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スキルマスター  作者: とわ
第二章 アクアンシズ編

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37.銅鉱石採集


 北門を訪れると馬車と人だかりを見つけた。


「あれか?」


 俺の言葉に皆は首を傾げたので、近くに居る門番へと近づく。


「おはよう。すまないが、鉱山へ行く馬車はあの馬車で良いのか?」


「おはよう。ああ、あの馬車であってるよ」


「ありがとう」


(やはりあれか)


 そこには馬車が3台と、ちびっこのおっさん達が群がっていた。





 俺達はちびっこのおっさん達に近づいて声を掛ける。


「おはよう」


「おう、おはよう」


 ちびっこのおっさん達の視線が俺に集まる。


「これが鉱山へ行く馬車か?」


「ああそうだが、何か用か?」


「俺達はアクセサリー商店からクエストを受けてきたんだ」


 ちびっこのおさんは少し思い出すようにしてから、右手をグーにして左手をポンと叩いた。


「おおそうか、話は聞いているぞ。好きな馬車に乗れ。じきに出発する」


 俺は確認が取れたので、後ろに居る皆の方へと振り向く。


「どれにする?」


「みんなぼろっちぃね」


 モモの顔が渋い顔をする。


「それは仕方がないだろ。運搬用の馬車なんだ」


「奇麗なのが良いわ」


「私も~」


 アイラとモモは荷台が気になる様子で、背伸びをしながら中を覗き込もうとしている。


「好きなのに乗って良いみたいだから、あっちへ行こう」


 俺達は奇麗な荷台を選出する。だがそこには奇麗なものは存在しなかった。


「もう、あれで良いだろ?」


 俺は3台の馬車の内の、たぶん一番奇麗そうな馬車を指差した。


「ふう。どれも一緒よね」


 アイラが軽くため息をつく。


「あれで良いよ」


「うん」


 モモとリリーも納得をしてくれた。


 こうして、俺達はたぶん一番奇麗そうな馬車に乗ることにした。


 予想通り、選んだ馬車の荷台はあまり奇麗ではなかった。鉱石を運んでいるせいであろう。砂が荷台に落ちている。


(少しざらつくな…。しかし、木製の馬車なのにこれで鉱石の運搬ができるのか…。何かしらかの強化をしてあるのかもしれないが…)


 俺が馬車を調べていると大きな声が上がった。


「出発するぞー!」


 3台の馬車にはちびっこのおっさん達が2人ずつ乗り込んだ。合計6人で運搬をしているようだ。


 俺は乗り込んで来たちびっこのおっさんに声を掛ける。


「鉱山まではどのくらいで着くんだ?」


「ざっと1日ってとこだ」


(1日か…。結構遠いんだな…)


 鉱山までの旅は、窮屈な時間となりそうだった。



 ◇



(もっと飛ばして行くかと思ったな…。それに、乗り心地もそこまで悪くない)


 意外にも馬車はゆったりと進んでいる。てっきり、鉱山までは飛ばして向かい、その乗り心地は最悪なものになるであろうと予想していた。


 俺は暇だったので、ちびっこのおっさんに話し掛けることにした。


「二人はドワーフなのか?」


「ああ、そうだ」


(やはりドワーフだったか)


 二人はガタイも良く、剛毛そうな髪をしている。中にはハゲ頭の者も居るのだが、ドワーフ達には共通点があった。それは、みんな髭だけはしっかりと生えてるということだ。


(頭はハゲても髭がハゲないのは地球と同じなんだな…)


 頭と髭から視線を外し、俺は話を続ける。


「これから行く場所はどんなところなんだ?」


「お前さんたちは新人の冒険者か?」


「ああ」


 ドワーフは値踏みするように俺を見る。


「今向かっている場所はザクデロ鉱山って言ってな、鉄鉱石が取れる場所だ」


「ザ!?」


「ん?」


 思わず「ザクレロかよ!?」 と、突っ込みそうになったが、我慢した。アニメで「ザク! 出ろ!」という自害をするシーンがあったのを思わず思い出した。


「ゴホン…。銅は取れないのか?」


「銅も取れるぞ。昔は銅を掘ってたんだが、鉄鉱石が取れることが分かってな。それからは銅を掘らないってだけだ。あんたらは銅を掘りに行くのか?」


「ああ」


「好きなだけ持っていくと良い。今は誰も掘っていないからな。ガハハハ!」


 ドワーフの高笑いが辺りに響き渡った。


 そんな感じで、俺達は雑談をしながら景色を楽しみ、ゆったりと街道を進んだ。





 しばらく進むと、突然、街道脇の茂みからゴブリンの群れが飛び出してきた。


「ちょっと、ゴブリンよ!」


「はわわ、どうしよう?」


「お兄ちゃん、やっつけちゃう?」


 アイラとリリーは慌て始め、モモは身構えた。俺達は咄嗟に警戒をしたが、ドワーフ達はのんびりとしたものだった。


「まあ待て。あんたらはそこでじっとしていろ」


 ドワーフ達は馬車を一旦停めて下り始めた。俺は馬車から身を乗り出して尋ねる。


「大丈夫なのか?」


「こんなもん、朝飯前だ」


 今度はストレージから大きな両刃の斧を取り出した。


 その斧は装飾が施されており、優雅ながらも豪快さのある得物だった。そして、その斧を肩にかつぎ上げ、ドワーフ達はそのままゴブリンの群れへと走り出した。


 ドワーフ達はゴブリンアーチャーの放つ矢などお構いなしに突っ込んで行く。斧を振り回し、矢を弾きながら、一瞬で10匹程のゴブリンの群れを片付けてしまった。


「ゴブリンじゃ~、飯の種にならねえな~!」


 その声は大声ながらも、少し落胆したものだった。そして、ドワーフ達は再び馬車に乗り込み、何事もなかったかのようにして馬を走らせた。


 この後も数回モンスターに襲われたのだが、このドワーフ達はかなり強かった。まるで暇つぶしでもするかのようにして、モンスター達を倒していた。


 そんな光景を眺めながら、俺はふと、気になったことがあったので尋ねることにした。


「帰還のスクロールは使わないのか? その方が早いだろ?」


「んん!? それじゃあ息が詰まるだろうが。ガハハハ!」


 ドワーフは初めに驚いた顔をしたが、その後は豪快に笑い飛ばした。


 鉱山の中でずっと働いているようなので、ひょっとすると、この運搬は息抜きも兼ねたものなのかもしれない。





 日の沈みかけてきたころ、馬車は鉱山へと辿り着いた。道中ではブタのモンスターを倒したので、今晩はそれを使って焼肉にするそうだ。


 俺達はドワーフ達と別れて、この鉱山にある石造りの宿へと向かう。この宿は主に工夫達が利用しているそうだ。そして、1階が酒場だったので俺達はそこで夕食を取ることにした。


(面白いな。奇麗でも飾ってあるぐらいだから、あまり価値のないものなのか?)


 この鉱山で掘られたであろう鉱石が、酒場の至る所に飾られている。見た目には高価な物のよう見えたが、その価値は分からなかった。


 宿の夕飯は工夫繋がりなのかブタの焼肉だった。そして、その肉はジューシーなものでとても美味かった。


(旅をしながらこういった生活をしてみたいな。早く馬車が欲しいな~)


 エールを飲みながらそんなことを思い浮かべる。そして、工夫達の集まる宿の食事は、とても豪快なものだった。



 ◇◇



 次の朝。


 この鉱山はアクアンシズが管理をしているということで、俺達は管理人のところへ挨拶をしに向かうことにした。すると、管理人はドワーフではなく人族だった。


「おはよう。今日から鉱山へ入るが構わないか?」


「おはよう。話は聞いている。おい」


 管理人は少し離れた場所に居るドワーフに声を掛けた。


「何だ?」


 ドワーフがこちらに振り向くと、その人物は昨日行動を共にしたドワーフだった。


「グルニー、こいつらを鉱山へ案内してやれ」


「お! 昨日の若い衆か。話は聞いたからな。任せておけ。ガハハハ!」


 どうやらこの人は「ガハハハ!」と笑う人のようだ。


(遠くからでもわかりやすいな)


「今日も頼むよ」


「おうよ!」


 グルニーは彫の深い顔に、ニカっとしわを寄せた。





 鉱山の入口に訪れると、そこは鉱山と言うよりは、寧ろ洞窟だった。グルニーの後を付いて行き、鉱山の中へ進むと、今度は巨大な空間が広がる。


(異世界はスケールがでかいな)


 率直な感想だった。


「ふわぁ~」


「広いね~」


「神秘的な場所ね~」


各々、感嘆の声を漏らす。


「モモちゃん、声が響いてるよ!」


「ほんとだ! やっほー!」


 辺りに二人の声がこだまする。


「こら、ここはモンスターが居るんだぞ」


「あ、ごめん。忘れてた」


「ガハハハ!!!」


 グルニーの声が一番大きかった。


 この巨大な空間には鍾乳石が所々に形成されていた。だが、その大きさは俺が知っているものとは全く違っている。


 日本の鍾乳石の洞窟も入ったことがあるが、ここの広さはそれの10倍、どころの話ではなかった。100倍ぐらいはあるのではないかと思える程の広さだ。


 鍾乳石は大木のような太さとなり、その姿は自然の衣を纏い、とても美しく艶めかしいものだった。奥の方には距離が離れ過ぎていてはっきりとは見えないが、岩清水があるようで、地面に細い水の通り道が作られている。


 それと、この鉱山の中には魔道具の照明器具が設置されており、灯りが所々に灯されていた。どうやら、暗闇の中を進むということにはならずに済みそうだ。


 少し奥へ進んだところで、グルニーが懐から何かの石を取り出して、それを俺に手渡してきた。


「鑑定は使えるな?」


「ああ」


「やってみろ」


 突然、何かと思ったが、石を鑑定してみろという事だと思ったので、俺はスキルを使った。


【鑑定】


ーーーーーーー


銅鉱石


ーーーーーーー


「そうしたら、次は、その石をイメージしてサーチをしてみろ」


 俺は言われるがままにサーチの魔法を使う。


【サーチ】


 何となくだが、辺りに銅鉱石があることが分かる。


「この場所ではそんなもんだ。銅鉱石は、ここから左奥に行ったところで採れる。そこへ行けばもっと沢山あるからな。それで探してみろ。俺は右側で仲間達と鉄鉱石を掘っている。何かあれば呼んでくれ。ガハハハ!」


 更に、グルニーは俺にランタンを押し付けた。


 俺は瞬間ドキッとした。


(うっかりしていた。鉱山へ入るならランタンぐらいは必要だったな。少し気が緩んでいたか。これからは気を付けよう)


「がんばれよ! ガハハハ!」


 グルニーは俺の心を読んだかのように笑い、右奥の方へと歩いて行った。


(何気に面倒見の良い人なんだな)


 グルニーの粋な姿を見送りながら、俺達も銅鉱石の採れる左奥へと進んだ。



 ◇◇◇



 少し歩くと坑道が見えてきた。


「この辺りかな~?」


 モモが大きな岩の上から、辺りを見渡している。


「坑道の中だとは思うが、一応、調べてみるか」


【サーチ】


 俺が辺りを調べると、先程よりも銅鉱石の反応を多く感じたが、まだ少し少ないようにも思えた。


(鉱石はゲームのように、その辺にポップするわけじゃないんだな。ダンジョンならポップをしそうだが…、また今度調べてみるか)


 ダンジョンと鉱石の関係が少し気になったが、今は考えても仕方がないので、ここでのやることを優先することにした。


「たぶん、坑道の中の方が良いだろうな。あそこに入ろう」


 俺は見えている坑道を指差す。


「行ってみよう!」


 お話から飛び降りてきたモモを先頭に、俺達はその坑道へと足を向けた。





「なんかドキドキするね」


 坑道の手前でリリーが胸に手を当てる。そして、アイラが坑道の中を覗き込んだ。


「崩れないわよね?」


「怖い事を言わないでくれ」


 俺も坑道の中を覗き込む。


 坑道の中には落盤を防ぐための木材が組まれており、文字通りの坑道だった。


「大丈夫だろ。それに、気にしていても始まらないしな。さっさと中に入って作業を終わらせよう」


「もう…、いい加減ね」


 アイラが軽くため息をついたが、俺達はそのまま坑道の中に入ることにした。


 少し奥に進んだので、俺はもう一度辺りを調べる。


【サーチ】


「おおー!」


 今回は所狭しと銅鉱石の反応が見つかる。どうやらこの鉱山は、鍾乳石の洞窟を横に掘り進めて採掘を行っているようだ。


「どうしたの?」


 モモが不思議そうな顔で俺を覗く。


「いや、サーチを使ったら面白いぐらいに反応が出てな」


「へ~、私もやってみよ!」


 モモ達も辺りを調べ始めた。


【【【サーチ】】】


「「「おおー!」」」


 その反応は俺と同じだった。


「それじゃ、この辺りから始めてみるか」


「「「おー!」」」


 サーチの結果、何となくこの場所が良さそうだったので、俺達はそのまま道具を取り出して採掘を始める。つるはしはリアルでも数回しか振ったことがなかったので、流石に体が少しぐらついた。


「難しいー!」


 モモ達も腰がへっぴり腰になっている。


「これ、今日中に終わるのかしら?」


「明日、筋肉痛になったりしないかな?」


 アイラとリリーが早くも愚痴をこぼし始めたが、この後も、俺達はサーチと鑑定を使って銅鉱石を掘り続けた。




☆を付けていただけると嬉しいです。

ブックマーク登録もして頂きたいです。

やる気が出るのでよろしくお願いします!


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