冒険者の宿「夢虹亭」
彼女が目指す宿の名は「夢虹亭」
かなり歴史があり、初心者からそこそこのベテランが所属する宿である。
ただこの周辺は比較的危険も少なく、馬車で2日位行った先に大きな都市や騎士団、大きな冒険者の宿があるためある程度の経験を積んだ後冒険者は更なる名誉を求め旅立ってしまうということから年中人手不足に悩まされてる宿である。
意気揚々と宿のドアを開ける。
「こんにちは、よろしくお願いいたします。」
ここには何度か養父と来たことがあり、マスターと話を通してある。
「いらっしゃい、ベラ。一人か?ということは冒険者としての許可を得れたのか?」
カウンターの奥でいかついマスターが挨拶を返す。
マスターは元冒険者でそこそこのランクに居たらしい、過去に大きな怪我を負い、冒険者を引退したとのことだが威圧感は凄く、まだそこらの冒険者よりは数段強いのではないかと思わせる風体をしている。
「うん。今後ともよろしくお願いいたします。マスター」
「そうか、良かったな。で、今回は冒険者登録か?」
「うん、それともしも仕事があるならそれも、あ、パーティを組んでくれる人も探したいかな」
「登録自体は前に書いた登録証があるから問題は無い。これが冒険者の資格証だ」
と小さなリングを渡す。色は白く腕か足に着ける仕様になっている。
「このリングは死んでも身元を判別するためのものだ。持ち去られたら別だが、失くしたら身元も判らなくなるから常につけておけ。」
冒険者はいつ何があるか分からない。残酷な話だがバラバラにされたり、焼き尽くされる可能性もある。その為の身元保証書代わりというやつだ。
「後は依頼とパーティか・・・初心者とはいえ、お前ならこれは行けるか。」
といい、奥のテーブルを指さす。
「ん?」
そっちの方をみると2人、奥の席についている。
一人はどうやら妖精族のようだ。フワフワと飛びながら暇を持て余してるようだ。
体格は私の4分の1位だろう、セミロングで凄く綺麗な容姿をしている。
もう一人もこれもまた年端の行かない女の子という感じ。
小柄でとても冒険者には見えないが、どことなく落ち着きがあり、もしかするとベテランではないのかという雰囲気がある。
「・・・・マスター、本気ですか?」
ひそひそと不安と疑心を込めて確認する。
パーティバランスがいいとは言い難い。
初心者の格闘家と妖精と幼女(?)だ。当然の疑問だろう。
むしろベテランでも心配になる編成だ。
「無論本気だ。あの子は前々から冒険慣れしているヒーラーだ。見た目に反して詳しい奴ならそこそこ名が知れてる子だ。経験だけならそこらの冒険者よりも上だ。あの妖精もテストしたが優秀なフェアリーテイマーだ。妖精術に関しては問題なくやれるレベルだろう。」
「ただ、それに見合う斥候役や前衛が今空いてなくてな。お前ならジャンの娘だし、それに見合う動きは出来るだろうと見越しての人選だ」
「・・・(むしろ私の方が心配な要因というわけか・・・。あの二人を活かすなら確かに前がしっかりしてないとダメ。成程)」
少し思案し
「わかった、ありがとう。期待に応えられるよう頑張る」
「おう、依頼はあの二人には出してある。あとは話し合って決めてくれ」
「わかった。ありがとう」
軽く礼をしてテーブルに向かう。