79.クリームパスタの作り方
モンスターの存在するこの世界。
馬車の中で寝転がったり、アイテムを作ったりしているのだが、馬車が襲われるということはなかった。街を出てまだ半日ほどしかたっていないので、そんなものなのかもしれない。
「ん~~~ん」
モモが大きく背伸びをした。どうやら目が覚めたようだ。
「お兄ちゃん…」
寝ぼけた目をこすりながらモモが話しかけてきた。
「なんだ?」
「お腹すいた」
「…」
馬車の旅は食っちゃ寝生活になるのだろうか?
「そろそろ昼頃か」
ロンドも矢を作る手を止めてそう話した。とはいえ、道の真ん中で昼休憩を取ることは流石に出来ないので、どこか休める場所を探す必要があった。
俺は御者台にいるリリーとアイラに声をかけた。
「モモが腹が減ったと言っているが、お前達はどうだ?」
「そうね。少しお腹がすいたかも。それに、ちょっと疲れてきたわ」
「うん。お腹すいたし疲れたね」
「そうか。ならどこか休めそうな場所で適当に停めてくれ。そしたら昼にしよう」
馬車の中で昼を済ますということでも、俺達だけなら良かったのだが、この馬車は2頭立ての馬で走っている。馬もこまめに休憩を取る必要があるのだ。
辺りもまだまだ草原が続いておりモンスターの気配も少ないので、道から少し離れた場所に立っている、ちょうど良さそうな1本の木の下で俺達は昼休憩を取ることにした。
「ん~~~」
馬車を降りるとアイラが大きく背伸びをした。
「腰が疲れるわね~」
「歳より臭いな。あ~。アイラは年寄だったか。無理はするなよ」
「年寄っていうな! 年を取っていなくたって、ずっと座っていれば腰が痛くなるものよ!」
分かってわいたが、少しアイラをからかってみた。
「馬の世話は任せたから、今日は俺が料理をするな」
「あら、珍しいわね。ルーティが自分から料理を作るって言うなんて」
「たまにはな。それに、久しぶりに食べたいものがあったんだ」
料理は普段は当番制で当番の者が何かを作っていたのだが、今日は食べたいものがあったので自分で料理を作ることにした。
「で、何を作ってくれるのかしら?」
「今日はクリームパスタだ!」
俺は力強くそう言った。すると、横で話を聞いていたロンドが話しかけてきた。
「こんなところでクリームパスタなんて、時間がかかるんじゃないか?」
「クリームパスタなんて簡単だぞ。むしろ、時間のかからない料理だ」
「そうなのか? 俺は料理は詳しくないからな」
ロンドはそう言いながらアイラの方を見た。
「わ、私に聞かないでよ。私もあまり料理に詳しくないんだから…」
アイラはもじもじしながらそう言った。
「アイラは神界で一人でいたんだろ? 食事はどうしていたんだ?」
「食事は思い浮かべれば出てきたわ」
何ということだ。思い浮かべるだけで料理が出てくるとは。神界に転生したほうが楽に生きられそうだな…。
俺はふと、そんなことを思ったが、料理の支度に入ることにした。
「せっかくだからアイラも作り方を覚えておくか? 簡単だから誰でもできるぞ」
「そうね。それなら教えてもらおうかしら」
ちょっとツンデレ気味のアイラだったが、顔は何か嬉しそうな感じに見えた。
アイラは照れ隠しをする時にちょっとツンデレが入るな。
アイラは俺の隣に来て料理を覚えるようだ。ロンドもこの場を離れる様子はなかったので興味があるのだろう。馬の世話はモモ達が行っているようなので大丈夫だろう。
それでは早速、料理スタートだ。
まずは、バター一欠けらをフライパンの上で温めて溶かす。一欠けらは、スーパーで売っているバターの使いやすいように切れ目の入っている物のことなのだが、分からない人は大さじ一杯分でも良い。足りなければ後から足すこともできるので、そこまで細かく気にする必要はない。
次に溶かしたバターに小麦粉を大さじ一杯分を加える。火にかけたままこれをやると焦げるので、焦げないように火から外して行うようにする。温度が下がり過ぎてもうまく混ざらないので、慣れないうちは火にかけたり、火から外したりを繰り返して感覚をつかんでほしい。そしてこれが1人前の量になる。
そして、このバターと小麦粉の合わさったものにミルクを少量ずつ加える。ペースト状にするためだ。これには時間を掛けよう! ここでミルクを大量に入れたり、先ほど作ったバターと小麦粉の塊を小さくちぎって溶かしやすくしたりと、楽をしようとすると失敗する。このバターと小麦粉を混ぜたものは溶けにくい性質を持っているので、ゆっくりとミルクで溶かすようにする。そして、好みの堅さになればクリームソースの完成だ!
ここまでで、慣れた人なら5分だろう。
今回は6人前なので2回に分けて作り、15分ほどかかった。そしてこの間に、麺を茹で上げておいた。
あとは炒めるだけだ。肉と野菜を炒め、下味で塩コショウをする。そして茹でた麺を加える。ここで味を確認する。下味に対して、大抵は塩味が足りないのでクリームソースに塩を振って味の調節をする。そしてクリームソースを炒めた具材に混ぜ合わせ、温めれば完成だ。
「これで完成だ!」
この間約20分。6人前だとちょっと時間がかかるか。
「「「「「おおー!」」」」」」
いつの間にか皆も集まっていた。
「もっと難しい料理かと思っていたわ」
「クリームパスタはクリームソースだけ作ることが出来れば、後は炒めるだけだからな。クリームソースは、バター、小麦粉、塩、ミルク、これだけあればすぐに作ることが出来るから、クリームソースの料理は実は簡単なんだ」
「ぐ~~~」
誰かの腹の虫が鳴った。
「あ、俺だ。見ていたら腹が減って来たぞ。早く食べさせてくれないか?」
腹の虫が鳴いたのはロンドだった。そしてリリーの口からよだれが垂れていた。
辺りには濃厚なバターの香りとミルクの甘い香りが漂っているので腹の虫が限界なのだろう。俺達は冷めないうちにクリームパスタを食べることにした。
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少し短いですがお正月ということで。
そろそろ普通のご飯が食べたいですね。
 




