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スキルマスター  作者: とわ
第三章 エルフヘイム編

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59.キノコの山


 ギルドマスターと話をした日から2日が過ぎた。


 俺達は馬車を作るために必要なトレントの材料が揃ったので、今度は鉱石を集めることにした。そして今はギルドの酒場の方で打ち合わせを行っている。


 鉱石は武器屋のおやじからの情報で、この街の近くにある鉱山で採集ができるという話だったので、俺はロンドに尋ねた。


「鉱山はどうやって行くんだ?」


「鉱山はキノコの山を抜けて行くことになる。だから移動で1日掛かるぞ」


(移動で1日か。近いような、遠いような…。1日なら近い方か)


 俺があれこれ考えていると、モモが首を傾げた。


「キノコの山?」


「ああ。飛空艇乗り場の更に北の奥へ進んだところに、キノコの山がある」


「へ~、面白そうね。どんな場所なの?」


 ロンドが腕を組みながら説明をすると、珍しくアイラが興味を示した。


「文字通り、沢山のキノコとキノコのモンスターが居る場所だ」


「そのキノコは美味しいの?」


「もう、リリーったら~。はあ~」


 リリーが変な事を言うので、アイラが深くため息をついた。


 俺もこの話は武器屋のおやじからこの話は聞いていた。今までキノコのモンスターに出会う機会がなかったが、それは俺達がずっと街の南側で狩りをしていたからだ。


(キノコの傘がチョコレートのモンスターだと良いな~)


「はあ~」


 俺の隣のモモが深くため息をついた。


(おっと。リリーと同レベルになってしまった)


 思わずリリーの方を見ると、何処から用意したのか、お菓子を食べていた。そして、何か足りないと感じていたが、シルフィーもリリーの肩に乗ってお菓子を食べていた。


「キノコのモンスターはトレントよりも強いのか?」


「いや、そこまでは強くないが、特殊な攻撃をしてくる」


「特殊な攻撃?」


 ロンドの答えに今度はリリーが首を傾げた。


「甘い息を吐いてこちらを眠らせたり、胞子を飛ばして毒の攻撃をしてくる奴らがいる」


(なるほど。特殊効果のあるモンスターか。今までに戦ったことのないタイプだな)


 この後、ロンドに鉱山についての話も聞き、明日はその準備を行い、明後日、鉱山へ向かうことになった。



 ◇



 鉱山へ向かう日の朝、俺達はギルドに集合した。


 キノコと言えば、この街ではよく食べられている食材だ。以前、クエストを確認した時に常駐クエストでキノコ採集のクエストがあったので、今回はそのクエストを受けてから鉱山へ出発した。


「ロンドはソロだったんだろ。キノコの山は一人でも大丈夫だったのか?」


 俺はふと、疑問に思ったのでロンドに尋ねた。


「一人なら木の上を通って行けば鉱山に辿り着ける」


(なるほど。流石はエルフと言ったとことか)


 そんな感じで雑談を交わしながら進んで行くと、周りの景色が変わり始める。


 この光景は、人によってはこう叫ぶであろう。


 ここはパラダイスだ!





「おっきいね~」


「沢山生えてる~」


「カラフルね~」


「不思議な世界だな~」


 モモを始めとして、各自の感想が口からこぼれた。


 この場所にはキノコが至る所に生えていた。シイタケのような見たことのあるようなものから、よく分からない形のものまで、様々な形がある。色も赤、青、黄色、紫とバリエーション豊かとなっている。そして、それに付け加えて、キノコの大きさもバリエーション豊かだった。エルフヘイムのキノコの家と同等の物から人の大きさぐらいの物、そして、スーパーで見かけるような小さなの物まで様々だ。


「でも、薄暗いわね」


 アイラが呟いた。


 トレント狩りをしていた場所は、森の中ではあったが日差しの入る場所だった。だがここは、日差しが遮られ薄暗い場所となっている。日本でいうところの、誰も手入れをしなくなった山、そんな感じだった。だが、木の大きさはトレントの居た森と同じ大きさだ。


「少し肌寒くも感じるな」


(そういえばこの世界でもそろそろ秋が近かったな。マツタケのような高級食材もあるのだろうか?)


 そんなことを考えながら、俺は辺りを警戒しながら進んだ。すると見慣れた1本のキノコを見つけた。世界樹の近くで見たキノコの精霊、そのキノコだった。


 ぱっと見、他のキノコと同じように動かなかったので、何も知らなければそのまま近づいてしまっていたであろう。


 キノコの精霊は街の外ではモンスターとなっているので、うかつに近づいてはならない。


「どうする? 倒してみるか?」


 俺は皆に声を掛けた。


「一度、戦っておいた方が良いわね」


「ルーティとモモは気を付けろよ」


「ああ、分かってる」


「うん。気を付ける」


「頑張ってね」


「ぼくも応援するよー!」


 俺達は初めてのキノコ戦を迎えた。





 先制攻撃で俺はキノコを上段から切りつけた。一見、柔らかそうに見えたキノコの精霊だったが、少し切り裂いたところで剣が止まってしまう。まるでスポンジのような、何か力を吸収された、そんな感じの手ごたえだった。


 その攻撃で、じっとしていたキノコの精霊は立ち上がった。


(デカいな。キノコの家よりは少し小さいが)


 そのキノコの精霊は手が長く、足は短かった。世界樹の近くで会った木の精霊のような体系をしていたが、大きさはそれ以上だ。そして顔にある糸目だったものは、今は丸く大きく見開かれており、更にその下に口が現れた。


 今までは、キノコ独特の繊維の様な体表せいで分からなかったが、その口は頬の部分まで大きく裂けていた。そして人間の様な歯も見える。その歯もとても大きく、何でもかみ砕いてしまいそうな感じだった。


(噛みついて攻撃をしてくるのか?)


 一瞬、そんな考えが頭を過るが、その時、何やら甘い香りが漂いだした。


(これか!?)


 それはキノコの精霊の特殊攻撃で、甘い息だった。


 すぐに口を塞いで息を止めたが、少し吸い込んでしまう。俺は一瞬、頭がガクンと落ちた。


(まずい。寝落ちをする時のような感じだ)


 少し吸っただけだったのだが、いきなり睡魔が襲ってきた。意識がもうろうとして立っているのも辛い。そこへ、キノコの精霊の腕が迫って来る。


(避けれない!)


 俺はとっさに体を丸め、盾の陰に身を潜めた。


『ドン!』


 金属ではない何かが、ぶつかったような音がしたのと同時に、俺は吹っ飛ばされた。


(ハッ!)


 一気に目が覚めた。


(やばかった。いきなり寝落ちする感覚にまでなるとは思わなかった。徐々に眠くなるのかと思っていたから、これは予想外だ。もし顔を殴られていたら、やばかったかもしれない)


 盾で何とか受けたので良かったが、顔を直接殴られていたら首を痛めたかもしれない。それぐらいの威力の攻撃だった。


(次からは息を止めて近づいた方が良さそうだな)


 俺の事を見ていたモモは、口を閉じたまま攻撃を始めた。その攻撃はトレントの時よりもダメージを出しているように見えたが、やはりレイピアの刃がある程度のところまで食い込むと、そこで止まってしまっていた。


(トレントの時はぶった切る感じの方が良さそうに思えたが、こいつは切り裂く方が良いのかもしれない)


 俺は剣の振り方を変えて、スピードで切り裂くように剣を振った。先程は途中で剣が止まってしまったが、今度はきれいに振りぬくことができた。


(深くまでは切れないが、この方が良さそうだ)


 戦い方が少し分かったので、スキルも併せて攻撃を仕掛ける。


【トリプルスラッシュ】


 通常攻撃よりも早い3連撃がキノコの精霊を切り裂く。キノコの精霊の体の表面に見る見るうちに切り傷が増えていく。そして皆も攻撃を開始した。


【パワーショット】


【ストーンショット】


【ウィンドカッター】


 リリーはいつもと違い土魔法を使っている。何故ならキノコなのでトレントよりも燃えやすいからだ。焼きキノコにしても良かったのだが、トレントよりも弱いという事でこちらを使うように決めていた。


 パワーショットとストーンショットでキノコの体に穴が空いた。なかなかの威力だ。そして、ウィンドカッターでキノコの足が切り裂かれる。


 足を切られたせいでキノコの精霊は極端に動きが鈍くなった。そこへ皆で一斉に攻撃を集中させて、そのまま一気に倒し切ることに成功した。


「やるな~、アイラ」


「当然!」


 俺とアイラでハイタッチを決める。


 足へのウィンドカッターはなかなかのものだった。やはり相手の動きを鈍らせると戦闘が楽になる。そう実感できる戦いだった。





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