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スキルマスター  作者: とわ
第一章 ムーン・ブル編
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26.得手不得手


 先週の俺達は、レベル上げを行いながら自分達の得手不得手を調査した。それは、魔法スキルと物理スキルに分けて行った。


 魔法スキルの調査は、具体的には、火、水、風、土、光、闇の魔法スキルを、時にはスライムに放ち、時には何もない空に打ち出し、時には佇む木に放ち、時には城壁が破壊できないかとそれ目掛けて打ち出して「コラー!」と門兵に叱られることもあったが、そのようにしてそれらのレベルを上げた。結果、少し分かったことがある。


 最初は俺についてだが、どの魔法スキルも十回使用するのみでレベルが1に上がった。そのため、それがないと推測した。モモについては光魔法を使用した際は十回でレベルが1に上がり、それ以外では、二十回、三十回と繰り返すものがあった。そのため、それがあると推測した。


 俺達の、初期のステータスは同じだ。それでこの差が生じたということは、恐らく各々が初期から所持しているスキルの影響と考えられる。俺の場合、そのスキルはスキルマスターだ。名前からしても、この効果で得手不得手が生じなかったと思われる。モモの場合のニュータイプというスキルについては、それらしい効果が見られなかったため今回は不明とした。


 この事が、今後何をもたらすのかは分からないが、とりあえずは一歩前進したと思いたい。


 そして今は朝食を済ませたあとで、俺はベッドの上に腰を下ろしてステータスを確認していて、モモが側でうつ伏せに寝ころび足をばたつかせている。


「お兄ちゃんはいいな~」


「ん?」


「いろんな魔法が使えて、いいな~って」


「ん~…、そうでもないさ」


 モモが口を尖らせて不満気に呟いたため、俺は尋ねた。モモは訳を話したが、俺が悩みながらそう伝えると、ぴたりとバタ足を止める。


「なんで?」


「長い目で見ればいいことだと思うけど、ゆっくりいろんな魔法のレベルを上げて強くなるよりも、何にか絞った方がいいと思うんだ」


「どうして?」


「いろんな魔法が使えるってことは、それだけ聞くと最強みたいに聞こえるけど、この世界の魔法にはレベルがあるだろ。それに、苦手なものがないってだけで、レベルの上がり方が早くなる訳でもないし…。だから、他人と比べても、得意な魔法ならレベルの上がるスピードは同じだろ。俺が全部のレベルを均等に上げてたら、得意なものだけを上げてる奴に追い付けなくなるんだ」


 きょとんとした表情のモモがこちらに尋ね、俺は考えを伝えた。すると、今度は興味深そうに尋ねてきたため、俺は説明した。この事は実際にゲームで経験していて、肌身に染みている。しかし、


(ここはゲームの世界じゃなくて、現実だからな…。実際、どっちが安全なんだろう…?)


 それが悩ましかった。


「それじゃあ、どうするの?」


「う~ん…。とりあえずは、荷物を持ち運ぶのに便利な、空間魔法を上げようと思う。それと、水は必要だろ。魔法で作った水は一時凌ぎにしかならないらしいが、それでもあった方がいいと思うし。それに、氷が出せるから、ビールを冷やせるだろ? あと、ジョッキも冷やせるか…。ジョッキが冷えたビールとそうでないのだと、口当たりが全然違うんだ。やっぱり、口に当てた瞬間に、冷たい! って感じると、一気に目が覚めてビールが美味くなるんだ。あ~、そんな話をしてたら、飲みたくなってきたな~。どっかに売ってないかな~?」


 常夏の日差しの中でキンキンに冷えたビールを飲む姿を妄想しながら、俺は話し終えた。


(あれ? なんか静かだぞ?)


 ふとそう思い、モモを見た。すると、こちらをジト目で見ている。


(モモはまだ、ビールを飲んだことがないからな。いつかこの気持ちを、分かち合える時が来るだろう。だから…、頼むから…、そんな目で俺を見ないでくれ!)


 幸せな未来思い浮べながら、俺は過酷な現実から目を背けた。


「はあ~」


「こほん」


 モモが、肩を落として溜息を吐き隙を見せる。俺は直ちに咳払いをして、この場を仕切り直す。


「だから、空間魔法と水魔法を上げようと思う」


「ふ~ん。それなら…、私は、光魔法でお兄ちゃんを癒してあげる!」


(癒してあげるなんて…、なんて優しい子なんだ! こんな妹が欲しかった…)


 俺が話を続けると、口元に指を当てて少し悩んだモモが天使のように話をした。その眩しさに、俺は思わず叶わぬ夢を描いてしまった。


「あとは…、風魔法にしようかな? 相性が、いいみたいだし」


 俺がその光景を妄想していると、モモが話を続けた。ちなみに、光魔法を習得すると、回復系や支援系の魔法が使用できる。但し、回復系は、アンデットに対しては攻撃魔法になる。





「武器はどうするの?」


 俺が未だ幸せな妄想に浸っていると、隣に移動して来たモモが座りながら尋ねてきた。


「ん? ああ。俺は、このままでいこうと思う。使い勝手も、多分いいからな」


 気付いた俺は、返事を戻した。その理由は、俺はゲームでは槍と盾のキャラを使用することが多く、盾の万能さを知っているためだ。モモを守りながら戦闘を行うのであれば、こちらの方が良いと考えた。


「モモは、どうするんだ?」


「私は、二刀流はいいんだけど、もう少し長い武器が欲しいな~」


 俺が尋ねると、モモはベッドから立ち上がりながら返事を戻した。その内容は、恐らく先日のスライム戦を考慮してのものだろう。モモは床に置いてある荷物の中から二本のダガーを取り出し、刃渡りを確認し始める。それが終わると、今度はお手玉でもするかのようにそれらを回し始める。


 物理スキルの調査は武器が必要で、金がないため範囲が限られた。具体的には手持ちの武器と、それが必要でない体術のみだ。数多く調査できなかったため恐らくと言わざるを得ないが、結果は、俺については魔法スキルと同様で得手不得手がないと推測していた。モモについては、二刀流と体術の相性が良いと推測していた。


「それなら、俺達はこのまま物理系で、戦闘スタイルを磨いていこう」


「うん! でも、魔法はいいの?」


「勿論、魔法も上げていくぞ。ただ、俺達の目的は、この世界の調査だ。だから、洞窟みたいな狭いところにも行かないといけなくなると思し、そこで魔法中心で戦うのは流石に怖いだろう?」


「生き埋めに、なっちゃうもんね」


「ああ。それに…。まあ、俺は接近戦の方が好きだしな。男は黙って前のめりってな」


「あはっ! お兄ちゃんらしいね!」


 俺が提案すると、モモは二本のダガーを同時に分捕るようにキャッチして返事を戻した。その様は、なかなかにかっこ良い。俺が続けて尋ねるとモモはそう応え、話を付け加えると楽し気に笑って返事を戻した。


 このあと、俺達はクエストを行うために宿を出発し、それらをこなしながら更に一週間が経過するのであった。





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