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スキルマスター  作者: とわ
第三章 エルフヘイム編

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65.マラソン


「どう? お兄ちゃん」


「ああ。だいぶ楽になったよ」


 俺は今、モモに回復魔法をかけてもらっている。


「それにしても、あの攻撃はかなり痛かったが、あの魔法は何だったんだ?」


「たぶんサンダーの魔法だと思うよ」


 リリーが俺に近づいてきた。


「あれがサンダーか。威力も凄かったし、体が硬直したぞ」


 サンダーは雷魔法の一つで、風魔法と水魔法を覚えた者が扱える魔法だ。まだ俺達のパーティーで雷魔法を使える者はいない。


「すまなかった。俺がもっと早くに気が付いていれば…」


「気にすることはないさ。あれは俺の役目だ。それよりも、皆に被害が出なくて良かったよ」


「そうね。ルーティは丈夫だから、あのくらい平気よ。気にしなくても良いわよ」


 アイラがロンドにそう告げた。


(この女神…。今度本当にくすぐりの刑にしてやろうか…)


 俺は初めて女神に会った時の、雑な感じだったのを思い出した。


「まあ、そういう事だ。それに、あんなふうにモンスターが現れるとは思ってなかったからな。お互い次からは気を付けようぜ」


 雲のモンスターは、その辺に浮いている雲が集まってモンスターになったのだ。知っていなければあれは気付けないことであろう。


「この後どうするの?」


 リリーが皆を見回す。


「場所を変えた方が良さそうだな」


 俺は先程の雲のモンスターの魔法の威力を考えて、皆に提案した。


「そうね。雲があまりないところで、モンスターと戦った方が良さそうね」


 アイラも首を縦に動かす。


「下の方に行くってこと?」


「それが無難だろ」


 モモが皆に尋ねると、ロンドが答えを出した。


 他に手がない訳ではなかった。雲のモンスターの魔法は、俺が盾でぶつかっただけで止める事ができていた。剣で突いた時も、何か柔らかい綿のような物を突いた感触だったので、魔法を中断させながら倒すということも恐らくできるのであろう。ただ、先程の魔法攻撃を連続で何発も受け続けられるかは疑問が残った。


「慣れるまでは下の方で適当にモンスターを倒して、余裕ができたらまたリベンジしよう」


「「「「分かった」」」」


「リベンジ…」


 アイラがリベンジという言葉に反応を示した。


(そう言えば、アナコンダの時のリベンジはやってなかったな…。また変なことを考えなければ良いが…)


 俺は少し不安になった。



 ◇



 それから俺達は街道を道なりに進み山を下りて行くことにした。とはいえ、この4層はずっと高地が続いている様子で、山のふもとというものが存在しないように思えた。恐らくずっと山を下りて行ったとしても、ダンジョンの壁にぶつかる。そんな感じに見えていた。


 ある程度山を下ったところで、先ほど戦ったトリコネスパイダーの群れを発見する。


「居たよ」


「ああ。20匹ぐらいか?」


「21匹ね」


 アイラは正確に数を数えていたようだ。


「足が気持ち悪い…」


「そうか? 奇麗じゃないか?」


「「「「…」」」」


 モモの言葉に返事を返すと、何故かモモ達がこちらに注目した。


(蜘蛛ってそんなに嫌いなのか?)


「奇麗ー!」


 シルフィーは目を輝かせた。どうやらシルフィーには分かったもらえたようだ。


(シルフィーは俺と気が合うのかもしれないな)


「この辺りを中心にして始めるか」


「「「「おー!」」」」


「わかった」


 俺達は作戦の打ち合わせを行った後、トリコネスパイダーとの戦闘を始めた。





 今回はモンスターの数も多く、トリコネスパイダーは一撃では倒せないので、フォーメーションを組んで戦うことにする。


 俺とリリーとアイラで1つのチームを組んでトリコネスパーダ―を倒していき、モモとロンドは遊撃部隊とした。基本的には俺が相手をしているモンスターを集中攻撃で倒するのだが、他のモンスターがリンクをした場合、一時的にモモとロンドでそのリンクをしたモンスターの相手をしてもらう。そいうスタイルにしてみた。


 それと、戦闘ではなるべく1匹ずつを相手にしたいので、初手の攻撃は遠距離からの魔法攻撃で順番に釣って行くことにした。


「それじゃ、頼む」


「任せて」


【ストーンショット】


 初手はリリーの魔法から始まった。


『ガン!』


 尖った石の塊がトリコネスパイダーに命中した。すると、そのトリコネスパイダーがこちら近づいてくる。スピードはそれほど速くはないようだ。


 続いて俺が前に出てスキルを使う。


【タウント】


 リリーの方へと向かっていたトリコネスパイダーは、俺の方へと進路を変えた。そして初めはお互い立ち止まっての睨み合いとなった。が、俺は目のやり場に困った。


(目がいっぱいある…。8個で良いのか)


 思わずその目の数を数えてしまっていると、トリコネスパーダ―が長い前足を上に上げて、俺を串刺しにするように攻撃を仕掛けてきた。


 俺はそれを横へひらりと躱して、お返しに剣で別の足に攻撃をする。


『ガン!』


 トリコネスパイダーの足に切り傷を付けることはできたが、切り飛ばすことはできなかった。


(やっぱり関節を狙わないとダメだな)


 この間にモモとロンドは横へ回り攻撃を始める。


 モモは足の関節を切り裂き、ロンドは胴体を槍で突き刺して攻撃している。ここで俺はもう一度スキルを使う。


【タウント】


 トリコネスパイダーはしっかりと俺の方を向いていたのだが、一応保険を掛けておいた。そのタイミングで、今度はリリーとアイラの魔法が放たれる。


【ファイアボール】


【サイクロン】


 二人の連携魔法だ。その威力にロンドが驚いている。


 トリコネスパイダーは火に弱いようで、そのまま霧となって消滅した。そして後ろを振り向くと、リリーとアイラとシルフィーがハイタッチを決めていた。


「今のはひょっとして連携魔法だったのか?」


 ロンドが俺に尋ねる。


「ああ。俺達は連携魔法が使えるんだ」


「そのレベルで使えるのか。凄いものだな」


 ロンドが感心しているが、今はそんな余裕はなかった。


「話は後だ。次が来るぞ」


 俺達の戦闘に気が付いた3匹のトリコネスパイダーが、こちらにゆっくりと近づいて来ている。





(あれは1匹ずつは無理だな)


 3匹のお互いの距離は接近していた。


「3匹だけなら俺が引き付ける。他が来た時は二人とも頼む」


 俺は時間が惜しかったので、話しながら右手を前にかざし魔力を溜めて魔法を放つ。


【アイスニードル】


 先の尖った氷の塊がトリコネスパイダーを襲う。


『ブス!』


 中央のトリコネスパイダーにアイスニードルが突き刺さった。


(さっきのストーンショットは刺さらなかったのに、アイスニードルが刺さったってことは、火と水属性にも弱いのか?)


 3匹のトリコネスパイダーは憤怒したかのように勢いよくこちらに向かってきた。


「右のやつから頼む」


 俺は2人の前に出て3匹が十分に近づいたところでもう一度スキルを使う。


【タウント】


 上手くタウントの範囲内に捉えることができたようで、3匹のトリコネスパイダーが俺の目の前で立ち止まった。


(無理をする必要はないからな。とにかく時間を稼ごう)


 俺はトリコネスパイダーの攻撃を凌ぐことにした。前足での攻撃を横へ避け、盾で受け流し、また横へと躱す。俺は立ち止まっている暇がなかった。


 この隙にモモとロンドも攻撃を開始する。そして先程と同じように、リリーとアイラの魔法が放たれて、一匹のトリコネスパイダーが霧となって消滅した。


 続けてもう一匹を倒すと、今度は奥の方から別のトリコネスパイダーが数匹、こちらに近づいてくるのが見えた。


(まずいか?)


 この瞬間、モモが声を上げる。


「任せて!」


 モモが俺の考えを読んだようで、こちらに向かって来ようとしているトリコネスパイダーに駆け寄った。そして、トリコネスパイダーに一撃、攻撃を加えてから俺の方へと走りながら戻って来る。


 モモが俺の横を通り過ぎる時、俺は声を掛けた。


「マラソン頑張れ!」


「行ってくるよ!」


 モモが今やろうとしていることは、ゲームで言うところのマラソンだった。モンスターがリンクして数が多すぎる時に、足の速いプレイヤーがしばらくの間モンスターを引き付けて走り回る。そしてその間に他のプレイヤーが1匹ずつモンスターを倒していくというやつだ。


「こっちもペースを上げていくぞ!」


「「「「おーーー!」」」」


 モモを追いかけているコリコネスパイダーの数は5匹だったので、俺はトリコネスパーダ―が俺達の横を通り過ぎるタイミングでスキルを使う。


【グランドスマッシュ】


 衝撃波が扇状に広がっていく。そして、俺の横を通り過ぎようとしていたトリコネスパイダーにその衝撃波がぶつかり、2匹をこちらに足止めすることができた。


(これで、こっちに3匹、モモにも3匹か。急ぎたいところだが、ここは焦らずにいこう)


 こうして、モンスターの数が多すぎる場合は、モモかロンドがマラソンを行い時間を稼ぎ、その間に俺達がモンスターを一匹ずつ処理していった。


 トリコネスパイダーは足が遅かったのでこの戦法が効果的にハマり、この後も順調に狩りを続けることができた。




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