか? 何がどうしてそこらの森のコモンランクが超災害級の危険生物になっちまったんだ? その蟲毒ってのも異世界人の力か?」

「ああ、商人のお前さんには分からんか。蟲毒とは───」



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