2.未来
「それにしても、うちの会社は何でああなんだろうな。世界はカルダシェフ・スケールの言う未来に沿って動き始めてるのに。中国なんて2025年に核融合炉の完成予定で、そのまま核融合発電までいけば莫大なエネルギーと金を手に入れるだろうし。日本と他の国も、30年後に核融合発電の完成を目指してるのに。
エネルギー革命が起きれば、初めは電気を利用するから効率的に使える設備が必要になるし。多分それじゃあ使えるエネルギー量が少な過ぎて、核融合炉から直接エネルギーを使うような技術が開発されるだろうし。化石燃料は、ごみのようにとまでは言わないが使用量は一気に減るだろうし。
そのあとは、太陽のエネルギーを自在に操るようになって、他の太陽みたいな恒星をガソリンスタンドみたいに使って宇宙に進出して、そのまま他の星に住むようになるだろうし。そこからは、もっとエネルギーを使い易い形に変えて、魔法みたいにエネルギーから物質を作ることができるようになるかもしれないし。
ジュール・ヴェルヌって人が、人間が想像できることは人間が必ず実現できるって言ったけど、会社の奴らは未来や他人や自分すらも信じることができないから、そういうのが実現するなんて考えないんだろうな。いろんなことを信じて信頼して協力すれば、数十年後にはファンタジー世界みたいな夢のような未来が来るかもしれないのになあ~」
前向きな俺は、思わず愚痴を溢しながらも未来に羽ばたいて呟いていた。続きの夢のような未来は、右側に大自然と左側にSFのような世界と前方に疲労のためか夢のように甘くて綺麗で美味しそうなお菓子の国が各々に広大に広がる。夢のような未来を自由気ままに飛び回る。
「だが、カルダシェフ・スケールは疑問があるんだよな。これが言う未来は、人間はいつか精神だけで活動するらしいけど、それだと脳に記憶が刻まれるっていう話がおかしくなる。精神だけで活動するなら、精神に記憶が刻まれないといけないからな。そうなると、脳は精神から記憶を取り出す道具で、あの世はあるって話も分かるんだけど、う~ん…。まあ、そこまで未来に行かなくていいか」
不満な俺は、空中で胡坐をかくと同時に腕組して更なる未来を予想するが、精神体でのやりたいことを思い浮かばないために現実世界へと帰還しながら良い未来を願うと呟いた。住宅街の帰路に着地して顔を上げる。
「とにかく、うちの会社は先見の明がなくて発想のスケールも小さ過ぎる! はあ~、これじゃあストレスが溜まるばかりだ…」
複雑な俺は、思わず結論を強引に出して本日で幾度目かさえも分からない肩と息を深く落として呟いていた。
「せめて、この帰り道に寄れる店があればな…」
切実な俺は、付近にそのような店が存在しないことを知りながらも顔のみを上げて呟いた。帰路を物欲しげに眺め始める。細い路地を左側の隙間なく建ち並ぶはずの住宅の間に発見する。
「あれ? あんなところに道ってあったか?」
困惑な俺は、思わず顔をしかめて疑問に呟いていた。
「たまにしか通らない道だから、気付かなかったか?」
曖昧な俺は、首を右側に傾けて疑問に呟いた。過去の記憶を辿りながら周辺を確認する。
「覚えてないな…。まあいいか。それより、ここに店ができてたなら、ありがたいんだがな!」
希望な俺は、思わず過去の記憶を捨てて頬を緩めながら強く呟いていた。大きく緩み始める頬を右手で抑え込みつつ周囲を再び確認する。路地に素知らぬ素振りで向い、手前で立ち止まる。路地を確認する。
「よく分からないな。店っぽい感じはするが…」
挙動不審な俺は、思わず老眼のような症状が現れ始めている目を細めて薄暗い路地の全体を慎重に見渡しながら呟いていた。
薄暗い路地は、路面が茶色のレンガ調で奥へと続く。両側の住宅の敷地境界線と思わる位置に、フェンスが下側に三段のブロック積みで上側に白色の縦格子で立つ。フェンスも奥側へと続き、奥側の敷地境界線と思わる位置で左右にくの字に曲がる。くの字に曲がるフェンスの奥側に小ぢんまりとする平屋と思われる建物と、その玄関先が窺える。
『チカチカ バチン! ブゥーーーン』
くの字のフェンスの奥側に存在するのであろう二つの大きなスポットライトが、二度リズム良く点滅して虫を感電させるような大きな音を立てたあとに重低音を響かせた。薄っすらとする光が、玄関先に届き始める。安定する光の中に、若干の装飾が施されている白色の扉が映し出される。
「おっ、灯りが点いたぞ!」
テンポアップな俺は、思わず心を躍らせて強く呟いていた。視線を左手首の腕時計に移す。
「ちょうど8時か。この時間に点くなら、たぶんスナックだ」
ヒートアップな俺は、過去にスナック通いをしていて事情にある程度は詳しいために確信を得るように呟いた。視線を扉に戻す。
「ちょっとだけ覗いてくか。カラオケができるといいな!」
ビートアップな俺は、思わずドラムのリズムを右足で刻みながら頬を大きく緩めて強く呟いていた。店内のお立ち台に立つ美し過ぎる自分をイメージする。大好きなカラオケを熱唱し、従業員や常連客達がうっとりする。現実に戻り、待ちきれないと右足を路地に一歩踏み入れる。両頬を、もわっとする生温かな風が通り過ぎる。
「眩し!」
陽気な俺は、唐突にフラッシュを焚いたかのような鋭い閃光を全身に浴びて思わず急遽に立ち止まる同時に顔を左側に逸らしながら目を閉じて両腕を閃光を遮るようにして声を上げていた。
「あの光り、なんの光~!」
アゲアゲな俺は、思わず機動戦士ガンダムZZの名場面を真似して強く呟いていた。
「って、名場面を真似をしてる場合じゃないな。最近の懐中電灯は直視するのとホント眩しいんだよな」
愉快な俺は、思わず頬を緩めて呟いていた。
「あれ? でも、人なんていたか? 暗くて気付かなかったか?」
曖昧な俺は、思わず眉間に皺を少し寄せて疑問に呟いていた。顔を戻しながら目を両腕の隙間から細く開きつつ前方を確認する。
「なっ?!」
愕然な俺は、思わず顔を鋭く戻すと同時に目を大きく見開いて声を疑問に強く上げていた。全ては、真っ白に変わり果てた。
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