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スキルマスター  作者: とわ
第四章
179/191

81.異変


無事に貿易済ませた後、俺達は今日泊まる宿を探した。


この集落の商業ギルドで宿を紹介してもらったのだが、やはり集落なので大した宿はなく、宿代もそれほど変わらないということだったので、俺達は集落の中心にある宿に泊まることにした。馬車は街のはずれに厩舎があったので、そこで預かってもらうことにした。馬車はこの世界の物流の要なので、どこにいっても1日2日、泊めておくことのできる場所はあるそうだ。


何だかんだで小用を済ませていると時刻は夕方となったので、俺達はこの集落の酒場に顔を出すことにした。


「今日はゆっくり休めるね!」


モモが嬉しそうにして俺にそう話しかけてきた。


「交代で見張りをやっていたからな。それなりに疲れがたまるな」


馬車の旅なので道中はもちろん野宿をした。二人ずつで見張りをし、交代で夜を見張っていたのだ。6人いるのでそれほど寝不足にはならなかったが、それでも、疲れがたまる感じがした。


「私も少し寝不足だよ~」


リリーがそう話しかけてきた。


「リリーはよだれを垂らして爆睡していただろ?」


「よ、よだれなんて垂らしていないよー」


俺が適当なことを言うと、リリーはアワアワと手を動かし始めた。


うん。面白いな。


「リリーをからかわないの! それで、ルーティは別行動をとるのね?」


「ああ。俺は情報収集をするよ」


俺達はこの旅では立ち寄った場所で情報収集をすることにしていた。さすがに6人でまとまって情報収集をすると相手も警戒をするので、情報収集をする係りになった者は別行動をとることにした。これも交代で行うことにしていて、今回は俺がその係りだ。


「お兄ちゃん、頑張ってね!」


「期待をしているぞ」


「気を付けてね」


「ルーティ、ファイト!」


「あ、ああ。行ってくる」


こんな小さな集落では大した情報もないと思うのだが…。


何故かみんなのテンションが高かった。情報収集という言葉に魅かれたのかもしれない。


酒場に到着をするとそこにはカウンター席とテーブルの席があった。俺はカウンターへ向かい、皆は空いているテーブルの席に座った。


情報収集と言っても、何を聞けばいいんだ? とりあえずは、この街の名物と次の街のことでも聞いておくか。


俺はそう考えながら席に着いた。カウンターには中年のおばさんがせわしなく働いていた。


「おばちゃん。ビールを」


「あいよ」


おばちゃんは慣れた手つきでジョッキにビールを注いだ。


「何か食べるかい?」


「そうだな。この街は初めてなんだ。お任せで頼むよ」


「どおりで。見たことのない顔だと思っていたよ」


そう言いながらおばちゃんは、漬物のような物をカウンターに置いた。


「これは?」


「野菜漬けだよ。このオリビアの集落は野菜を多く育てているのよ」


オリビアの名物。確か地図に、この集落はオリビアと名前が書いてあったな。


「名物なのか?」


「名物はそっちだね」


そう言って、おばちゃんはビールを指さした。


「飲んでみておくれ」


「ああ。それじゃ」


俺はビールを一口飲んだ。それは俺の知っているビールとは少し違った。


「甘い香りがするな」


「この集落は穀物を育てているからね。それを使ってビールやウィスキーなんかを作っているのよ。甘い香りは樽に着いた匂いのおかげさ。他とは違って良い香りがするだろ?」


樽で作ったということは、木樽のことか? ウィスキーを作った樽にビールを入れると香りがビールに移って甘い香りがすると聞いたことがあるが。炭酸は少し抜けるようだが、クリーミーで飲みやすいな。


「なかなか美味いな」


「それは良かったよ」


おばちゃんは笑顔でそう返事を返してきた。田舎のかっぷくの良いおばちゃん。俺はどこか懐かしさを感じた。


「これは貿易品として売ったりできるのか?」


「あんた貿易をやるのかい? 私はてっきり冒険者かと思っていたよ」


「冒険者なんだが貿易もやっているんだ」


「そう~。若いのに頑張るね」


中身はそれほど若くはないのだが、まだまだお兄さんではある。


「それなら商業ギルドで聞いてみると良いよ。個人で売り買いは難しいからね。あそこなら、そう言った事も扱っていると思うわよ」


やはり商業ギルドか。エルフヘイムで登録をしておいてよかったな。


「明日聞いてみるよ」


「そうしておくれ。まぁ、ここに居る間はゆっくりしていきなよ」


そう言って、おばちゃんはまた仕事に戻っていった。


カウンター席の一人でいる時は暇なものだ。カラオケでもあれば良いのだが、この世界にそんなものはないからな~。


やる事がなかったので俺はビールを飲み干して、2杯目をお替りした。


「おまたせ」


「ありがとう」


おばちゃんが戻ってきたので俺はもう少し情報を集めることにした。


「なぁ、おばちゃん」


「ん。なんだい?」


「最近何か変わった事とか起きていないか?」


俺がそう質問をするとおばちゃんはちょっと考え込むような表情をした。


「そうだね~。何も変わっていないことが変わった事なのかね~」


何も変わっていないことが変わった事? どういう意味だ?


俺は言葉の意味が分からなかったので、おばちゃんに聞きなおした。


「どういう意味なんだ?」


「ん~~。3年前に魔王が倒されたわよね。でも、モンスターは3年前と変わらずにいるのよ」


「どういうことだ?」


「私も昔のことは話に聞いただけのことしかわからないけど、魔王が倒された後はモンスターはこの辺りからいなくなるって聞いていたのよ。だけど、そんなことは起きなくて、今もモンスターはこの集落の周りに沢山いるのよ」


この話は聞いたことがあった。魔王を倒すとモンスターがおとなしくなるという話だ。ここまでの道中で、この周りのモンスターはそう多くはないとは思っていたが、それでも居ることは居た。恐らく、遥か昔に魔王を倒した時はこの辺りからモンスターがいなくなった、ということなのだろう。


「でも、困っている訳でもないし、気にすることでもないのかね~」


そう言って、おばちゃんは少し考えながらまた仕事へと戻っていった。


モンスターが減っていないか…。これからはその辺りも気にした方が良いのかもしれないか。


その後も、少しおばちゃんと話をしたが、特に何もなかったので俺は席を移ることにした。


「おばちゃん。向こうの席に移るよ」


「あいよ」


少し離れた場所から、おばちゃんの元気な声が聞こえた。





俺は皆のいる席に移り、今聞いたことの話をした。


「そうなのね」


「モンスターが減っていないか」


アイラがそう呟き、ロンドは何か考え事をしていた。


「心当たりでもあるのか?」


「ん。何のことだ?」


俺がロンドに話しかけると、首をかしげてそう返事をした。


「いや、今、モンスターが減っていないって言ったろ?」


「そんなことを言ったか?」


あれ、話が通じないぞ? まさか!


俺はリリーの方を見た。リリーはニコニコしながらお酒を飲んでいた。だがそれは、ビールではなかった。


「リリー。そのお酒は?」


「ウィスキーだよ。ここの名物なんだって。甘くておいしいよ」


確かにウィスキーはここの名物という話だった。甘くておいしいか…。本当に酒豪だな。


テーブルを見るとロンドの前にもリリーと同じくウィスキーの入ったコップが置いてあった。どうやら、またリリーに飲まされたらしい。


「ロンドもこんなんだし、その話はまた明日にしたら?」


「お兄ちゃん! こっちに座って~」


「ルーティ、おかえりー!」


モモとシルフィーも少し酔っぱらっているようだった。


せっかく皆が良い気分になっているのだ。細かい事はまた明日に話をしよう。


そう思って、その後は俺も一緒にウィスキーを飲むことにした。





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