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スキルマスター  作者: とわ
第三章 エルフヘイム編
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73.ボス:サンドゴーレム戦


「ららら~♪」


 テントから出ると、左側の大きなテントからそんな歌声が聞こえてきた。


「あ!」


 思わず俺は声を上げた。


「何!?」


 アイラが驚いてこちらに振り向く。


「マクベの事を忘れてた…」


 俺はその場にうなだれた。


「残念だったね」


 モモが俺を慰める。


「うっかりしてた。今更、戻る訳にもいかないし…。ここにはもう用事はないし…」


 事件の報告のついでにここの連中と仲良くなるか、時間を稼ぐかをして、マクベという人物の顔だけでも拝んでおこうと企んでいたのだが、あのガラの悪い連中のせいですっかりその事を忘れてしまっていた。かと言ってここでうろうろしているわけにもいかないので、かなり名残惜しかったが、俺はこの管理場を離れることにした。



 ◇



「これからどうするな~?」


「ボスを倒さないの?」


「そうだよ~」


 アイラとリリーがツッコミを入れてきた。


 色々あったので、俺はボスを倒す事への気がそれてしまった。


「そうだよな~。ボスを討伐をしないと先に進まないし…。やっぱりここはボスだけでも倒しておくべきだよな~…。やるしかないか…」


 俺はなかなかテンションが上がらなかったが、何とか気持ちを切り替える。


「ちょっとごたごたしたけど、皆はもう大丈夫か?」


「大丈夫だよ!」


「私も平気よ」


「問題ない」


「ボスに早く会いたーい!」


 リリーがガッツポーズを取り、アイラとロンドも落ち着きを取り戻した様子だ。そしてシルフィーが俺達の周りを飛び回る。


「ボスを倒しに行こ! それにこれが終われば、お兄ちゃんがやりたかった馬車の旅が待ってるんだよ!」


 モモも俺の腕を引っ張りながら、ボス戦へと催促をした。


(モモは相変わらず良いことを言うな)


 俺はモモの頭を撫でながら皆に話をする。


「そうだったな。今日一日を無事に乗り切れば、ようやく馬車の旅が始まるんだ。よし! 皆が大丈夫なら、さっさとボスを倒しに行くか!」


「「「「「おー--!」」」」」


「ルーティが一番ダメだったんじゃないの?」


 アイラが突然、耳元でささやいた。そしてにやにやと笑っている。


 俺は反論ができなかったので、とりあえず、アイラをくすぐっておく。


「キャハハハ!」


 俺のテンションが回復した。


「もう! やめてよね!」


 場の空気も良くなったところで、俺達は再びボスの討伐へと向かうことにした。



 ◇



 祭壇の前へと戻ると、先程の衛兵がこちらに話し掛けてきた。


「お、戻って来たか。どうだった?」


「特に何もなかったよ。報酬だけもらってさっさと帰って来たさ」


「それなら良かった。それで、もう一度ボスに挑戦するんだろ?」


「ああ。今からまた入る予定だ」


「そうか。さっきも言ったが、ここのボスはそれほど強くはないからな。焦らずにいけば問題なく倒せるから、頑張って来いよ!」


「ああ。それじゃあ、皆行くぞ!」


 俺達はもう一度、祭壇に向かい魔法陣の上に乗る。


「今度こそボスなんだね!」


「どんな感じなんだろ?」


 リリーがモモを見ると、モモは指を口に当てながら上を見上げて考え始める。


「一発で倒してやるわ!」


「それは無理だろ」


「がんばるぞー!」


 アイラに対してロンドがツッコミを入れ、シルフィーが片手を空に突き上げた。


 しばらくこの場で待っていると、魔法陣が薄っすらと赤く輝き始める。


「気をつけてなー!」


 最後に再び衛兵が声援を送ってくれた。


(なんだかんだで、あの衛兵は良い人だったな)


 俺はそんなことを考えながら、ボス部屋へと転送された。



 ◇



 2度目のボス部屋となるが、部屋の感じは前回と同じ様子だ。だが、違うところもあった。


「あれがサンドゴーレムだな?」


「砂の塊が転がってるね」


 俺とモモは目を凝らす。部屋の中央にブロック状の物が積み重なっていたからだ。


「動くのかな?」


 リリーが俺を見る。


「距離が離れてるから、あんなのなんだろう。合図をするまではこれ以上近づかないようにな」


 サンドゴーレムは一定の距離まで近づかなければ襲ってはこない。


「今回は、他の冒険者とは一緒にならなかったわね」


「そう何度もあんなことがあっては困るだろ」


「砂遊びー!」


 アイラとロンドは落ち着いた様子で言葉を交わし、シルフィーは落ち着かない様子で飛び回っている。


(やっぱり、ボスを見ると興奮するな! ゲームなら真っ先に突っ込んでいくところだが、それでよく死んでいたからな…。ここは慎重に行こう)


 これは遊びではないと言い聞かせるように、一度、深く息をする。


「開幕は予定通り、初めに全員でウォーターをぶつけるぞ。その後は、相手の出方を見ながら囲むようにして攻撃をしよう」


「「「「「わかった(わ)!」」」」」


 俺達は魔法の射程範囲の一歩手前まで、サンドゴーレムへと近づく。そこまで近づいたのだが、まだ、サンドゴーレムは動く気配はなかった。


(あと一歩前に出たら、流石に動き出すだろうな)


 俺は皆に目配せをして同時にあと一歩、足を踏み出す。





『サラサラサラサラ』


 今までピクリとも動かなかったサンドゴーレムだが、魔法の射程圏内に入った途端、砂の流れる音と共にゆっくりと動き始める。


 ゴーレムは魔力で動く生物だと話を聞いていたが、胴体を中心にまるで磁石で引き寄せられるようにして手足や頭が転がりながら繋がれていく。肘や膝なども存在し全体的に四角い形状だが、人のような形となって立ち上がった。


 そして俺は、サンドゴーレムの頭を見て驚いた。


(あ、あれは、ガンダムのつもりなのか!?)


 額の部分には二本の角のような物がV字に付いていた。


(面白い…。が、醜いな…)


 その姿に少し怒りを覚える。


(また敵となるか。ガンダム!)


 ガンオンではジオンをやっていたので、内なる闘争心が燃え上がった。





 俺は手を前にかざして魔力を思いっきり込める。すると、見る見るうちにかざした手の前方に水が集まり始めた。その水の量は、普段のシャワーで使用している量とは比べ物にならない。


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん。やりすぎ!」


「ルーティ、落ち着いて!」


 何やら周りが騒がしいが、俺にはよく聞き取れない。いや、聞く気がなかった。


(もっとだ。もっと来い!)


 俺は水を集めることだけに集中した。そして水の塊の大きさが直径3メートル程となり、ほぼゴーレムと同じぐらいの大きさになった。


(先手必勝だ! バズーカからの空中格闘で行く!)


【ウォーターボール!】


 俺は即時実行に移した。そして魔法を放つと同時にその場を駆け出す。


【【【【ウォーターボール】】】】


 慌てて魔法を放つ皆の声が後ろから聞こえる。ここで俺は更にスキルを使う。


【突進!】


 突進は4層の攻略の際に覚えたスキルで、通常の1,5倍の速さで移動することができ、そのまま攻撃にも繋げられるスキルだ。


 後から放たれたウォーターボールは俺のウォーターボールに吸収され、更に一回り大きくなる。その後ろに隠れるようにして、俺はサンドゴーレムの左側へとジャンプをする。そしてウォーターボールがサンドゴーレムに直撃をした。


『ダッ! パーー-ン!』


 膨大な水しぶきと共に、まるでプールに飛び込んだ時に腹打ちをしたかのような音が、数倍の大きさとなって辺りに鳴り響く。その一撃でサンドゴーレムの全身は水浸しとなり、よろけるように一歩、後ろへと下がる。


(あそこが気に入らない!)


【チャージ】


 俺は空中でスキルを使う。そして全身をムチのようにしならせながら、更にスキルを使用してサンドゴーレムを追撃する。


【チャージドスラッシュ!】


『バン!!!』


 右薙ぎに振られた剣の手応えは確かなものだった。そしてサンドゴーレムの後方へと着地をし、今の攻撃を確かめるために後ろへ振り向く。


 サンドゴーレムの頭部は見事に吹き飛んでいた。


「よし!」


 と、ここで俺は我に返った。何故なら、サンドゴーレムの向こう側に居る皆が、俺の方をじっと見つめていたからだ。


「あ…」


 しまったと思うが時既に遅く、俺は皆に掛ける声が見つからず、頬を指で掻いた。


「や、やろう!」


「ボ、ボスを倒そう!」


 モモとリリーが戸惑いながら武器を握り直している。


「やれやれね」


「凄い早さだったな」


「通常の3倍だー!」


 アイラの呆れた声とロンドの感心をした声が聞こえ、シルフィーはどこでそんな言葉を覚えたのかは分からないが、両手を上げて大喜びをしていた。


 そしてサンドゴーレムは、初めの魔法攻撃で既に瀕死となっていたようで、皆が一撃ずつ攻撃を加えたところで、あっさりと倒れてしまった。


(あの程度で感情をかき乱されるとは、俺もまだまだだな…)


 少し反省しながらも、俺達のゴールド・ダンジョンの初めてのボス戦は、無事に終えることができた。




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