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スキルマスター  作者: とわ
第四章
188/191

90.真夜中の戦闘


「お兄ちゃん」


「ん?」


「行ってきたよ」


「どこへ?」


「もう~。情報収集よ」


 俺は辺りを見回した。テーブルに運ばれてきた料理が半分ほど無くなっていた。


「もうそんなに時間が経ったのか」


 連携技の時の事を思い出していたらだいぶ時間が過ぎていたようだ。


「おかえり。どうだった?」


「えっとね~。この先の街道にもコボルトが出るんだって。あと、次のラキアの港町にはまた1週間ぐらいかかるって言ってたよ」


「そうか。またしばらくは馬車での生活になるな」


「うん!」


「他は何かなかったか?」


「特にないかな~」


「ここの店はずいぶん流行っているようだが、その事は何か聞かなかったか?」


「そういえば、ここの人達はラキアから来てる人が多いみたい。オークが出たからこの村で待っているんだって」


「そうか。それでか」


 このオリバ村は街道の交差点で、丁度、T字路のような場所にある。なので、街道を進む人は必ずと言って良い程立ち寄る場所だ。そのため、村と呼ばれているのにも関わらず、村の中はかなりの広さがある。


「ありがとな」


 そう言って、俺がモモの頭を撫でると、


「えへへ~」


 少し酔っているようだったが、嬉しそうに頬を赤くした。



 ◇



 翌日。


 俺達は貿易の品の売り買いをし、食料などの必要な物だけ買い足して村を出た。もう少し滞在をしても良かったのだが、南のダンジョンで大量発生したモンスターを処理をした冒険者達が、村に戻って来るとごたごたとしそうだったので、先を急ぐことにした。


 ちなみに、今回の貿易の収入は、商業ギルドの報酬で大金貨1枚、貿易の利益は小金貨7枚だった。


 村を出発した後は、また、静かなものだった。そして夕方となり、俺達はキャンプをする場所を探した。


「この辺りで良いか?」


 馬車を停めたロンドがそう話しかけてきた。


「よっと」


 俺は馬車を降りた。


「少し木が多いが、良いんじゃないか?」


 辺りには林が近くにあったが、それ以外は見晴らしも良く、キャンプをするのには丁度良い場所だった。


「それじゃ、日が落ちるのは早いから、また見回りを頼む」


「わかった」


「今日はあれね?」


 アイラが俺に尋ねてきた。


「今日はあれだ」


「わかったわ。行ってくるわね」


 ロンドとアイラは林の方へと向かった。


 俺達は馬車で旅を始めてからは、モンスター除けの結界に頼らないようにしていた。ダンジョンの中でどの程度の強さのモンスターが現れるかが分かっている場合は、モンスター除けは頼りになるが、それ以外の場合はモンスターの強さが分からないので、使ってもあまり意味がないからだ。ただ、スライムは至る所に湧くので、蚊取り線香もとい、スライム線香代わりにモンスター除けの結界は張るようにしていた。


 それと、アイラがあれと言ったのは今日の晩飯の事で、村などに立ち寄った日の晩飯は、その村で買った物を食べることにしていた。これは、食事を考えるのが手間だからだ。毎日の食事を考えるのも大変なのだ。とはいえ、温めはするので、結局作るのと変わらないぐらいの手間がかかっている。レンジでチンが欲しいところだ。


 残った俺達は早速キャンプの準備を始めた。そして、ロンド達も戻ってきて、この場所の安全を確認してから食事を済ませ、眠りにつく。


 眠る時は2人ずつの交代制で見張りをする。2人組のペアも順番で入れ替わるようにした。毎日同じでは流石に話もなくなるからだ。


 ちなみに、馬車の荷台で寝るのも交代制だ。馬車の荷台の方が地面から離れているので、眠る時に寒さをあまり感じないのだが、そこは、テントで眠る人用に厚手の敷布団のような物を用意してあるので、どちらで眠ることになっても寒さ対策は万全に済ませてあった。


 

 ◇◇



 俺は見張りを済ませてから眠りについていた。


「ルーティ…。起きてくれ」


 俺は目を覚ます。


「ロンドか。どうかしたのか?」


「モンスターだ」


 ロンドが小声で俺に話した。


「ん? モンスター?」


「寝ぼけているのか?」


「いや、大丈夫だ。珍しいなと思っただけだ」


「林の中にコボルトがいる」


「数はわかるか?」


「いや、そこまではわからない。ただ、少し多いような気がする」


「わかった。皆も起こしてくれ」


「大丈夫だ。ルーティが一番最後だ」


 俺がテントから出ると、皆がそこに立っていた。


「おはよ~。リーダーなんだからしっかりしてよね!」


 いきなりアイラから小言を言われた。


「寝てたんだから仕方がないだろ」


 俺は慌てて装備を整えた。この時ばかりは鎧を装備することが面倒臭く感じた。


「どんな感じなんだ?」


「数が多いことぐらいしか分からないわ」


「グルゥゥゥ」


 林の中から声が聞こえる。それは犬が威嚇をする時の声に似ていた。


「とりあえず、灯りを増やそう。ライトの魔法を使ってくれ」


「わかったわ」


「うん」


 アイラとモモが手を上に掲げてスキルを使う。


【【ライト】】


 光の玉が空中へと浮かんだ。辺りが昼間のように明るくなる。


「林の中はまだ暗いから、コボルトが顔を出したら遠距離から攻撃をしてくれ」


「私はどうすれば良い?」


 モモが俺に尋ねてきた。


「モモと俺は皆の前に出て、飛び出してきた奴を倒すぞ」


「わかった!」


 こうして、俺達の初めての夜での戦闘が始まった。





【ファイアショット】


 ロンドが早しに向けて弓を放つ。


「キャイン!」


 犬が痛がるような鳴き声が辺りに響く。


「よく見えるな」


 俺は関心をした。


「エルフヘイムは森の中だったからな。これぐらいの灯りがあれば問題ない」


 ロンドの放った矢のおかげで林の中が明るくなった。そして、2匹のコボルトの顔が見える。


 【ライト】の光で鼻先の方から覗かせるように見える顔は、全体に毛が生えており、暗さも相まって、得体のしれない化け物のように見えた。そして、コボルトの顔は人の顔よりも3倍ほど大きかった。口が裂けており、やはり犬顔だった。


(暗いところからあれがいきなり現れたら、ちょっと怖いな)


 そう考えているところに、リリーとアイラの声が聞こえた。


【ファイアアロー】


【ウィンドカッター】


 2人の魔法が顔の見えたコボルトを襲う。


「キャイン! キャイン!」


 コボルトはたまらず奥へと隠れた。


 今度は別の場所からコボルトが飛び出してきた。


【挑発】


 コボルトは、一瞬、動きが止まる。そこへモモが攻撃をする。


【アイススラッシュ】


『ビキビキビキ』


 コボルトの足が凍り付く。更に、


【チャージドスラッシュ】


『ズパン!』


 コボルトの頭が飛ぶ。


(手ごたえからして、それほど強いモンスターではないな。だが…)


 この戦闘は持久戦になった。夜という時間帯、そして、コボルトは林の中にいるため、その数も分からず、俺達は攻めるにも攻めあぐねた。そして、それが動き出したのは日が昇り始めたころだった。


「明るくなってきたな」


「やっと見えるようになってきたね」


 モモが戦闘の構えを解く。


 日の光で薄っすらと林の中が見えるようになったので、こちらに余裕が出来た。


 コボルトとの睨み合いは時間にして30分ぐらいと言ったところだったのだが、その時間は1時間とも2時間とも取れた。


「一気に行くか?」


 ロンドが槍を手にする。


「これだけ明るくなれば大丈夫だろう。深追いはするなよ。追い払うだけで良い」


「わかった」


「アイラとリリーは待機をしていてくれ」


「わかったわ」


「わかった。がんばってね!」


「よし。追い払うぞ!」


「おー!」


 最後にモモが手を上げて明るく叫んだ。


 そして、俺達は林の中のコボルトの掃除をした。




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