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スキルマスター  作者: とわ
第二章 アクアンシズ編

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48.もう一つの石


「何だ? ギガメスケルトンを倒したと言っていたが、2匹も倒したのか?」


「いや。これは別の場所で拾っただけだ。そっくりだったんでな。渡した方が良いと思ったんだが?」


 ジル・バジルの表情が先程とは違い、険しいものに変わっていく。


「別の場所だと?」


「ああ。これはアマのダンジョンの5層で拾ったんだ。同じ大きさだし、たぶん同じ物なんだろ?」


 ジル・バジルは顎をさすりながら、テーブルの上の2つの石に目を凝らす。


「ん~む。確かに、同じものに見えるな~」


 しばらく何かを考えるようにしてから、大きくソファーにもたれかかった。


「そうか…。これについては初めて聞く話だ。これを持っていたモンスターは見ていないのだな?」


「ああ。だが5層にはモンスターは居ないんだろ? そう聞いていたが…?」


「あそこにモンスターは居ないはずだ。管轄の違うダンジョンなので詳しくは分からないが、俺の記憶にもあそこにモンスターが現れたという事実はなかったはずだ」


 ジル・バジルは天井を見上げる。


(んん? 何やら話がきな臭くなってきたぞ。黙っておいた方が良かったか?)


 俺は横目でアイラの顔を窺う。元々はアイラが「ギルドに相談してみる?」と言い出したことだからだ。だが、アイラは横を向いて目線を合わせようとしなかった。


(後でくすぐりの刑にでもしておくか…)


「わかった。これも確認しておくとしよう。他にもまだあるなどとは言わないよな?」


「もうないよ」


 ジル・バジルは怪しむようにこちらを見るが、本当に何もないと分かったのか、椅子に座り直して何かを考え始めた。


(あまり、ここに長居はしない方が良いかもな)


 俺がジル・バジルの出方を探っていると、アイラが口を開いた。


「これの情報料はないのかしら?」


 俺は一瞬、度肝を抜かれた。


(ふっ。流石、ちゃっかりしてるな…。というか、忘れていたな)


 この世界ではモンスターの目撃情報は金になる。何故なら、大事になる前にモンスターが発見されればギルドでも助かるので、それなりの情報料が支払われるようになっていた。ましてや、今回は白金貨1枚が支払われるような情報と関連したものだ。こちらも当然、金を貰っても良い話であろう。


「そうだったな。少し待っていてくれ」


 ジル・バジルはそう話すと、もう一度ソフィアに目配せをする。するとソフィアはまた部屋から退出した。恐らく報酬を取りに向かったのであろう。


「お前達はまた3層へ行くつもりか?」


 ジル・バジルが話し掛けてきた。


「ああ、そのつもりだ」


「そうか。だが、それはできないな」


「どういうことだ?」


「今回の件の調査がすぐにでも始まるからな。そうなれば3層を始め、他の階層もしばらくは立ち入り禁止になるだろう」


 俺は驚いて少し身を引いた。


(立ち入り禁止にまでするのか。それに調査も入るのか…。だがそんなことをすれば…)


「立ち入り禁止にして、この街や冒険者達は困らないのか?」


「もう既に数回行っていることだ。これまでも特に問題は起きていない。冒険者達も調査の間は他のダンジョンへ行ってるようだしな」


(そうか。帰還のスクロールがあるからダンジョンもここにこだわらなければ、どこにでも行けるんだった。冒険者達がそれで困るという事にはならないのか)


 俺は少し視線を落とし、この世界での移動は簡単にできることを思い出した。そして再びジル・バジルに視線を戻す。


「調査期間はどれぐらいなんだ?」


「恐らく1か月程度だろう」


 俺は皆と顔を見合わせる。皆も少し戸惑っている様子だ。


(1か月か。長いな…。せっかく順調だったのに、予定を変えないといけないか…。これは後で皆と相談だな)


『コンコン』


 ここで扉をノックする音が聞こえ、ソフィアが戻ってきた。


 ソフィアは先程と同じように、革の袋を俺達に差し出したので中身を確認する。すると今回の報酬は白金貨2枚だった。


(これは嬉しい! だが、ここで顔に出すのはダメだろう)


 俺は心とは裏腹な表情を作る。が、


「大金よ!」


「白金貨が3枚になっちゃった!」


「白金貨なんて見たことなかったのに、こんな大金、どうしよう!?」


 皆は手を取り合い大いに喜んだ。


(…俺も素直に喜べば良かったか?)


 俺は皆の態度に恥ずかしさと羨ましさを覚え、苦笑いをする。





 話が終わったので俺達はギルドを後にした。なかなか感じの良いギルドマスターだったので、俺は少し安心した。領主と密着したドロドロなギルドだったらどうしようかと少し思っていたからだ。


「これから、どうするかだな」


「お金、いーぱい、もらえたしね!」


 モモが白金貨の入った革袋を手にして踊っている。


「アイラのおかげだな」


「アイラ、凄ーい!」


「当然よ!」


 リリーが褒めると、アイラは大きく胸を張った。


(流石、元女神だ。こういうところは年の功と言ったところか)


 突然、アイラが俺を見た。


「ルーティ、今、変なこと考えてない?」


「へ、変なことなんて考えてないさ。これからこの金をどうしようか、考えていただけさ」


 俺はしどろもどろになった。


(女神の力が戻ってないのに勘が鋭いな…。でも、そのうちアイラにも心を読まれるようになるんだろうな…。まあ気にしても仕方がないが、何か対抗策はあるのか?)


 この後、俺達は臨時収入が入ったので、夕飯は盛大に飲み明かすことにした。



 ◇



 翌日。


 俺達は今後の予定を立てるためにギルドに向う。そしてその道中、何故か大通りに人だかりができており賑わっていた。


「人が集まってるね」


 モモが額に手を当てて、背伸びをしながら眺めている。


「何かあったのかな?」


「ここからじゃ見えないわね~」


 リリーとアイラもきょろきょろと覗き見ようとするが、人が多いのでここからでは見えなかった。


「近くに行ってみるか」


 俺達は人だかりの方へ歩みを進めた。





『ザク、ザク、ザク、ザク』


 足並みを揃えた音が聞こえてくる。大通りまで出るとこの街の兵士達が、隊列を組んで行進していた。


「どこかに行くのかしら?」


 アイラがそう話すと、近くの人が話し掛けてくる。


「あれはこの街の兵士が、ダンジョンの調査に向かっているのさ」


(ああ、昨日言っていたあれか。随分と動きが早いんだな。一応は緊急事態という事か?)


 俺達が行進を眺めていると、近くの人は話を続けた。


「ダンジョンで珍しいお宝が見つかったらしくてな。他にも何かないか、1層から5層までを封鎖して調査するって話だぞ」


(なるほど。あれはお宝と言えばお宝か? それとも、こう説明しておけば一時的にダンジョンを封鎖しても、また再開をした時にはお宝の出るダンジョンということで逆に人気が出るっていう寸法か?)


 俺は適当に詮索をしてみた。まあ、これぐらいの事はよく聞く話であろう。


(それにしても、昨日の今日で動くとは。どこかの国よりよっぽど優秀なのかもしれないな。流石ザク家だ!)


 俺は改めてザクの偉大さを思い知らされた。



 ◇◇



 ギルドに訪れた俺達は、尋ねたいことがあったのでカウンターへと向かう。


「おはよう」


「おはようございます。あら、あなた達は昨日の…」


 カウンターにはソフィアが付いていた。


「随分早い調査なんだな」


「何かあってからでは遅いでしょ。素早く対応しなくちゃね」


 ソフィアは昨日は何もなかったかのような態度で、可愛くウインクした。


(流石はプロだ。きっと、こういう事にも慣れてるんだな…。おっと、今日はこれを聞きに来たんじゃなかった。さっさと用事を済ませよう)


 俺はソフィアに感心しつつも話を続けた。


「ちょっと教えて欲しいんだが」


「何かしら?」


「エルフの国に行こうと思うんだが、どうすれば良いんだ?」


「エルフの国ですか。それなら乗り合いの馬車か飛空艇が利用できますが、帰還のスクロールも売ってますよ」


 ソフィアはキョトンとした顔を見せた後、首を傾けた。


 移動については帰還のスクロールが1番楽だと思っていたが、せっかくなので今回は別の方法で移動することにしていた。


 そして、この世界には飛空艇というものがあった。本当はそれが目的だったのだが、一応他の方法も確認してみる。


「ちなみに、馬車だとどれぐらい時間が掛かるんだ?」


「馬車なら乗り継ぐことも考えると…、1か月以上は掛かると思います」


(1か月以上か。それはきついな。乗合馬車も風情があって良いんだが、前にここに来る時に乗った馬車は自由が利かなくて、かなり窮屈な旅だったからな…)


 後ろを振り向くと、皆も首を横に振っていた。


(馬車は止めだな)


「飛空艇だと、どれぐらいなんだ?」


「山を越えて行けるので、3日で到着しますよ」


(3日か。流石に早いな。山を越えて行けるならこっちの方が良いだろう)


 後ろを振り向くと、今度は皆、首を縦に振っていた。


(これに決まりだな)


「それなら飛空艇を頼みたいんだが」


「畏まりました。少々お待ちください」


 ソフィアは書類を取り出して何かを記入し始めた。


 飛空艇はギルドが管理を行っている。飛空艇の乗り場は勿論ここではないのだが、冒険者が他の街へ向かうのであれば、その街のギルドで街を出る手続きのついでに飛空艇の手続きも行うことができた。


「料金はお一人、大金貨10枚になります」


(結構高いな。だが、今の俺達には昨日の報酬の白金貨3枚がある。だからこの金額は余裕だ。ああ、金があるって素晴らしいな!)


 支払いと手続きを済ませると、ソフィアが続けて話しをした。


「ルーティさん達はエルフの国は初めてですよね?」


「ああ、初めてだよ」


「それなら、一つだけ気を付けてほしいことがあります」


 ソフィアは指を一本立てながら、真剣な表情を見せた。


「エルフの国は閉鎖的でプライドの高い人が多いんです。今は魔王が倒されてまだ間もないのでその時の交流が残っていますが、昔は交流も殆どなくて、友好的ではない人が多くいました。今でもその名残があるので、その辺りは注意してください」


(この世界のエルフはプライドが高いのか。一応、気にしておこう。それに、そう向こうに長くいるつもりもないから大丈夫だろう)


「わかった。気を付けるよ」


 俺達はソフィアに、しばらくの別れを告げてギルドを後にした。


 謎のモンスターが現れたので予定が少し狂いもしたが、エルフの街に訪れるということは皆、楽しみにしており、俺達は今すぐにでも出発したい気分だった。


 そしてこの後、次の日を旅の支度をする時間に当てて…、と言ってもストレージがあるので特にやることはなかったのだが。


 その翌日に、俺達はアクアンシズの街を離れることになった。





      ――― 2章完 ―――


2章完です。お疲れさまでした。

☆を付けていただけると嬉しいです。

ブックマーク登録もして頂きたいです。

やる気が出るのでよろしくお願いします!

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