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スキルマスター  作者: とわ
第三章 エルフヘイム編
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64.モフモフ


 俺達はキャンプ場を離れ、今は高原の中を歩いている。4層も街道を進めば5層へ辿り着けるそうなのだが、今回は狩りが目的なのでそちらには向かわなかった。


 そして、今回の俺達の歩くペースは遅かった。何故なら、景色が奇麗だったからだ。


 この場所は地面に生えている植物も背が低いものばかりで見通しが良く、所々に岩が地面に埋まっているのだが、ついつい、座って休憩を取りたくなってしまう、そんな場所だった。


(ここは、俺にとってはパラダイスだな!)


 以前のパラダイスな場所を思い出しながら、俺はゆっくりと歩みを進めた。





「凄いね! 雲が下に見えるよ! 不思議ー」


 シルフィーが先行して前を飛び回っている。


「シルフィーは飛べるのに、高いところには来たことは無かったのか?」


「高いところは風が強いから、行けないんだよー」


(ふむ。風には逆らえないってことか)


 他のメンバーを見ると、アイラ以外は何やらはしゃいでいるように見えた。


(皆、高原に来たことがないんだな)


 俺が暖かく見守っていると、


「何か居るよー」


 シルフィーが額に手を当てて遠くを眺めている。


 距離があるのではっきりとは分からないが、下の方に見える雲の中に何やら黒い物が動いている。


「モンスターじゃないのか?」


「それっぽーい」


 そう話しながら、シルフィーがそちらの方へ飛んで行ってしまった。


「危ないぞ!」


「平気平気」


 俺は心配だったのでロンドに尋ねる。


「大丈夫なのか?」


「大丈夫だ。それに、いつもあんな感じだ」


(ふむ。いつも通りならまあ良いか。それでも、ついて行かないといけないよな)


 俺達はシルフィーの飛んで行った方向へ進むことにした。




 黒いものに近づいて行くと、それは蜘蛛のモンスターだった。今までに出会った蜘蛛は足が短いタイプだったが、ここの蜘蛛は足の長いものだった。


(あれはジョロウグモみたいだな。足の黒と黄色がお洒落だ)


 俺は鑑定でモンスターを調べてみる。


ーーーーーーー


トリコネスパイダー LV20


ーーーーーーー


「トリコネスパーダ―って名前みたいだぞ」


「ふーん」


 俺の言葉に、皆の反応は薄かった。


(朝だからな。こんな景色だし、まだ皆ボケてるのだろう)


「しっかりしろよ。あれはモンスターなんだぞ。油断しないように」


 皆はハッとした表情をし、慌てて武器を取り出した。


「ゆ、油断などしてないさ」


 ロンドが慌ててごまかそうとしていた。


 トリコネスパイダーは数匹見えている。普段は俺が試しに1匹と戦ってから戦闘を始めるのだが、今回はシルフィーが先に先行してしまい、既にトリコネスパイダー達はこちらに気付いていた。


「俺とモモとロンドで前に出て、一気に倒すか?」


「オッケー」


「わかった」


 2人は軽く頷いた。


「リリーとアイラは援護を頼む」


「わかったよ」


「任せて」


 こうして、俺達の戦闘は始まった。





 トリコネスパイダーは目に見える範囲に数匹居るが、1匹1匹の距離は少し離れていた。なので、手前から順番に倒していくことにした。


【タウント】


 俺はスキルを使った。これはいつも通りだ。


 トリコネスパイダーはその長い脚で串刺しにしようと攻撃を仕掛けてくる。


 俺は構えた盾を斜めにして、その攻撃を受け流しながら前に踏み込み、顔に攻撃を仕掛けた。


『ガン!』


 少し鈍い音がしたが、俺の剣はトリコネスパイダーの顔に傷をつけることができた。


(少し硬いが、何とかなる硬さだな)


 もの凄く硬いといこともなく、キノコの時のような癖のある手応えという訳でもなかった。普通の戦闘で倒せる、そんな手応えだ。


 モモはいつも通りモンスターの背後から攻撃をしている。時々、尻から糸を吐きだしているようで、白いロープのような太さの蜘蛛の糸が見えてる。捕まったら大変そうだったが、モモはその糸をレイピアで切り裂いていた。


 レイピアに糸がくっついてしまわないのかと思ったのだが、水晶の効果であろう。多少レイピアに絡みついた糸も、溶けるようにして地面に落ちていく。属性効果の付いた水晶はやはり馬鹿にならないようだ。


 ロンドはトリコネスパイダーの横から槍で攻撃をしている。槍は両手で持つタイプでリーチが長かった。トリコネスパイダーが足をバタバタとさせて動き回っているのだが、その足の外側から突きを繰り出している。リーチの長い武器はやはり扱い易そうだった。


 そうこうしている間に、徐々にトリコネスパイダーは弱っていき、動きを鈍くしていく。


(特に問題なく倒せそうだな)


 そんな折、リリーとアイラの声が届いた。


「くもよ、くも!」


「囲まれる!」


 俺達3人はその声に気付いたが、理解はしていなかった。


 シルフィーも慌ててロンドに近寄る。


「ロンド! くもに囲まれてるよ! 急いで離れなきゃ!」


「蜘蛛は向こうだろ。こいつを倒してからで十分だ」


「そうじゃないよ!くもだよ、くも!」


「危ないから離れていろ。すぐに終わらせる」


 ロンドは冷静に見えた。


 そして未だリリーとアイラが騒ぎ立てている。


「くも! くも!」


「ロンド! 後ろ! 後ろ!」


 その声で俺とモモは気が付いた。


(何だこれは。こんなことがあり得るのか!?)


 ロンドの槍と腰の辺りに雲がまとわりつき、槍が白鳥の頭に、そして腰周りの雲が羽となって、まるで、志村けんが白鳥を見に纏ったような姿となった。


 元。そちらではなかった。





 この戦場の周りには白い薄い雲が漂っていたのだが、この雲はただの雲ではなかった。


 初めは薄っすらとしたものであったが次第にそれが集まり始め、3つの塊のモフモフになるとそこに顔が現れた。


(ドラクエで言うところのギズモ!? そんな感じのものか!?)


 その雲達はロンドを睨みつけながら、体をフルフルと震わせ始めた。


(まずい! あの動きは知ってる。魔法攻撃だ!)


 俺は咄嗟にスキルを使って雲のモンスターへと突っ込む。


【突進】


 突進は通常の1,5倍の速さで移動することができ、そのまま攻撃にも繋げられるスキルだ。


 俺はすかさず1匹にそのまま盾でぶつかり魔法の詠唱止め、2匹目は剣で突き刺して魔法の詠唱を止めた。


(あと1匹!)


 俺は最速で攻撃を当てるためにそのまま剣を引き腕のみで突きを放とうとするが、その瞬間雲のモンスターと目が合う。そして、


『バチン!』


 突然、何かが弾けるような音がして体に激痛が走る。


「くっ、はっ」


 雲のモンスターが光ったと思った瞬間に体に電気が走ったような、そんな感覚がした。


(痛ってー。何だ今のは? しびれたのか? 電気マッサージを強くし過ぎたどころの痛みじゃないぞ! …しかも、体が言うことを聞かない!?)


 俺は盾を支えにして、倒れるのをなんとか防いだ。


 雲のモンスター達は体をゆらゆらと左右に揺らしながら、こちらを嘲笑っているかようだった。


 俺はちょっとイラっとした。


【チャージ】


 今度は体を上下に動かし、まるでジャンプをしながら喜んでいるようだった。


【チャージ】


 更に、3匹揃ってくるりんぱと、まるでダンスを踊っているかのようだった。


(ダチョウ倶楽部みたいな顔をしやがって。もう許さん! 吹っ飛べ!!!)


【グランドスマッシュ!】


『ドゴン!!!』


 津波の様な衝撃波が扇状に広がって行く。チャージの2回の重ね掛けで威力を増したグランドスマッシュは、3匹の雲のモンスターを吹き飛ばすようにして掻き消した。


 残ったトリコネスパイダーも、モモとロンドで止めを刺していた。


 俺は雲のモンスターの魔法攻撃と、自分で使ったチャージスキルのせいで、その場に片膝を突いてしまう。


(チャージの2度掛けで腕の筋が何本か切れたな…。だが、骨は折れなかったな。これなら3、4数発は続けて使えそうか?)


 俺は自分の腕を触りながら、ダメージを確認する。


(それにしても、物理攻撃が効かないモンスターって、実はこいつらのことだったのか? くものモンスターに注意するようにって、蜘蛛と雲だったのか。これはやられたな…)


 戦闘が終わったので、俺達はこの場から少し離れて休むことにした。





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