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スキルマスター  作者: とわ
第一章 ムーン・ブル編

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54.ボボンと前祝い


 防具屋を出た俺は、このあと特に予定はないので情報収集のためにギルドに向う。すると、久しぶりのボボンがテーブル席に一人で座っていた。休憩しているのか何かを飲むのみの様子なので、俺は声を掛けることにする。


「こんにちは」


「お? おお~、こんにちは」


「今日は、休みなのか?」


「まあ、そうじゃのう。じゃが、最近は家でごろごろしておってのう。じゃから、たまには働こうかと思ってここに来たんじゃが…、ルーティはずいぶんと立派になったのう」


「これはさっき買ったばかりで、俺なんか、まだまだだよ」


「いやいや、そんなことはないぞ。冒険者になってまだ日も浅いのに、アイアン装備を揃えることができたんじゃ。大したもんじゃよ。まあ、立ち話もあれじゃし、そっちの席に座ったらどうじゃ?」


 ボボンは最初に少し驚いた様子を見せたが、構わず尋ねると鎧を見ながら話をした。俺も自分の姿を確認しながら、お言葉に甘えて向かいの席に座ることにした。そして、このあと会話が弾み最近の出来事の話をし、今はアマのダンジョンの3層に通うことを伝える。すると、


「そうかそうか。それならどうじゃ。一度、クマでも倒しに行ってみるか?」


 ボボンは、何故か目を輝かせながら話をした。


「クマか…。強そうだな」


「な~に。それを着とれば大丈夫じゃ。多少引っ掻かれても、怪我はせんからのう」


 ボボンは微笑んだあと、右手で自分の胸を引っ掻くようにした。俺はまだ鎧という物の性能が詳しく分からず少し不安に思うが、


(まあ、ボボンがこう言うなら、倒しに行ってみるのもいいか…)


 ボボンの話を聞いておくと何かとあとで役立つので、まんざらでもないといった表情を見せながら尋ねる。


「場所は、どこなんだ?」


「この街から西に、馬車で1日と言ったところじゃ。そこに、木こり達が集まる集落があってのう。そこのクマを退治するんじゃ」


「泊りか?」


「そうじゃ。一週間ぐらいになると思うが、どうじゃ? 行ってみるか?」


(一週間か…。しかも、初めて行く場所で強そうなモンスターだと、ちょっと心配だが…?)


 俺は、何故か未だに嬉しそうな表情のボボンに疑問を抱くが、


「ボボンも、一緒に来てくれるのか?」


「勿論じゃとも。じゃから、荷物の心配はせんでええぞ。それと、儂はクマの手が好きでのう~。それをちーとばかり分けてもらえると、ありがたいんじゃがのう~」


 理由は直ちに判明した。そして、ボボンはその表情のまま、右手の親指と人差し指を近付けて小ささをアピールしたが、


(クマの手は、その大きさじゃないだろう…)


 俺は思わず突っ込みを入れたくなったが、前回の打ち上げではしゃぐ姿を見ていたので、


(相変わらず茶目っ気のある人だ)


 と思い、それを止めた。そして指から視線を外して、再び思考を巡らせる。


(本命は、クマの手なんだな。クマは利き手で蜂蜜を舐めるから、その手は甘みがあって美味いと聞いたことがあるが…、きっとそうなんだろうな。日本では食べる機会がなかったし一度食べてみたいが、一週間か…。モモはともかく、リリーには先に話をした方がいいよな…)


 俺は、機嫌良くお茶をすするボボンに視線を戻す。


「ボボン」


「ん? どうじゃ?」


「返事は、新しく入った仲間に聞いてからでもいいか?」


「おお~。それは勿論じゃよ」


 ボボンはうっかりと姿勢を伸ばしたあと、問題ないと笑顔を見せた。


「それなら、今からその仲間に聞きに行くから、今晩また、一緒に酒でもどうだ?」


「ふぉふぉふぉ、前祝いじゃな。勿論、大丈夫じゃとも」


 俺が尋ねると、ボボンはエア酒を呑む仕草を見せた。


 こうして、俺はモモ達を探しに行くことになった。





(モモ達はウィンドウショッピングだから、ムーンツリーに行けば見つかるだろう)


 俺が当たりを付けてそこに向うと、都合良くモモ達がその根元で会話をしていた。声を掛けるとこれから昼食と言うので、ボボンの事を伝えるついでに俺も同行する。内容を伝えるとリリーも大丈夫ということで、このあと3人で夜まで街を巡ることにしたのだが…。


 あっちへふらふら…、こっちへふらふら…。


(女の買い物は、慣れないな…)


 俺は戦闘時以上の疲労を抱えながらも、なんとか夜を迎えた。そして、約束の店でボボンと合流して前祝いを行いながら日程の確認をし、明日の早朝に出発ということになった。




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