横顔の咲く枠
時間は算用数字、話言葉で漢数字など、混じっています。すみません。
リンの隣の席にカバンで陣取った杏寿が座って話していたら、臨君が来た。
「臨君も数学苦手?」
「そうですね。」
……
「知り合い?」リンが尋ねる。
「友達だよ。」
「えっ……リンクンっていうの?」
「迎 臨太郎です。管月さんと、まだ、そんなに話してないですけどね。」
「臨君……よろしく。近く座ってよ!話したいから!」
「ていうかなんで敬語?タメじゃん。アハハ!」
リンはアハハ!と笑う声とは裏腹に、口の形はイーにして微笑んだ。
臨太郎が来て、30分もしないうちに他の二人も集まった。
適度な距離にほかの二人の女子が座って、二人とも日本人形みたいな真っ黒のツヤがあるボブカットで、またまた黒い眼鏡が似合っていて、もう、そっくりだった。
補講を受ける人って、真面目そうな人でもいるんだなあ。と杏寿は少し心が和らいだ。
しばらくして数学の先生が来た。
杏寿の担当の先生でなかったので、少し緊張していた。
そんなこともつかの間。
教科書を出してプリントとにらめっこして、頭はギュウギュウかつ真っ白でぐわんぐわんで、もうなんて言ったらいいのか分からないが、よく頑張った。
そして、大事なことは大きなザルに抜けていったような気がして、手ごたえがない。
でもこれを三回(あと二回)行ったら成績は、ギリギリセーフとなるのか。
キーンコーンカーンコーン。
遡るが、補講の前に三人で話していた。(ほとんどリンのターン)
そこで杏寿は、リンに名前で呼び合うことにしていいかと聞かれ、「良い」と答え、杏寿も”リン”と呼ぶことになった。
臨君は、二人のこと、名前で呼ぶことは無かった。
リンは言った。
「何で迎くんと杏寿はお友達なの?」
杏寿が答える。
「一人でも味方は欲しいものだし」
「臨君いい意味で友達いなさそうだし。でも一緒にいて疲れないの」
「あと。私の第六感が良いって言ったから。」
そう言って杏寿は右手を前髪の中に入れ、おでこを覆った。
「ふふ。」
「じゃあ、迎君も一緒に遊びに行かない?」リンが弾けた。
「……場所によりけり。」
そう言う臨太郎の横顔は遠い眼をして眉をひそめていた。
でも内心嬉しそうで、なんだかその顔もう一度見たいなあ。と杏寿は思って終わりのチャイムを聞いた。