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スキルマスター  作者: とわ
第三章 エルフヘイム編

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72.ゴールド・ダンジョンの異変と大佐


「何だったのあいつは!」


アイラが声を荒げて怒っている。


「わからないな…。とりあえず、皆のところに行こう」


 俺とアイラは、まだ倒れているリリー達の方へと向かった。


「大丈夫か?」


「ルーティ、大丈夫。少し背中をぶつけただけみたい」


「ロンド達も平気か?」


「ああ。怪我はない」


「シルフィーは?」


「ここだよ~」


 シルフィーは上空からふらふらと飛んできた。


「目が回ったよ~」


 どうやら、吹き飛ばされた時に上空へと飛ばされてしまったようだが、怪我はないようだ。


「お兄ちゃん…」


 モモが抱き着いて来た。何やら怯えた様子で、本能的なものであいつの恐ろしさを感じ取ったのかもしれない。


「大丈夫か?」


「大丈夫…」


 モモは俺の体に顔をうずくませている。


「モモのおかげで助かったよ」


 俺はモモの頭を撫でた。しばらくそうしているとモモは少しは落ち着いたようで、俺に抱き着く力が弱まった。


「それにしても、奴は何だったんだ?」


 ロンドが俺に尋ねる。


「わからないな」


「ここはボスが居るんじゃなかったの?」


「冒険者だったのかしら?」


 リリーとアイラも首を捻った。


「今は考えても答えは出ないだろう。ここは一旦戻って、管理人に伝えておいた方が良いかもしれないな」


 今度はモモが首を捻る。


「どうやって戻るの?」


「入ってきた時と同じだよ。そこの祭壇の魔法陣にもう一度乗れば、元の場所に戻れるらしいぞ」


 俺が近くにある先程の祭壇に指を差すと、アイラは首を捻ったまま腕を組んで顎に手を当てた。


「それなら、一旦戻った方が良さそうね」


「ボスも居ないみたいだしな。戻って何が起こったのかを確認しよう」


 俺達はここへ入った時と同じように、近くにある祭壇の魔法陣の上に乗りボス部屋を出ることにした。





「何か疲れたわ…」


 アイラが突然、肩を落とした。アイラ以外も少し元気がない様子だ。


「そうだな。けど、休む前に今起こったことの確認だけはしておくぞ」


「そうよね」


「「「はーい」」」


「わかった」


 俺は仕方がないので皆をその場に残して、近くに居た衛兵に声を掛ける。


「ちょっと良いか?」


「ん? ああ、お前達はさっきの。何か忘れ物でもしたのか?」


「忘れ物ではないんだ。さっきな、ボス部屋に入った時にボスが居なくてな、代わりに人が居たんだ。あれはどういうことなのか、それを知りたいんだ」


 衛兵は少し驚いた表情をしたが、すぐに返事を返してきた。


「それは、運が悪かったな。たぶんバグにあったんだろう」


「バグ?」


「ああ。何でも、昔はそういった事が頻繁に起きていたと、話を聞いたことがある。ただ、最近では聞かない話だったんだがな」


 俺は首を捻った。


(バグか…。どういう理屈なんだ? これだけじゃ分からないな)


 俺が悩んでいると、衛兵は話を続ける。


「すまないが、この事を大佐の居るテントまで報告に行ってもらっても良いか?」


 俺は少しむっとするが、


「大佐?」


「ああ、ガルマ・ザク大佐だ。会うことはできないと思うが、そこでこの5層の管理をやっているんだ。それに、そこに行けば俺よりも詳しくさっきの話を聞けると思うぞ」


(が、ガルマだと!? あれか!? あれだよな!? それは是非、会いに行かなければ!)


 俺は両手で衛兵の肩を鷲掴みにし、早口で尋ねる。


「そのテントはどこにあるんだ!?」


「あ、あそこに見える大きな二つのテントだ。あとは向こうで話を聞いてもらえるか?」


「わかった。ありがとう。すぐに向かう」


 俺は急いで皆のところへ戻った。



 ◇



「どうしたの?」


 モモが俺の顔を見ながら首を傾げた。


「今回の事件の事を、ここの管理をしている人に報告をしてほしいって言われたよ」


「あ~。そこに会いたい人が居るんだ~」


 モモはにやけた顔をする。


(モモめ、俺の様子に気付いて、心を読んだな…。まあ、今は話が早くて助かるが)


「面白そうだろ?」


「そうだね!」


 先程まで、モモは落ち込んだ様子を見せていたが、今の出来事で少し気分が晴れた様子だった。


「会いたい人って何?」


「ルーティはここに知り合いが居るの?」


 シルフィーとリリーが興味深そうに俺の顔を見た。


「まあ、それは秘密だ。それに、まだ会えるかもわからないしな。とりあえず、報告とやらに行ってみるぞ」


 まだ少し、モモ以外は元気がない様子だったが、報告には同行してくれた。





 少し離れた場所にあった大きな二つのテントの近くに俺達は辿り着く。ここには門番のような衛兵が二人立っているので、一応、声を掛けることにした。


「おはよう」


「おはよう。冒険者か。何の用だ?」


「さっきボス部屋に入ったら、他の冒険者らしき人と鉢合わせになってな。それで向こうの衛兵に話をしたら、ここに来るように言われたんだ」


「そうか。それなら右側の大きなテントへ行ってくれ。そこで詳しくもう一度話をしてくれるか?」


「わかった」


「それと、くれぐれも左のテントには近づくなよ」


(む!? あっちに奴が居るのか?)


 俺の第六感が反応したが、一応確認を取る。


「何でだ?」


「あちらには大佐が居られる。大佐の手を煩わせる訳にはいかないからな」


「わかった…」


(予想通りか。位置は確認したが、あとはどうやって大差を引きずり出すかだが…)


「お兄ちゃん。顔が悪い人になってるよ」


 モモが呆れた表情で俺を見ていた。


(しまった。顔に出ていたか。ここは、冷静にいかないとな)


 衛兵達が一瞬、怪しんだ視線を向けてきたが、俺はモモの頭を撫でることでその場をごまかして、奥のテントへと向かう。


 この場所には2つの大きなテントの他にも、いくつかのテントが設置されていた。詳しい事は分からないが、恐らく調理場や医療用など様々な設備のあるテントなのであろう。少し料理の美味しそうな香りなどが漂っている。


 右側の大きなテントの前に訪れると、ここにも衛兵が2人立っていたので俺は声を掛ける。


「門番からここに来るよう言われたんだが」


「そうか。何か問題が起きたのか?」


「ああ」


「それなら、まずは中に入ってくれ」


 俺達は言われたままに中へ入る。すると突然、


『ドン!』


「冒険者か! 今度は一体何だ!?」


 いきなり机を叩き、乱暴な口調で椅子に座っている男が叫んだ。


 その男は歳は若そうに見えたが、中年太りのような体系で冒険者には見えなかった。


(貴族なのか? ガラが悪そうだな…。まあこんな場所だ。こんなものなんだろう)


 テントの中にはこの男以外にも男性が4人と女性が2人、椅子やソファーに腰を下ろしている。俺は他の連中には構わずに威圧的な態度をとっている男に近づこうとするが、ふと、後ろから何やら俺を引っ張るものを感じた。


(ん? 何だ?)


 振り向くとリリーが俺の服を掴んで不安そうな表情を浮かべていた。そして他の皆も同じように、少し不安そうな顔をしている。


(ああ。皆はこういう場所に慣れてないのか)


 俺は日本でこういったガラの悪い連中のところへはよく行く羽目にあっていたのであまり気にはしなかったのだが、初めてこういった場所に訪れて皆は委縮してしまったのであろう。


「心配するな。相手は口が悪いだけだ。怖いなら外で待っていても良いぞ?」


 俺の言葉にリリーは顔を左右に振る。他の皆も少し引き締まった表情となり、どうやら付いて来る様子だ。なので、俺はそのまま叫んだ男の前まで進んだ。


「要件があるならさっさと言え!」


 男は苛立ちながらこちらを見ずに爪を噛んでいる。


(大丈夫かこいつ? でも、こいつに話をした方が良いんだよな?)


 他に居る衛兵達を見るが、視線を合わせようとはしてこなかった。


(仕方ないか…)


 俺は諦めて話をすることにした。


「さっきボス部屋に入ったんだがな、他の冒険者らしき人と鉢合わせになってな。その事を祭壇の前の衛兵に話をしたら、ここに来るように言われたんだ」


『ドン!』


「そんなことがあるのか!?」


 男は再び机を叩き、怒鳴りながらこちらを睨んできた。


(ちっ。使えん男か…)


 俺の視線は冷たいものへと変わる。


「珍しいの~。最近ではそんな報告はなかったんだがの~」


 右側に振り向くと、ソファーに腰を下ろしている老人が口髭を左右に撫でるように触っていた。


「爺さん、何か知ってるのか?」


「まあの。3年前の話になるがの。魔王が倒された後、そういう事が何回か報告をされておったよ」


 俺は眉間に皺を寄せた。


(魔王か。嫌な言葉が出てきたな…。今回の件と関係がなければ良いが…)


「爺さん。魔王ってどんな奴だったんだ?」


 俺はついでだったので、何となく魔王の事を尋ねた。


「わしも魔王には会ったことがないんでの。どんな奴かはわからんよ」


 老人はあっさりとした顔で笑った。


(そりゃそうか。こんなところに居る人達だ。魔王とは何の関係もない人達ばかりだろう)


「そうか。それで、報告はしたが、他に何か分からないのか? それと、こういったものには報酬は付くのか?」


 いきなり喧嘩腰に話しかけてくる奴の居るところなど、さっさと離れたかったので、俺は話を先に進めた。


「はっはっは! せっかちじゃの。とは言え、これ以上こちらも話せることはないからの。よっこらしょっと。報酬はこれじゃよ」


 老人は小さな皮袋を俺に手渡してきた。


「何かあれば、またいつでも来てくれの」


「来ない方が良いんだろ?」


「そうじゃの。はっはっは!」


(なかなか、肝の据わった爺さんだな。良い人だとは思うが、また会う事はないだろうな)


 少し名残惜しいが、この場の嫌な雰囲気を和らげてくれた老人に感謝をした。


「じゃ、爺さん。またな」


「ああ。ボスの討伐、がんばるんじゃぞ!」


 こうして、俺達はこのテントを去ることになった。




☆を付けていただけると嬉しいです。

ブックマーク登録もして頂きたいです。

やる気が出るのでよろしくお願いします!


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