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スキルマスター  作者: とわ
第三章 エルフヘイム編
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61.緑青鉱石と青金石


 俺達はいつものようにサンガを張った。そして、ドラム缶風呂を取り出してお湯を沸かすことにする。そこへ、ロンドとシルフィーが近づいて来た。


「何をやってるんだ?」


「これか。これは風呂だ」


「風呂なのか!?」


「嘘!? これがお風呂なの?」


 2人はかなり驚いている。


「こういう物はエルフヘルムにも無いのか?」


「聞いた事も無いな。そもそも、野宿をする時に風呂など入らないからな」


 やはり、この世界では風呂はそれほど重要視されていないようだ。


「せっかくだ。1番風呂はロンドが入ってくれ。それと、野宿のことを俺達はキャンプって言ってるんだ」


「キャンプか。そう言うならそれに従おう。それと、入ってくれと言われても、どうやって入るんだ?」


 俺がロンドとシルフィーに風呂の入り方を教えると、


「一番風呂~」


 シルフィーが辺りを飛び回り喜んだ。





 俺は風呂を沸かしている間に食事の準備をする。


 材料を取り出して準備をしていると、今度はアイラがやってきた。


「今晩は何にするの?」


「ロンド達を迎えての初めてのキャンプだからな。焼肉にしようと思う」


「良いわね。キノコ料理も少し飽きてきてたし」


「キノコもあるぞ」


 両手にとってキノコのアピールをする。


「私はお肉で良いわ」


 アイラは肉食系だった。


「ちょっと離れてろ」


 今から行うことは少し危険だったので、アイラに距離を取ってもらう。そして右手に包丁、左手に肉を掴んでスキルを発動させる。


【ソードダンス】


 高速の包丁が肉の塊をスライスする。そしてすぐに左手に皿を持ち、スライスされた肉を載せていく。


「どうだ!」


 俺はどや顔でアイラを見た。


「はあ~。そんなところでスキルを使わないでよ。しかもソードダンスって…」


「何を言う。これは大事な事なんだぞ! 肉を切る時は素早く切らないと奇麗なスライスにはならない。しかも、ソードダンスの練習にもなるんだ。一石二鳥じゃないか!」


 俺はアイラに熱く語った。


「ここでスキルの練習をしていたのね。わかったわ。肉はお願いね。私は他の物を用意するわ」


 素っ気ない返事が返ってきた。


 肉を切るのにも技術が必要だ。ギコギコとのこぎりのように切っていては、肉を奇麗に切ることはできない。肉を切る時は、包丁で、一度で、一気に切り落とさなければならない。そうしなければ肉を切った時の断面が凸凹になってしまい、食べた時の食感が悪くなる。そして、均等の厚みで何枚も切り続けるという行為は、感の悪い人だとなかなかできない事なのだ。


(ソードダンスは薄切りから、焼き肉用、ステーキ用と奇麗に切り分けることができる。とても便利なスキルなのに、わかってもらえないとは…)


 納得がいかなかったが、俺はその後も肉を切り続けた。





 ロンドが風呂に入ったようなので、俺はの様子を見に行くことにした。


「風呂はどうだ?」


「良いものだな。これは冒険者に人気が出そうだ」


 ロンドは湯船に浸かりながら顔を洗い寛いでいた。


「それは良かった。ところでシルフィーはどこへ行ったんだ?」


「ここだよー」


 ふわふわと飛びながらシルフィーが現れた。


「一緒に入らないのか?」


 俺の問いに、何やらロンドが慌て始める。


「バ、バカ。シルフィーは女だぞ!」


「ええ!? そ、そうなのか!?」


「ぼくはレディーだよ! 一緒にお風呂に入るなんて…、淑女のたしなみがあるんだよ…」


 シルフィーが体をくねらせて頬を赤く染めた。


 俺はここで衝撃の事実を知ってしまった。シルフィーは、なんと女性だったのだ。てっきり性別は無いものかと思っていたので、かなり驚いた。


「子、今度、色々教えてくれ」


 俺は子供は作れるのか? と言いかけたが止めることにした。何か、それを聞いてしまうと、今までのすべてが崩壊するような、そんな気がしたからだ。


「良いよ。何でも聞いて!」


 シルフィーは胸を張ってどや顔をしていた。俺は何となく居づらくなったので、その場を離れることにした。


(淑女なのに風呂は覗くのか…。まあそれは良いとして、世の中には知らない方が幸せになれるという事もあるからな…)


 その夜、俺は焼肉を腹いっぱい食べ、ゆっくり休むことにした。



 ◇



 翌日。


 今日からは本格的に鉱石を集める。緑青鉱石15個と青金石4個だ。皆で手分けして採掘を行えば、今日中に終わるかもしれない。


 鉱石を探すのも以前に銅鉱石の採集を行っているので、皆やり方は分かっている。ロンドもやり方は大丈夫という話だった。


 俺達は円筒状の鉱山から横に伸びる坑道を進んだ。坑道はそれほど奥まで続いている訳では無く、すぐに行き止まりとなった。


「この辺りを調べてみるか?」


「行き止まりだしね」


【サーチ】


 俺達は魔法で辺りを調べた。すると、いくつかそれらしき場所を見つけることができた。なので、俺はロンドとリリーに声を掛けた。


「見張りは頼むな」


「任せて」


「分かった」


 今回は採掘をするチームと、アースワームを倒すチームの二手に別れることにした。


 アースワームは目視ではなかなか見つけづらい。地面に顔を出す時は音がするので分かるのだが、採掘中にそれを聞き分けるのは難しかった。なので、それぞれの作業を順番に交代をしながら採掘をすることにした。


 作業は順調に進んだ。だが、1か所から緑青鉱石と青金石を採掘できる確率はなかなかに低かった。なので、いくつか同じような坑道があったのでそちらにも回り、無事に鉱石を集めることができた。


 一度だけ、採掘をしているその場にアースワームが現れたが、魔法が少し強い程度のモンスターだったので、特に問題は起きなかった。


 アースワームのチームの方も、たまにしかアースワームが現れなかったので暇だった。


 鉱石を1日で集めることが出来たので、俺達はその日の内に帰還のスクロールを使って、エルフヘイムに帰ることができた。



 ◇◇



「おつかれ~」


「「「「お疲れ様」」」」


「おつかれ」


「早く終わって良かったな」


「鉱石だからもっと時間がかかるかと思ってたわ」


「残りは、ソフトレザー15枚と普通の水晶が4000個だな。ソフトレザーは買うとして、問題は水晶だな」


「4000個って多いよね。どうするの?」


 普通の水晶は相場にもよるが、1つ銀貨2枚で売っている。買取価格より売っている値段の方が高いのは当然なのだが、4000個買うとなると銀貨8000枚だ。大金貨にすると80枚になる。この間のエルフの件で白金貨1枚手に入れているので買う事はできる。


「買う事もできるが、大金貨80枚ぐらい掛かる。どうしたい?」


「「「「「ん~」」」」」


 皆、悩んでいる。


「悩むぐらいなら、アクアンシズに戻ってまたダンジョンへ潜らないか?」


「その方が良いかしら」


「装備もまだ買わないといけないしね」


「レベルも上がっていないから、一度戻っても良いかも」


 モモ達はアクアンシズに戻ることに賛成した。


「ロンドはどうだ?」


「アクアンシズか。行ったことがないから何とも言えない」


「アクアンシズ。行ってみたーい!」


 ロンドは横を向き、シルフィーは大きく手を上げた。


(ロンドはアクアンシズに行くのは初めてなのか。シルフィーはアクアンシズに行ってみたそうだな)


「それなら、一度アクアンシズに行ってみるか。帰還のスクロールもあるから、すぐに行って戻ってこれるしな」


「「えーーーーー」」


 突然、モモとリリーから反対の声が上がった。


「飛空艇に乗りたい!」


「乗りたーい!」


 モモとリリーは両脇にグッと腕を曲げて構えた。


「乗っても良いが、時間も金も掛かるぞ?」


「ぼくも飛空艇に乗りたーい!」


 シルフィーもモモ達と同じポーズを取った。


(我儘を言う子が3人か…。1人増えて新鮮だが、これはちょっとな…)


 俺は困ったのでロンドの意見を伺おうとそちらを向く。


 すると、ロンドは少しそわそわした感じになっていた。


(ロンドも飛空艇に乗りたいのか…)


「よし! じゃー、飛空艇に乗って行くか!」


「「「「やったー!」」」」


 アイラもちゃっかり喜んでいた。ロンドの顔も少し綻んでいる。


(空の旅も良いものだったからな~。実は俺も乗りたかったというのは秘密にしておこう)


 モモがニコニコしながらこちらに近づいて来たが、頭を撫でてその場を収めた。




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